Over the time ~時を見る~

薪槻暁

The man with another side

 全体的には騒がしく、部分的には黙々と自分の机に向かって作業を進めるところもある。


 今年で高校二年となり上級生となった俺たちは、クラスの一部は受験モードに走っているが、まだ大半は遊ぶに限るといった表情の者が多い。


 そんな中、俺は普段と何一つ変わらぬ登校を終え、机に突っ伏す。


 俺はどちらでもない。それが今の立場だった。


 するとどこからか足音が聞こえ、名前を呼ばれた。




「さーわーだー、また来て早々寝てんのかよ。なんだ、昨日のイベントで周回してたのか?」


 俺に話しかけてきたこの男は、中学からの腐れ縁である斎藤優人だ。この姿、口ぶりからまさにゲーマーと喚起させられるが、実は結構人生設計を組んでいる現実主義な奴だったりする。


 これも例の事件が無かったら知れなかったのだ。


 ところで、俺はあの一件から斎藤とはある程度将来について話し合ったりするようになった。




「そうじゃない。先週出された課題が終わらなくてな……徹夜したんだ……」


「おいおい、それはないだろ。だって土日あったじゃないかよ」


 俺よりも斎藤が先に課題を終えているなど半年前には考えられなかった。これも彼が真面目に先を見据えていることの証明なのだろう。


「忘れてたんだよ」


 全くありもしない嘘を吐き自分で己を卑下するような感覚を感じる。


「お前らしくないな、最近いつもと違うような気がするぞ。なんかあったのか?」


 女性と会っている。なんて彼が信じるはずがないので曖昧な返事でなんとか誤魔化そうとしたが何も思い付かない。


 そういや、俺が出来なかったことをこいつは平然と成し遂げるんだな。




「お前はすごいな」


「どうした?お前本当に大丈夫か、何か変なもん食ってないだろうな」


 全く理解不能と言いたげな目をし、脳がオーバーフローのように機能が失っているようだった。まあこれは彼に対しては仕方が無いことだ。


「大丈夫だよ。斎藤も頑張れよ」


「やっぱ変だよ。今日のお前はーー」


 斎藤には理解しがたい微笑みを作ったところで本日のSHRが始まった。


 ――今日は連絡なし。以上だ――


 クラス担任は淡々とそう告げて教室を出ていった。


 対する俺は何をしていたのかと言われれば、何もしないでただ担任の言葉に耳を傾けていたわけではない。


 俺は思考していた。


――とりあえず、斎藤は平気だな――


 事故からの半年間。俺は何もせずにこの高校生活を過ごしていたわけではない。


 かといって、典型的な高校生のように勉学や部活動に勤しんでいたわけでもない。


 俺は俺に関係する身の周りの人々が、不幸にならないように幾度となく時を変えたのである。もちろん、斎藤や佐藤もそれに含んでいる。


 斎藤とはなるべく将来性のある話を語り合ったりし、それほど大きな事件は無かった。


 だが、彼女――佐藤瀬名と過ごしてきて何も起きないというのは逆に危惧すべきであった。


 語られることのない彼女の過去、時間を遡る能力について聞く機会が見つからない。
 彼女に直接聞いても良いのだが、過去に触れるといまにもこの世界から消えるような姿、表情となってしまい、俺は痛々しくてそれを見ていられなかった。




 今は彼女の過去をなんとか聞き出す。それが最優先事項だ。


 俺は一人呟いた。





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