Over the time ~時を見る~
Trigger of the change
おばあちゃんが死んだ。
それが彼女があの日、この世から身を投げ出そうとした根本的なトリガーだった。
そう考えれば納得が行ったが、どうしてか何か突っかかっているような感じの方が強かった。
ともあれ、俺は時が見える。それはつまり先の事象が分かるというわけで彼女――佐藤瀬名との行動は全てその上で決行してきたのだ。その理由は今さっき考えていた、彼女の過去を詮索するためだった。彼女には悪いという思いもあったが失う辛さを思えば目を瞑ることなんて簡単に出来た。
というわけで、次はこの違和感を探ることが目標となった。
「うぉーーい。聴いてるかぁーー」
神社に参拝した翌日、登校日だったことを忘れていた。俺は無事、知り合いに遭遇することなく帰宅した後、彼女のことについて考えることに夢中で徹夜してしまった。
「ったく……聞いてるよ」
一日の高校生勤務時間を終え、さらに寝不足な俺に対し斎藤というやつは最近配信されたネットゲームのメリット、デメリットを淡々と語るのだ。
「でさ、ここが落ち度というか勿体無いんだよ。俺だったらこうするんだけど…………」
頭に話が入ってこない俺はとうとう深い眠りについた。
ようだったが、それは思ってもみなかった方向から防がれたのだ。
それはさっきまでゲームの話しかしなかった斎藤の溢した言葉。
「そういや、最近はよりいっそう明るくなったな。佐藤さんって」
斎藤が佐藤のことを気にかける状況は幾度となく見てきた。だがいつだったかある日、いつもと違う何かがあったんだ。それは確か……
二点が一転して一点に重なっていく。
そうだ。あの日は初めて同じ境遇の人と出会ったような日だったんだ。
ようやく、胸のつかえが下りたような気がした。
時が見えるということこそがあの日の事件の別のトリガーなのかもしれない。
しかし、なぜそれが自殺へと繋がるのかが不思議でたまらなかった。こんなにも俺は気にせずに生きていることこそがその矛盾さを目立たせる。
ここまで考えたがまだ納得が行くような考えが浮かばない。
ならいっそのこと、彼女に直接聞いてみるとするか。俺は決心した思いを曲げないように口にする。
「またまた、サンキューな。斎藤」
全く事態がつかめないといった表情でこちらを見てくる彼。
もう何度目だろうか。俺は斎藤に助けられた今までの過去を思いだし、先に学校を後にすることにした。
豆の芳醇な香りと相変わらずにどこからともなく流れてくるクラシックのメロディ。少し明かりが灯されていない二人テーブルに座る。
俺の向かい側に座るは、今では一躍有名な彼のの佐藤瀬名という人物。
今日は前回と違って机上に配置されているアンティークには触れようとしない。真剣な眼差しで俺の目を見つめてくる。
「……で、なに?重要な話って」
「ああ」
俺は時が見えることから再度切り出すことにした。
すると以外にも段々と彼女の顔が綻んでいく。何も苦しんでいない、まるでそういいたげな表情に。
「なんだーー。君が改まって話をするって言うから、まさか私に気があるのかなって思ったじゃない」
安堵した佐藤は放課後に話すいつもの口調へと様変わりする。それはそれで少しばかり辛いのだが……
とまあ、ここからが本番だ。気を取り直して話を続けることにした。
「佐藤って過去に遡れるんだよな」
机上のアンティークを掌に転がしながら、
「そうよ。私はまさに時を架ける少女ね」
赤の他人が聞いたら笑ってしまうような冗談も俺にとっては意味を成さない。
そして、今まで腑に落ちなかった問いを投げ掛ける。
聞きたいけど、聞いてはならない。それは彼女の為で決して俺自身の為なんて考えは微塵もなかった。
けどここで聞かなくては彼女の為にはならない。だから、聞いた。
「おばあちゃんが死んだ時からかな」
俺が答える間もなく語り続けた。
「最初はね、おばあちゃんが死ぬ前のことを夢で見るだけだったの」
「寝ようとしたら目の前におばあちゃんが座っててね、ほんとのことかなって思っちゃったんだ」
