Over the memory~時を巡る~
His advice and fuzzy……
いつだったか他人と自分の違いとは何だろうかと考えたことがある。同じ人間、人というカテゴリに含まれている以上、変わりようがないその意識に悲しみさえもあったのではないか。
周囲は微笑みを舞わせる人々ばかり。
その中、異彩を放つ二人――俺と斎藤優人は座っている。
しかし、異彩を放つという喩えはじきに合わなった。
「ふっ、ふふ……ははははっ」
周りなど気にせずに高々と笑い上げる彼――斎藤優人はこの厳粛な雰囲気を壊したのだ。
「お前さ。人が真剣に相談してるって言うのにそれはないだろ」
対する俺は笑わない。真面目な相談なのでむしろ笑えないという方が正しい。
しかし、そんな俺の表情も気にせずに、
「だって、佐藤さんとお前の関係が悪くなったって言いたいんだろ?」
「そうだ、だからこそ聞きたいんだ」
相談内容――つまり、彼女が俺に対して冷たいのではないかということだった。
確かに彼氏、彼女という関係になった後、それから何かあったのかというわけでもない。むしろ付き合う前とほぼ変わらない毎日である。
だからこそ、彼女が今のこの関係に飽きてしまったと俺は予想したのだ。
「お前、気がつかないのか?」
彼からの言葉。それが俺には何を意味するのかといえばそういうことなのだろうか。
ただ、認めたくない。俺はまだ彼女とこのままの関係が良いのだ。だからこそ躊躇う。
「気がついてるよ……ただ認めたくないんだ……」
俺は正直に胸中を話した。
しかし、
「ふっふふふふ、ははっ」
二度目の笑い声が再び上がる。
「なんで笑うんだよ、笑い事じゃないだろ」
「笑うよ、そりゃ」
一度深呼吸してから彼は口を開き、
「それはお前自身が気付くべきだ」
「はああ?」
「俺はお前に佐藤さんとの関係をあーだこーだ言うべきじゃないだろ?」
確かに、人の関係に口出しするのは良いことだとは言い難い。だが、この状況では……
「だからこそ、お前自身が答えを見つけなきゃ意味がない」
結局、彼と会合を開いた意味があるようで無いような曖昧なものになってしまった。
『お前自身が気付くべきだ』
家に着いたままベッドに横たわった俺は彼からの助言を思い出す。
螺旋階段のような思考。見つかりそうで見つからない。たとえ見つかったとしても、それが答えだとは認めたくない矛盾。
「もう、俺には飽きたってことなのか……」
自分だけでは抜け出せないその迷宮に、助け船かのように彼からの呼出し音が響く。
「こんな時間になんだ?」
『そんな声するなって。教えてやるよその答えってやつをよ』
「自分自身で気づかなきゃ意味がないんじゃなかったのか?」
『そうだな。……だから俺はその答えのヒントをやる』
 
口出しさえもさせない間合いだった。
『お前しか分からない』
『これがヒントだ』
「比喩的すぎて頭が追い付かないんだが」
『今は分からなくても後に分かるようになるさ。だから別れようなんて愚問、絶対に考えるな』
「分かったよ。話はそれだけか?」
『ああ』
「じゃあ、切るぞ」
回線を切断させようとした時、ふと心残りが生まれた。
「なあ。なんであの時じゃなく今電話でアドバイスなんてしてるんだ?」 
向こう側から溜め息が聞こえる。
『家に帰ったら昔お前に助けられたことがあったようなことを思い出してよ。その借りを返そうと思い付いただけだ』
『まあ、事実そんなことあったかは覚えてないけどな』
 
「変な理由だな。俺は助けた覚えなんてないぞ」
「……でも……ありがとな」
『ん?ああこれで借りは返したってことで』
そうして、彼からの助言のような何かも伝え終えたようだった。
もちろん、そのヒントの意味も大方理解できた俺は、深い安堵に包まれながら眠りにつくことが出来たのだった。
周囲は微笑みを舞わせる人々ばかり。
その中、異彩を放つ二人――俺と斎藤優人は座っている。
しかし、異彩を放つという喩えはじきに合わなった。
「ふっ、ふふ……ははははっ」
周りなど気にせずに高々と笑い上げる彼――斎藤優人はこの厳粛な雰囲気を壊したのだ。
「お前さ。人が真剣に相談してるって言うのにそれはないだろ」
対する俺は笑わない。真面目な相談なのでむしろ笑えないという方が正しい。
しかし、そんな俺の表情も気にせずに、
「だって、佐藤さんとお前の関係が悪くなったって言いたいんだろ?」
「そうだ、だからこそ聞きたいんだ」
相談内容――つまり、彼女が俺に対して冷たいのではないかということだった。
確かに彼氏、彼女という関係になった後、それから何かあったのかというわけでもない。むしろ付き合う前とほぼ変わらない毎日である。
だからこそ、彼女が今のこの関係に飽きてしまったと俺は予想したのだ。
「お前、気がつかないのか?」
彼からの言葉。それが俺には何を意味するのかといえばそういうことなのだろうか。
ただ、認めたくない。俺はまだ彼女とこのままの関係が良いのだ。だからこそ躊躇う。
「気がついてるよ……ただ認めたくないんだ……」
俺は正直に胸中を話した。
しかし、
「ふっふふふふ、ははっ」
二度目の笑い声が再び上がる。
「なんで笑うんだよ、笑い事じゃないだろ」
「笑うよ、そりゃ」
一度深呼吸してから彼は口を開き、
「それはお前自身が気付くべきだ」
「はああ?」
「俺はお前に佐藤さんとの関係をあーだこーだ言うべきじゃないだろ?」
確かに、人の関係に口出しするのは良いことだとは言い難い。だが、この状況では……
「だからこそ、お前自身が答えを見つけなきゃ意味がない」
結局、彼と会合を開いた意味があるようで無いような曖昧なものになってしまった。
『お前自身が気付くべきだ』
家に着いたままベッドに横たわった俺は彼からの助言を思い出す。
螺旋階段のような思考。見つかりそうで見つからない。たとえ見つかったとしても、それが答えだとは認めたくない矛盾。
「もう、俺には飽きたってことなのか……」
自分だけでは抜け出せないその迷宮に、助け船かのように彼からの呼出し音が響く。
「こんな時間になんだ?」
『そんな声するなって。教えてやるよその答えってやつをよ』
「自分自身で気づかなきゃ意味がないんじゃなかったのか?」
『そうだな。……だから俺はその答えのヒントをやる』
 
口出しさえもさせない間合いだった。
『お前しか分からない』
『これがヒントだ』
「比喩的すぎて頭が追い付かないんだが」
『今は分からなくても後に分かるようになるさ。だから別れようなんて愚問、絶対に考えるな』
「分かったよ。話はそれだけか?」
『ああ』
「じゃあ、切るぞ」
回線を切断させようとした時、ふと心残りが生まれた。
「なあ。なんであの時じゃなく今電話でアドバイスなんてしてるんだ?」 
向こう側から溜め息が聞こえる。
『家に帰ったら昔お前に助けられたことがあったようなことを思い出してよ。その借りを返そうと思い付いただけだ』
『まあ、事実そんなことあったかは覚えてないけどな』
 
「変な理由だな。俺は助けた覚えなんてないぞ」
「……でも……ありがとな」
『ん?ああこれで借りは返したってことで』
そうして、彼からの助言のような何かも伝え終えたようだった。
もちろん、そのヒントの意味も大方理解できた俺は、深い安堵に包まれながら眠りにつくことが出来たのだった。
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