Over the time ~時を見る~
Again
彼女と離れてもう何日目だろうか……
俺は答えが見えない迷宮に囚われてしまった。
斎藤と神社を訪れた後、来る日も来る日も彼女が来そうな場所に訪れてみたが会えることはなかった。
何も言わずに去ってしまった彼女。笑顔のまま語った日はどう思っていたのだろうか。もしかしたら自分が消えてしまうということが分かっていたのか。
あの時はどう思っていたのだろうか。どうしてあんな表情を作っていたのだろうか。今まで訪れた場所を照らし合わせながら考え続ける。考えても答えは見つからないというのに。
俺は彼女の胸中を知りたい気持ちで一杯だった。
それもそう。俺はどうしてもある事象の一時間後の姿が見えてしまう。しかも無意識に。意識しないように努めていたって結局見えてしまうものだった。
だから、彼女と共に過ごした後は別れた悲しみよりも彼女の姿が見えてしまうことが何よりも辛かった。
ある時は喫茶店や電車、学校帰り。独り自宅へと歩いていく彼女の姿はあの日と何一つ変わっていなかったのだ。
それなのに、俺と過ごしている間は何食わぬ顔で平気でいた。
俺は独り自室のベッドの上で思考する。もしかしたら、彼女が存在する世界に戻れるんじゃないかというかすかな希望を抱きながら。
現在と過去の記憶、思い、自分の全てが入り交じる。
俺は眠りとともに遠い暗闇の中に溶け込んでいった。
「ねーえーー、聞いてるのーー」
どこからともなく聞こえてくる聞き慣れた声。それは今まで思い悩んだ問題を一蹴するかのような音。聞くと気持ちが安らぐかのような調子。
目の前に彼女――佐藤瀬名が話しかけてくるという状況を受け入れられない俺は何も答えることが出来ない。これがまさに呆然とするという意味なのだろう。
そのまま彼女の顔をじっと見つめるのも違和感があるので話を続けた。
「あ、ああ悪い聞いてなかった……何の話だ?」
「それはこっちの台詞だよ、君が話があるって言うから来たんでしょ」
「それなのに、君ったら突然口開けてぼーーっとしてるんじゃない」
「そうだったんか……悪いな」
どうやら今の状況を考えてみると過去に戻ったらしい。しかも彼女がいる世界に。
久しぶりに会う人というのは結構気恥ずかしいものだ。目の前の彼女を重視出来ない。
「今日の君はなんか変だよー、何かあったの?」
何も知らない、いやむしろ知っているのにも関わらず聞いてくる。
「ああ、あった」
ここで俺は心に決めた。彼女に真意を伝えることを。
「なに、なに?」
相変わらず小動物らしい。それも内に秘めた思いを出さないようにしているためか。
「俺は君が好きみたいだ」
突拍子もない言葉を吐く。それは彼女いない歴=年齢の俺が言うはずのない言葉。元来無関係な言葉だった。
目を見開いた彼女。俺だって言われたらそんな表情を取るんだろうなと自分の姿が脳裏に浮かぶ。
ひたすらに続く沈黙。俺が放った言葉はそれほどの爆弾発言だったということだ。
だが、いつしか彼女の驚嘆な表情は微笑みに移り変わり、
  
「私も」
静寂という名の静けさも終わりを告げたようだった。
目覚めとともに朝日が昇っていることに気づく頃にはもう遅刻らしい。
俺は仮眠を取るどころか翌日まで寝てしまっていた。しかも通常の起床時刻よりも大幅に遅れて。
「まずいな……でもまあ……」
過去に自分の思いを打ち明けられたことへの安堵で心にゆとりがあるらしい。今はもう遅刻なんてことはどうでも良いような気がした。
この世界で彼女が存在しているという保証はどこにもない。しかし、俺にはどこからともなく湧いてくるようなこの不思議な安心感がある。
佐藤は戻ってくる。そんな予感ばかりしたのだ。
「よしっ、今日も行くか」
いつしか足取りが軽くなり、歩くスピードも上がっていった。
