my only book (not)

薪槻暁

1.5, 出会い

 僕はクラスで図書委員を受け持っていた。委員会は部活動と同じく放課後に活動するものでどちらかに入れば良いという学校の方針であった。運動部が多い学校だったため運動が苦手な僕は読書が好きだったことも重なり図書委員になることを決めた。


 その日は図書委員初めての活動であり、主な活動内容は図書室の本の整頓を行った後、自分のクラスの読書管理だった。


 自室の日々の整理整頓が役に立った為か図書室の整頓はすぐに終わり、早々と帰ろうと決意を固めていたのだが教室に入った瞬間、それは一気に崩れ落ちた。






 一人教室の左隅に異彩の輝きを放つ彼女がいたのだ。


 それは普段、人が大勢いるクラスの中では全くと言っていいほど目立たないような彼女であるのに、独りクラスの端にいることで独特な個性を描き出す姿が魅力的だった。


 僕はその姿に呆気にとられながらも気を取り直すよう励んだが、去年も同じクラスだった彼女の姿の違いを確かめざるを得なかったのだろう。自分の考えていることを図られないように話しかけていた。




「何しているの」


 彼女はクラス副委員長を受け持ち、裏で皆を引っ張ってくれる影役のような人であった。そのため教室に独り残っていたのかなどと聞くことも出来なかった。いや踏み込めなかったと言うべきか。


「何でもないよ」


 それ以上何も綴ることはなく僕はそれじゃと言ってそのまま帰ることにした。


 これが彼女と初めて話した素っ気なくてほろ苦い青春の始まりだった。

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