Over the time ~時を見る~
The girl and the answer
時を変える。すなわちそれは本来通るはずの世界が消えることであり、誰かが死んでしまったりあるいは生き延びてしまっていることもありうるということ。
自分勝手に世界を決めてしまった俺は心のどこかで理解していたのかもしれない。
「あー、起きたくない……」
一般的かつ健全な男子高校生である俺は、毎日の決まり文句を呟く。
彼女が存在する世界に変えたあの日から今日で一週間が経とうとしていた。
俺は全身が重石のように感じながら体を動かす。軽く朝食を済ませて制服に着替えて登校。
と、ここまでは順調だ。
だが、
「よーおーーさーわーだー」
教室に入った途端、呼び掛けるは旧友だった斎藤。
彼はいつからか変わってしまったその呼び掛けの調子と今にも卑しい目つきでこちらを見てくる。
それもそう、俺は彼女持ちということになっていた。しかもその話はクラス中に広まり、知らない者はいなくなってしまったのである。
「今日は一緒に登校ですか?」
昨日と全く同じ言葉にいささか嫌気が指すが、
「違う」
平然を装う形で彼の言葉を振りきった。
『よーしショート始めるぞ』
担任からの渡し船をもらった俺は感謝しながらも早々と着席した。
しかし、あの時のあの言葉、状況が知らされていないことはありがたいことだった。というか、もし知られていたらそれは彼女が広めたことになるのか?あの時にはうちの高校の生徒はいなかったはず……
俺は四時間目の授業が終わっているにも関わらず、机に突っ伏したまま。ちょうどこの世界に変化してからの俺と彼女の過ごし方を思い返していた。
「沢田、今日は学食行かないか?」
今度は間延びしない呼び方。これだけでも彼の本気度が分かるというものだ。
そう、今回は本気であるとわかったのだが、しばらく今の状況を整理したいので断った。
俺はあの時、彼女に告白した。それは文字通り自分の気持ちを伝えるということ。そして彼女は否定せずにむしろ肯定した。
つまり、これが彼女を存在させる唯一の方法だったということ。存在する意義、意味を持たせれば彼女は救われるのだろうという賭けに出たのだ。俺の傍で居て欲しいという自分勝手な意義で。
ただ、未だに疑問が払拭されずに漂っているものがある。
それまで机に固定していた頭を上げ、
重い足を引きずりながら歩み寄る。
「ちょっと話良いか」
振り向き様に艶やかな黒髪をなびかせる。
声をかけたのは現彼女である佐藤瀬名であった。
二人並んで歩く姿は何度目だろうか、学校内ならまだしも外となると数えきれない。彼女と一緒に過ごすのはもう日常的なもの。
しかし、彼女のことは知らないまま。
たとえ彼女に何があったのか知っていたとしても、それは外面的でしかない。つまり簡単に言えば彼女の思っていることは理解できていないままだった。
閑静な一室、そこには一度前に訪れたことを覚えている。
「時について話したいこと、いや聞きたいことがある」
昼休みのせいなのか、周囲には人、一人としていない。
やや眉間に皺を寄せながら、かつ陽気さは変わらずに答える。
「何?」
俺はようやく見つけた回答を打ち明ける。それは彼女には辛辣すぎる言葉であるのに。
「君はなぜ生きようとしないんだ」
全てを分かっている、そんな顔で俺を眺めている彼女の姿に胸が締め付けられた。
自分勝手に世界を決めてしまった俺は心のどこかで理解していたのかもしれない。
「あー、起きたくない……」
一般的かつ健全な男子高校生である俺は、毎日の決まり文句を呟く。
彼女が存在する世界に変えたあの日から今日で一週間が経とうとしていた。
俺は全身が重石のように感じながら体を動かす。軽く朝食を済ませて制服に着替えて登校。
と、ここまでは順調だ。
だが、
「よーおーーさーわーだー」
教室に入った途端、呼び掛けるは旧友だった斎藤。
彼はいつからか変わってしまったその呼び掛けの調子と今にも卑しい目つきでこちらを見てくる。
それもそう、俺は彼女持ちということになっていた。しかもその話はクラス中に広まり、知らない者はいなくなってしまったのである。
「今日は一緒に登校ですか?」
昨日と全く同じ言葉にいささか嫌気が指すが、
「違う」
平然を装う形で彼の言葉を振りきった。
『よーしショート始めるぞ』
担任からの渡し船をもらった俺は感謝しながらも早々と着席した。
しかし、あの時のあの言葉、状況が知らされていないことはありがたいことだった。というか、もし知られていたらそれは彼女が広めたことになるのか?あの時にはうちの高校の生徒はいなかったはず……
俺は四時間目の授業が終わっているにも関わらず、机に突っ伏したまま。ちょうどこの世界に変化してからの俺と彼女の過ごし方を思い返していた。
「沢田、今日は学食行かないか?」
今度は間延びしない呼び方。これだけでも彼の本気度が分かるというものだ。
そう、今回は本気であるとわかったのだが、しばらく今の状況を整理したいので断った。
俺はあの時、彼女に告白した。それは文字通り自分の気持ちを伝えるということ。そして彼女は否定せずにむしろ肯定した。
つまり、これが彼女を存在させる唯一の方法だったということ。存在する意義、意味を持たせれば彼女は救われるのだろうという賭けに出たのだ。俺の傍で居て欲しいという自分勝手な意義で。
ただ、未だに疑問が払拭されずに漂っているものがある。
それまで机に固定していた頭を上げ、
重い足を引きずりながら歩み寄る。
「ちょっと話良いか」
振り向き様に艶やかな黒髪をなびかせる。
声をかけたのは現彼女である佐藤瀬名であった。
二人並んで歩く姿は何度目だろうか、学校内ならまだしも外となると数えきれない。彼女と一緒に過ごすのはもう日常的なもの。
しかし、彼女のことは知らないまま。
たとえ彼女に何があったのか知っていたとしても、それは外面的でしかない。つまり簡単に言えば彼女の思っていることは理解できていないままだった。
閑静な一室、そこには一度前に訪れたことを覚えている。
「時について話したいこと、いや聞きたいことがある」
昼休みのせいなのか、周囲には人、一人としていない。
やや眉間に皺を寄せながら、かつ陽気さは変わらずに答える。
「何?」
俺はようやく見つけた回答を打ち明ける。それは彼女には辛辣すぎる言葉であるのに。
「君はなぜ生きようとしないんだ」
全てを分かっている、そんな顔で俺を眺めている彼女の姿に胸が締め付けられた。
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