my only book (not)

薪槻暁

2,会話

 次の日、僕は何事もなく登校し下校した。


 翌々日も話す機会はなかった。彼女は相変わらずあの日とは少し変わった態度を周りの人々にとっていた。僕はその態度が彼女本来の性格だと感じていたがあの日の出来事からさっぱり印象が変わってしまったのである。故に彼女に違和感を覚えることが出来た。だが、他人が知らないことを知っているというような優越感に浸ることは微塵もなかった。


 結局、翌週の図書当番が回ってくるまで僕と彼女の関係は皆無だった。




 翌週の放課後……


 その日もクラスの図書管理表を確認すると同時に話しかけた。


「今日はクラス委員の仕事をやってるのか?」




 先週のように何をしているのかと問おうと思ったが、同じ事を聞いても返してくれる言葉は同じだろうと予見した僕はある特定の事柄をしているのかと聞くことで話を展開させようとした。


「うん」


 質問したのだがすぐさま自分が彼女との距離を狭めようとした無自覚さに羞恥を覚えた。
 だが、もっと彼女と話したい、知りたいという欲求の方が勝った。


「何か手伝おうか?俺に出来る範囲ならなんでもやるよ」
「大丈夫……もうじき終わるから平気だよ、ありがとう」


 度が過ぎた気遣いと初めての彼女からの感謝に再度、赤面しそうになるも感情を牢の奥に閉じ込め平静を装った。


「それじゃ」


 その場にいられなくなった僕はそのまま教室を出ていった。









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