Over the time ~時を見る~
the time of past(new)
自分が置かれている状況に気づいたのはこの場に誘われて間もなく数分経とうとした頃だった。
この場所――二日前起こった人身事故の駅だった。しかも今の時間はというと前回携帯で確かめた時刻と同じだった。
「はぁっ、はぁ…………流石に10分はきついな……」
どこからか聞いたことのある声が聞こえる。
「よし、1分余裕があるな」
自分の声を聞くというのは中々新鮮なものだ。例えばビデオや録画された媒体を再生することで聞く声のようなものではない生の声はどこか本物とは違う気がする。
このまま前回と同じ状況になるならと次に起こることを予想し周りを見渡す。
やはり、あの日亡くなったであろう少女の姿がそこにはあった。
よく見てみると虚ろな目でどこか遠くの景色を眺めている姿が写し出されていた。
このあとその姿は巨大な重量物で消えることになる。
そう思った瞬間だった。
二つの車両が交差するように、言い換えれば先日と同じように到着した。
だが、一つだけ異なる点があった。
二つの電車との距離は数センチメートル。つまり乗車すると反対方向の車両は丸見えとなる。
だがそんな必要もなくここからーーホームから確認できた。
四人座ることが可能なボックスシートに彼女は乗車していた。
そこで改めて気がつく、あの時アナウンスされた言葉が発されていないと。
「生きているじゃないか」
小さく呟く言葉は降車してきた人々には全く耳に入らないようだ。
そしてあの日の自分に声を掛けようとするが口が動かない。いや正確には声帯が震えないようだ。
そして、今度はあの日の自分の肩に手を伸ばした途端、目の前が白い蟠りに遮られ世界が消滅した。
視界が段々と開けていく。明るいのかそれとも暗いのかよく分からない。そうなるのも当然、今まで寝ていた場所――自分の部屋の窓を数センチ開け丁度その窓から流れ出る陽光が片目に降り注んでいる。
「ん…………」
徐に携帯へと手を伸ばす。手の感触だけで判断できる電源ボタンを押し現在時刻を確認する。
――8:30――
「おいおいおい。遅刻じゃないか」
咄嗟に飛び起き、身支度を平常よりも倍の速度で終えた。
結局学校に到着していた頃にはSHRが始まっていた。
だが、そこには見慣れたはずの生徒が黒板の前で立たされていた。斎藤ではなく、かといってクラスメートでもない。
すると教室の外つまり廊下にいる自分でも聞こえる、聞き慣れたあの担任の声だった。
「今日から同じクラスメイトになる佐藤瀬名だ、みんなよろしくな」
だが続く声の主は触れたらすぐ壊れてしまいそうな声の持ち主だった。
「佐藤 瀬名 です。よろしくお願いします」
彼女――佐藤瀬名はあの駅にいた彼女その人だった。
結局その後の自分の姿というか成り行きはというと、やっぱり時を読む、変えるといったトリガーは見出だせないままだった。
だが、時を読むことに共通する事項は考えすぎないことだった。こうなればいい、例えば宝くじが当たれなどという願望を心の隅かどこかでも持っていた時、時を見ることは出来なかった。
そして時を変える、この発生条件だけは分かった。それは人の生死が関係すること。他人を救いたいと思っていることである。
もう一度言っておくが俺は時間に慣れてしまった。だからこの日本社会で生きていくことも苦にならないだろう。
人はいつでも希望、願望を抱き、その裏で些細に感じている単純な願いは叶えてしまっている。
現実世界なんてそんなもんさ。
この場所――二日前起こった人身事故の駅だった。しかも今の時間はというと前回携帯で確かめた時刻と同じだった。
「はぁっ、はぁ…………流石に10分はきついな……」
どこからか聞いたことのある声が聞こえる。
「よし、1分余裕があるな」
自分の声を聞くというのは中々新鮮なものだ。例えばビデオや録画された媒体を再生することで聞く声のようなものではない生の声はどこか本物とは違う気がする。
このまま前回と同じ状況になるならと次に起こることを予想し周りを見渡す。
やはり、あの日亡くなったであろう少女の姿がそこにはあった。
よく見てみると虚ろな目でどこか遠くの景色を眺めている姿が写し出されていた。
このあとその姿は巨大な重量物で消えることになる。
そう思った瞬間だった。
二つの車両が交差するように、言い換えれば先日と同じように到着した。
だが、一つだけ異なる点があった。
二つの電車との距離は数センチメートル。つまり乗車すると反対方向の車両は丸見えとなる。
だがそんな必要もなくここからーーホームから確認できた。
四人座ることが可能なボックスシートに彼女は乗車していた。
そこで改めて気がつく、あの時アナウンスされた言葉が発されていないと。
「生きているじゃないか」
小さく呟く言葉は降車してきた人々には全く耳に入らないようだ。
そしてあの日の自分に声を掛けようとするが口が動かない。いや正確には声帯が震えないようだ。
そして、今度はあの日の自分の肩に手を伸ばした途端、目の前が白い蟠りに遮られ世界が消滅した。
視界が段々と開けていく。明るいのかそれとも暗いのかよく分からない。そうなるのも当然、今まで寝ていた場所――自分の部屋の窓を数センチ開け丁度その窓から流れ出る陽光が片目に降り注んでいる。
「ん…………」
徐に携帯へと手を伸ばす。手の感触だけで判断できる電源ボタンを押し現在時刻を確認する。
――8:30――
「おいおいおい。遅刻じゃないか」
咄嗟に飛び起き、身支度を平常よりも倍の速度で終えた。
結局学校に到着していた頃にはSHRが始まっていた。
だが、そこには見慣れたはずの生徒が黒板の前で立たされていた。斎藤ではなく、かといってクラスメートでもない。
すると教室の外つまり廊下にいる自分でも聞こえる、聞き慣れたあの担任の声だった。
「今日から同じクラスメイトになる佐藤瀬名だ、みんなよろしくな」
だが続く声の主は触れたらすぐ壊れてしまいそうな声の持ち主だった。
「佐藤 瀬名 です。よろしくお願いします」
彼女――佐藤瀬名はあの駅にいた彼女その人だった。
結局その後の自分の姿というか成り行きはというと、やっぱり時を読む、変えるといったトリガーは見出だせないままだった。
だが、時を読むことに共通する事項は考えすぎないことだった。こうなればいい、例えば宝くじが当たれなどという願望を心の隅かどこかでも持っていた時、時を見ることは出来なかった。
そして時を変える、この発生条件だけは分かった。それは人の生死が関係すること。他人を救いたいと思っていることである。
もう一度言っておくが俺は時間に慣れてしまった。だからこの日本社会で生きていくことも苦にならないだろう。
人はいつでも希望、願望を抱き、その裏で些細に感じている単純な願いは叶えてしまっている。
現実世界なんてそんなもんさ。
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