my only book (not)

薪槻暁

1,プロローグ

 僕は20歳文学部の大学生だ。といっても、今は長年の夢だった小説の執筆活動に勤しんで大学なんか行く暇もない。それも僕は昔から様々なバリエーションの本を読む孤独な読書家だったのが原因。




そんなものだから友人、恋人など僕には殆ど皆無に等しい。






小学校、高校と他人と接点が無かったものだからある意味平穏な暮らしだったのだろう。




でも、中学生の頃は違った。






それが今、僕の執筆活動を行うデスクの右隅に置いてある本が物語っている。








文庫本と呼ぶには小さすぎるが辞書と言うと大きすぎるそれは、


僕の最初で最後の友人から受け取った本であり、淡い恋の思い出が詰まったものだった。












 それは夕焼けで空が赤く染まり、その日差しが薄暗い教室を繊細に染めていく頃のことだった。


 
 彼女と出会った。





















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