「そしたらおばあちゃんは私に話しかけてきたの」
無言で聞き続ける俺をよそに彼女の話す速度も上がってくる。
それはつまり、長年思い詰めてきたという他以外考えつかなかった。
「『私はもういいわ』ってね」
「それはつまり?」
「当時の私には時間を操れるなんて全く知らなかったから、おばあちゃんが言おうとしたことは分からなかったんだ」
「でも今は分かるよ?」
確認のためなのか、うつむいて話し続ける彼女は振り向き様に見てきた。
そして自分の気持ちを奥深くに隠しているかのような笑みをしていた。
「ということはつまり、その君のおばあちゃんが他界した後から過去に遡れるようになったってことか?」
「そうだよ?」
疑問混じりに答える彼女は小動物らしさは変わらない。
むしろ、俺にはその態度が辛い。
「なんか、悪かったな。嫌な思い出を掘り起こして……」
「? 別に気にしないんだから良いよ~~」
彼女の純粋な過去を漁った罪悪感を覚えた俺は、勝手ながら話し合いを切り上げ今日の密会は閉幕となった。
翌日になるまで今日のことを考え続けた俺は遅刻間近になってしまった。
「おいおい、今日は危ないな。また夜更かしかよ」
俺の横に話しかけてくることが今となっては当たり前となっている男、斎藤。
「考え事してたら遅くなったんだよ」
「何をそんなに考え込んでたんだ?」
俺は嘘、偽りをなるべく減らすように努めた。
「彼女のことだよ、昨日話し合ったこと」
「彼女って言っても、ここでは彼の女ってことだからな」
本当に嘘は言わないことにした。
「女?そんな人が彼女歴=年齢のお前にいたのか?」
結局、捉え方に支障が出てしまったことは一応放っておいた。
そういえば、習慣となったことも確かに斎藤には言っていなかったような気がする。
しかし俺でさえ周囲の目が変わったことに気づいているというのに、この男はそれにさえ気づいていない。
どこまで鈍感なやつなんだ……
「いたよ、というかいるんだよ。佐藤さんだよ」
彼女という解釈は置いておいて続けた。
しかし、その必要も無かったようだった。
「その人誰だよ」
それが彼女があの日、この世から身を投げ出そうとした根本的なトリガーだった。
そう考えれば納得が行ったが、どうしてか何か突っかかっているような感じの方が強かった。
ともあれ、俺は時が見える。それはつまり先の事象が分かるというわけで彼女――佐藤瀬名との行動は全てその上で決行してきたのだ。その理由は今さっき考えていた、彼女の過去を詮索するためだった。彼女には悪いという思いもあったが失う辛さを思えば目を瞑ることなんて簡単に出来た。
というわけで、次はこの違和感を探ることが目標となった。
「うぉーーい。聴いてるかぁーー」
神社に参拝した翌日、登校日だったことを忘れていた。俺は無事、知り合いに遭遇することなく帰宅した後、彼女のことについて考えることに夢中で徹夜してしまった。
「ったく……聞いてるよ」
一日の高校生勤務時間を終え、さらに寝不足な俺に対し斎藤というやつは最近配信されたネットゲームのメリット、デメリットを淡々と語るのだ。
「でさ、ここが落ち度というか勿体無いんだよ。俺だったらこうするんだけど…………」
頭に話が入ってこない俺はとうとう深い眠りについた。
ようだったが、それは思ってもみなかった方向から防がれたのだ。
それはさっきまでゲームの話しかしなかった斎藤の溢した言葉。
「そういや、最近はよりいっそう明るくなったな。佐藤さんって」
斎藤が佐藤のことを気にかける状況は幾度となく見てきた。だがいつだったかある日、いつもと違う何かがあったんだ。それは確か……
二点が一転して一点に重なっていく。
そうだ。あの日は初めて同じ境遇の人と出会ったような日だったんだ。
ようやく、胸のつかえが下りたような気がした。
時が見えるということこそがあの日の事件の別のトリガーなのかもしれない。
しかし、なぜそれが自殺へと繋がるのかが不思議でたまらなかった。こんなにも俺は気にせずに生きていることこそがその矛盾さを目立たせる。
ここまで考えたがまだ納得が行くような考えが浮かばない。
