Over the time ~時を見る~
The trip(new)
時という流れそのものが淀んだ雰囲気を装う喫茶店。
電灯が灯す場所のみが明るく照らされ、今座っている席は仄かに照らされている。
そう、一週間に一回ここで落ち合うことが習慣となった俺は普段と何一つ変わらず。
対する向かい側に座っているのは普段通りではなかった。
「ここ来たの初めてだよ」
辺りを見回し、周囲の物の配置を確認しているのは斎藤。
彼女の席で呟きながら俺に聞いた。
「いつもここに来てたのか?」
「その話なんだが。少し聞いていいか?」
この世界、つまり彼女が存在していない場所で、俺は彼女と過ごしていた時間に何をしていたのかが疑問に残っていた。
「そうだな……確かに人に会う約束をしたーなんて話を聞いた覚えがあるな」
「お前は一緒にいなかったのか?」
日々、毎日共に行動することが通例となっていた斎藤はどうしていたのか、
「俺?沢木が先に帰るからよ~、俺はいつも独り家で過ごしてたぞ」
なるほど。彼女、佐藤瀬名本人の記憶だけが消され、俺自身や行動そのものは消されていないようだ。
机の上のアンティークを手持ち無沙汰に触れ、
「よし、次行くぞ」
俺は徐に鞄からコーヒー1杯分の現金を取りだし、さっさと外に出る。
「おいおい、待てよーー」
全く状況を掴めない斎藤も、俺を追いかけるように店を出た。
やっぱり、ここだな。今まで過ごしてきた中で最も彼女に近い場所。
彼女の故郷、あの日訪れた神社に来ていた。
神社といってもまだ山頂まで30分はかかるところであるが、
「おいーー、まだ着かないのかよーー」
なんだかデジャブなような……
後方から登山という辛さの悲鳴を挙げている彼――斎藤優人もまた体育系ではない非力なその体に鞭を打ちながら歩いていた。
「あと少しだ、もうすぐ着く」
俺に出来る精一杯の言葉を捧げ、もう一度前を向く。
あの日歩いた道、そこには足跡があるような気がしたのは気のせいだったのだろうか。
朱色が抜けかかっている鳥居、ところどころ錆びかかっている。
ようやく頂上に登り詰めた俺と斎藤は鳥居を抜けた広間で佇んでいた。
一度、来ていたこともあったためか、そこまで驚くことはない。
「やっと着いたーー、というかこの鳥居大きくないか?」
通り抜けた方向に向きを直し指摘する斎藤をよそに、俺は再び歩き出す。
「はやい、はやいって、待ってくれ……」
彼女の手がかりを探ることに夢中だった俺は、この場にいるもう一人の人間に気遣いというものが出来なかった。
しかし、一度深呼吸をし彼の方向に振り返る。
「すまない……」
もう二度と一人独断で進み続けることを止めようと再び決心した。
「しかし、見つからないな……」
独りぼそっと呟く俺はいかにも落胆した表情。独りよがりに考えようとするのは止めようとしたそうそう、思い塞がっていた。
結局、神社で参拝を終えた後、彼女の手がかりとなるものは一切見つからなく捜索を断念していた。
下山した俺たちは、駅に一度戻り近辺にあった古民家カフェで嘆いている状態。
「お前の思い違いなんじゃないか?」
簡単に「はい、そうです」って言ってしまえばこの話もここまで苦悩することはんないだろうな、と俺は皮肉を溢す。
俺の真実を告げるような眼差しを見て、
「悪い、いい加減なこと言って……」
ばつが悪いような表情を作らせてしまったので、気を取り直してから答えた。
「平気だって、俺はあの人につながるようなヒントも得たし」
「ホントかっ!」
現実には一切無いというのが真実であるのにも関わらず俺は嘘をついてしまった。
「それはなんだ!?」
「秘密だよ」
「ここまで来てそれは無いだろーー」
斎藤には悪いがこれが彼にとっての真実であるのが最もな選択のひとつだろう。
「とにかく、今日は一緒に来てくれてありがとうな」
今までの苦労の労いとともに感謝の言葉を贈った。