俺は答えが見えない迷宮に囚われてしまった。
斎藤と神社を訪れた後、来る日も来る日も彼女が来そうな場所に訪れてみたが会えることはなかった。
何も言わずに去ってしまった彼女。笑顔のまま語った日はどう思っていたのだろうか。もしかしたら自分が消えてしまうということが分かっていたのか。
あの時はどう思っていたのだろうか。どうしてあんな表情を作っていたのだろうか。今まで訪れた場所を照らし合わせながら考え続ける。考えても答えは見つからないというのに。
俺は彼女の胸中を知りたい気持ちで一杯だった。
それもそう。俺はどうしてもある事象の一時間後の姿が見えてしまう。しかも無意識に。意識しないように努めていたって結局見えてしまうものだった。
だから、彼女と共に過ごした後は別れた悲しみよりも彼女の姿が見えてしまうことが何よりも辛かった。
ある時は喫茶店や電車、学校帰り。独り自宅へと歩いていく彼女の姿はあの日と何一つ変わっていなかったのだ。
それなのに、俺と過ごしている間は何食わぬ顔で平気でいた。
俺は独り自室のベッドの上で思考する。もしかしたら、彼女が存在する世界に戻れるんじゃないかというかすかな希望を抱きながら。
現在と過去の記憶、思い、自分の全てが入り交じる。
俺は眠りとともに遠い暗闇の中に溶け込んでいった。
「ねーえーー、聞いてるのーー」
どこからともなく聞こえてくる聞き慣れた声。それは今まで思い悩んだ問題を一蹴するかのような音。聞くと気持ちが安らぐかのような調子。
目の前に彼女――佐藤瀬名が話しかけてくるという状況を受け入れられない俺は何も答えることが出来ない。これがまさに呆然とするという意味なのだろう。
そのまま彼女の顔をじっと見つめるのも違和感があるので話を続けた。
「あ、ああ悪い聞いてなかった……何の話だ?」
「それはこっちの台詞だよ、君が話があるって言うから来たんでしょ」
「それなのに、君ったら突然口開けてぼーーっとしてるんじゃない」
「そうだったんか……悪いな」
どうやら今の状況を考えてみると過去に戻ったらしい。しかも彼女がいる世界に。
久しぶりに会う人というのは結構気恥ずかしいものだ。目の前の彼女を重視出来ない。
「今日の君はなんか変だよー、何かあったの?」
何も知らない、いやむしろ知っているのにも関わらず聞いてくる。
「ああ、あった」
ここで俺は心に決めた。彼女に真意を伝えることを。
「なに、なに?」
相変わらず小動物らしい。それも内に秘めた思いを出さないようにしているためか。
「俺は君が好きみたいだ」
突拍子もない言葉を吐く。それは彼女いない歴=年齢の俺が言うはずのない言葉。元来無関係な言葉だった。
目を見開いた彼女。俺だって言われたらそんな表情を取るんだろうなと自分の姿が脳裏に浮かぶ。
ひたすらに続く沈黙。俺が放った言葉はそれほどの爆弾発言だったということだ。
だが、いつしか彼女の驚嘆な表情は微笑みに移り変わり、
  
「私も」
静寂という名の静けさも終わりを告げたようだった。
目覚めとともに朝日が昇っていることに気づく頃にはもう遅刻らしい。
俺は仮眠を取るどころか翌日まで寝てしまっていた。しかも通常の起床時刻よりも大幅に遅れて。
「まずいな……でもまあ……」
過去に自分の思いを打ち明けられたことへの安堵で心にゆとりがあるらしい。今はもう遅刻なんてことはどうでも良いような気がした。
この世界で彼女が存在しているという保証はどこにもない。しかし、俺にはどこからともなく湧いてくるようなこの不思議な安心感がある。
佐藤は戻ってくる。そんな予感ばかりしたのだ。
「よしっ、今日も行くか」
いつしか足取りが軽くなり、歩くスピードも上がっていった。
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