ならいっそのこと、彼女に直接聞いてみるとするか。俺は決心した思いを曲げないように口にする。
「またまた、サンキューな。斎藤」
全く事態がつかめないといった表情でこちらを見てくる彼。
もう何度目だろうか。俺は斎藤に助けられた今までの過去を思いだし、先に学校を後にすることにした。
豆の芳醇な香りと相変わらずにどこからともなく流れてくるクラシックのメロディ。少し明かりが灯されていない二人テーブルに座る。
俺の向かい側に座るは、今では一躍有名な彼のの佐藤瀬名という人物。
今日は前回と違って机上に配置されているアンティークには触れようとしない。真剣な眼差しで俺の目を見つめてくる。
「……で、なに?重要な話って」
「ああ」
俺は時が見えることから再度切り出すことにした。
すると以外にも段々と彼女の顔が綻んでいく。何も苦しんでいない、まるでそういいたげな表情に。
「なんだーー。君が改まって話をするって言うから、まさか私に気があるのかなって思ったじゃない」
安堵した佐藤は放課後に話すいつもの口調へと様変わりする。それはそれで少しばかり辛いのだが……
とまあ、ここからが本番だ。気を取り直して話を続けることにした。
「佐藤って過去に遡れるんだよな」
机上のアンティークを掌に転がしながら、
「そうよ。私はまさに時を架ける少女ね」
赤の他人が聞いたら笑ってしまうような冗談も俺にとっては意味を成さない。
そして、今まで腑に落ちなかった問いを投げ掛ける。
聞きたいけど、聞いてはならない。それは彼女の為で決して俺自身の為なんて考えは微塵もなかった。
けどここで聞かなくては彼女の為にはならない。だから、聞いた。
「おばあちゃんが死んだ時からかな」
俺が答える間もなく語り続けた。
「最初はね、おばあちゃんが死ぬ前のことを夢で見るだけだったの」
「寝ようとしたら目の前におばあちゃんが座っててね、ほんとのことかなって思っちゃったんだ」
「そしたらおばあちゃんは私に話しかけてきたの」
無言で聞き続ける俺をよそに彼女の話す速度も上がってくる。
それはつまり、長年思い詰めてきたという他以外考えつかなかった。
「『私はもういいわ』ってね」
「それはつまり?」
「当時の私には時間を操れるなんて全く知らなかったから、おばあちゃんが言おうとしたことは分からなかったんだ」
「でも今は分かるよ?」
確認のためなのか、うつむいて話し続ける彼女は振り向き様に見てきた。
そして自分の気持ちを奥深くに隠しているかのような笑みをしていた。
「ということはつまり、その君のおばあちゃんが他界した後から過去に遡れるようになったってことか?」
「そうだよ?」
疑問混じりに答える彼女は小動物らしさは変わらない。
むしろ、俺にはその態度が辛い。
「なんか、悪かったな。嫌な思い出を掘り起こして……」
「? 別に気にしないんだから良いよ~~」
彼女の純粋な過去を漁った罪悪感を覚えた俺は、勝手ながら話し合いを切り上げ今日の密会は閉幕となった。
翌日になるまで今日のことを考え続けた俺は遅刻間近になってしまった。
「おいおい、今日は危ないな。また夜更かしかよ」
俺の横に話しかけてくることが今となっては当たり前となっている男、斎藤。
「考え事してたら遅くなったんだよ」
「何をそんなに考え込んでたんだ?」
俺は嘘、偽りをなるべく減らすように努めた。
「彼女のことだよ、昨日話し合ったこと」
「彼女って言っても、ここでは彼の女ってことだからな」
本当に嘘は言わないことにした。
「女?そんな人が彼女歴=年齢のお前にいたのか?」
結局、捉え方に支障が出てしまったことは一応放っておいた。
そういえば、習慣となったことも確かに斎藤には言っていなかったような気がする。
しかし俺でさえ周囲の目が変わったことに気づいているというのに、この男はそれにさえ気づいていない。
どこまで鈍感なやつなんだ……
「いたよ、というかいるんだよ。佐藤さんだよ」
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