Over the time ~時を見る~
The girl(new&old)
俺が出会ったあの日の彼女は、なんだかこの世界に飽きてしまった。そんな姿、表情だった。
周りの人間なんて目もくれず、ただ一点だけ、虚空を見つめていた。
だが、そんな状況でも一つだけ、ただ一つだけあることを切望していたような気がする。
あの日の彼女はそれを諦めて死んだのかもしれない。
古くさい紙の匂い、教室よりも大きめな窓から入り込む新鮮な空気。
人気という概念そのものが消失しているのではないかと思わせるほどの沈黙と静寂。
四人用テーブルに腰かけた、俺と彼女――佐藤瀬名は思いもしなかった言葉を口にする。
「私、過去が見えるの」
長い沈黙を破るのに先手を打たれた俺は唖然としていた。
その時の俺の気持ちは一言で表せない。
なんというか、共感出来る友人が増えた喜びや、時を変えるという禁じ手を知っている不安が入り交じっている。
「どういうことだ?」
未だに彼女の言葉が理解できなかった。
「どうもなにも、そのままよ」
「私はある現象のあらゆるパターンが見えるの」
続けて言う。
「例えば、あなたが斎藤君を助けたこととか。今のこの世界の斎藤君は無事に高校生活を送っている。けど交通事故に遭って意識不明、いや死んでしまっている彼もいる」
「それはあなたも知っているでしょう?」
斎藤が事故で意識不明の重体になっていたのは既知の事実だ。しかし、俺さえ知りもしなかった死亡というケースがあったことに驚きを隠せなかった。
「斎藤が死んだというのは知らない」
彼女は意外そうな目で見つめ答えた。
「そっか。じゃあ君は事故を起こして意識不明になったパターンしか知らないわけか」
そういうことか。俺は頭を殴られたように衝撃が走る。
「まて。お前はあいつが死んだ世界を知っているのか?」
「知っているも何も。私はその世界でも過ごしてきたんだよ」
「そういえば、君も貴重な友人を失ったせいで自殺したケースもあったね」
平然と目の前に座っている人が死んだ光景を口にする。それは教室の彼女から離れた姿だった。まるであの日の彼女に近づいているように……
「もうこの話はやめよう」
耐えきれなくなった俺は話の中断を申し出た。
「分かった。……でも、これだけは言わせて。ううん。覚えておいて」
聞き返すまでもない間合いだった。
「時間を変えられるのはその現象が起こってから一週間まで。それ以上はもう戻れない」
最後の発言を心に留め、俺はゆっくりとその場から離れていった。
周りの人間なんて目もくれず、ただ一点だけ、虚空を見つめていた。
だが、そんな状況でも一つだけ、ただ一つだけあることを切望していたような気がする。
あの日の彼女はそれを諦めて死んだのかもしれない。
古くさい紙の匂い、教室よりも大きめな窓から入り込む新鮮な空気。
人気という概念そのものが消失しているのではないかと思わせるほどの沈黙と静寂。
四人用テーブルに腰かけた、俺と彼女――佐藤瀬名は思いもしなかった言葉を口にする。
「私、過去が見えるの」
長い沈黙を破るのに先手を打たれた俺は唖然としていた。
その時の俺の気持ちは一言で表せない。
なんというか、共感出来る友人が増えた喜びや、時を変えるという禁じ手を知っている不安が入り交じっている。
「どういうことだ?」
未だに彼女の言葉が理解できなかった。
「どうもなにも、そのままよ」
「私はある現象のあらゆるパターンが見えるの」
続けて言う。
「例えば、あなたが斎藤君を助けたこととか。今のこの世界の斎藤君は無事に高校生活を送っている。けど交通事故に遭って意識不明、いや死んでしまっている彼もいる」
「それはあなたも知っているでしょう?」
斎藤が事故で意識不明の重体になっていたのは既知の事実だ。しかし、俺さえ知りもしなかった死亡というケースがあったことに驚きを隠せなかった。
「斎藤が死んだというのは知らない」
彼女は意外そうな目で見つめ答えた。
「そっか。じゃあ君は事故を起こして意識不明になったパターンしか知らないわけか」
そういうことか。俺は頭を殴られたように衝撃が走る。
「まて。お前はあいつが死んだ世界を知っているのか?」
「知っているも何も。私はその世界でも過ごしてきたんだよ」
「そういえば、君も貴重な友人を失ったせいで自殺したケースもあったね」
平然と目の前に座っている人が死んだ光景を口にする。それは教室の彼女から離れた姿だった。まるであの日の彼女に近づいているように……
「もうこの話はやめよう」
耐えきれなくなった俺は話の中断を申し出た。
「分かった。……でも、これだけは言わせて。ううん。覚えておいて」
聞き返すまでもない間合いだった。
「時間を変えられるのはその現象が起こってから一週間まで。それ以上はもう戻れない」
最後の発言を心に留め、俺はゆっくりとその場から離れていった。
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