my only book (not)

薪槻暁

真エピローグ

 彼女がいなくなってしまった後の僕は、今まで通り友人と呼べる人はいない孤独な時間を過ごしていった。


 彼女の代わりなんて友人は存在しないだろうという僕のある意味の執着心が邪魔していたのだ。


 だが、そんな自分勝手な行動はこの現実社会は許してくれないらしい。


 慣れ行きで大学に入学したつもりが、友人をつくる切っ掛けになってしまった。


 その一人が今の僕の担当編集だ。




「おう、入るぞ◯◯◯。 よし、今日もちゃんと書いてるな。締め切りがあと一週間なんだからしっかりしてくれよ」






「分かってるよ」






 こいつがいなかったら、今のこの職業に就くことはなかっただろう。




 なにせ、こいつが僕に小説家になれと提案したのだから。






「そういや、いつも思っていたんだがこの机の隅に置いてある本はなんだ?
なんで本棚に片さないんだ?」






「ああ、それはそのままにしてくれ」






「理由は後で言うよ」






 今の僕は独りじゃない。だからこそ僕と関わってきた人を独りにさせたくない。




 そんな気持ちが僕の心の中に芽生えた気がした。









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