電灯が灯す場所のみが明るく照らされ、今座っている席は仄かに照らされている。
そう、一週間に一回ここで落ち合うことが習慣となった俺は普段と何一つ変わらず。
対する向かい側に座っているのは普段通りではなかった。
「ここ来たの初めてだよ」
辺りを見回し、周囲の物の配置を確認しているのは斎藤。
彼女の席で呟きながら俺に聞いた。
「いつもここに来てたのか?」
「その話なんだが。少し聞いていいか?」
この世界、つまり彼女が存在していない場所で、俺は彼女と過ごしていた時間に何をしていたのかが疑問に残っていた。
「そうだな……確かに人に会う約束をしたーなんて話を聞いた覚えがあるな」
「お前は一緒にいなかったのか?」
日々、毎日共に行動することが通例となっていた斎藤はどうしていたのか、
「俺?沢木が先に帰るからよ~、俺はいつも独り家で過ごしてたぞ」
なるほど。彼女、佐藤瀬名本人の記憶だけが消され、俺自身や行動そのものは消されていないようだ。
机の上のアンティークを手持ち無沙汰に触れ、
「よし、次行くぞ」
俺は徐に鞄からコーヒー1杯分の現金を取りだし、さっさと外に出る。
「おいおい、待てよーー」
全く状況を掴めない斎藤も、俺を追いかけるように店を出た。
やっぱり、ここだな。今まで過ごしてきた中で最も彼女に近い場所。
彼女の故郷、あの日訪れた神社に来ていた。
神社といってもまだ山頂まで30分はかかるところであるが、
「おいーー、まだ着かないのかよーー」
なんだかデジャブなような……
後方から登山という辛さの悲鳴を挙げている彼――斎藤優人もまた体育系ではない非力なその体に鞭を打ちながら歩いていた。
「あと少しだ、もうすぐ着く」
俺に出来る精一杯の言葉を捧げ、もう一度前を向く。
あの日歩いた道、そこには足跡があるような気がしたのは気のせいだったのだろうか。
朱色が抜けかかっている鳥居、ところどころ錆びかかっている。
ようやく頂上に登り詰めた俺と斎藤は鳥居を抜けた広間で佇んでいた。
一度、来ていたこともあったためか、そこまで驚くことはない。
「やっと着いたーー、というかこの鳥居大きくないか?」
通り抜けた方向に向きを直し指摘する斎藤をよそに、俺は再び歩き出す。
「はやい、はやいって、待ってくれ……」
彼女の手がかりを探ることに夢中だった俺は、この場にいるもう一人の人間に気遣いというものが出来なかった。
しかし、一度深呼吸をし彼の方向に振り返る。
「すまない……」
もう二度と一人独断で進み続けることを止めようと再び決心した。
「しかし、見つからないな……」
独りぼそっと呟く俺はいかにも落胆した表情。独りよがりに考えようとするのは止めようとしたそうそう、思い塞がっていた。
結局、神社で参拝を終えた後、彼女の手がかりとなるものは一切見つからなく捜索を断念していた。
下山した俺たちは、駅に一度戻り近辺にあった古民家カフェで嘆いている状態。
「お前の思い違いなんじゃないか?」
簡単に「はい、そうです」って言ってしまえばこの話もここまで苦悩することはんないだろうな、と俺は皮肉を溢す。
俺の真実を告げるような眼差しを見て、
「悪い、いい加減なこと言って……」
ばつが悪いような表情を作らせてしまったので、気を取り直してから答えた。
「平気だって、俺はあの人につながるようなヒントも得たし」
「ホントかっ!」
現実には一切無いというのが真実であるのにも関わらず俺は嘘をついてしまった。
「それはなんだ!?」
「秘密だよ」
「ここまで来てそれは無いだろーー」
斎藤には悪いがこれが彼にとっての真実であるのが最もな選択のひとつだろう。
「とにかく、今日は一緒に来てくれてありがとうな」
今までの苦労の労いとともに感謝の言葉を贈った。
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