俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。
040.末恐ろしいのですが……?
一般的な学生の人々はもうすでに就寝しているだろう時間帯、日めくりカレンダーを一枚めくろうとする瞬間を待ちわびているのは曲谷孔、中学二年、幼さが残る面持ちの俺だ。
いや、今はその名前は使わないことにしよう。なぜなら現時点での俺の名前は「早苗月亮」。
俺は自分のパソコンのモニターを睨みながら、いつ行動を起こすべきか悶々と悩み、迷走中。
まるで好きな人からのメッセージが届かないかと待ち望んでいるリア充のようだ。言っておくが俺はそんなものには興味はないがな(リア充爆発しろっ)。
「嗚呼、早く来ておくれーー、ワターシハモウガンマンデキマセン!」
自覚しているというのなら相当なものであろう。今の俺の気分は普段よりも絶大に高揚している。
来ておくれというのは、さっきのような彼女からの手紙やら文章ではなく(そもそも彼女なんて存在しない)、時間だ。
11時59分、これらがオールゼロになった時、全ては始まる。
そう、俺は現在嵌まりにはまっているネット小説の投稿時刻を待望しているのだ。
宝くじの当選結果を見たいようなものに近く、試験の合否結果を見たいものではない。
いわゆるリスクを承知の上に立った、勝負をしているのと同じ、能力によって決まる要素もあるのかもしれないが、誰かが、自分の小説を読んで、その人の心の隙に入り込めるチャンス、それをそれだけを望んでいるのだ。
別に自分の小説が売れて欲しいとか、名声を得たいわけじゃない。ただ、読んで欲しいだけだ。
それもこの投稿サイトの掲示板に乗ることから始まる。
ーーーー-0:00------
「今だっ」と言わんばかりに「投稿」ボタンを連続クリックする。カチカチカチカチとダブルクリックする音が俺の部屋を反響させる。
そうして俺は「投稿完了」という文字を確認してから投稿サイトの掲示板を確認するのだ。すると、
ーー俺の異世界転生先は妹だらけのワンダーワールドだったーー
なんともいかがわしさMAXの作品タイトルが画面に堂々と貼り付けられていた。
通称、いもいもワンダーランドと呼ばれる(俺がそう呼んでいるだけだが)この小説は俺の自信の大作、全てが詰まっていると言っても過言ではない。
内容は……タイトル通りの妹しかいない世界に生まれ変わるというものだが、実のところ、妹のことが好きなわけではない、その場のノリで書いたら筆が進んでしまったというわけだ。
まあそのせいでとある関係がギクシャクしてしまったのは言うまでもないが。だが、俺以外の人間はこれまた評価が二つに分かれるのだ。
一方は妹フィーバーの作品肯定派、もう一方は理解しがたいと主張する作品反対派だ。
毎度恒例行事のように投稿した数分後に自作感想欄を開く、そこで派閥争いが起こっているのだ。
誰かが、「この作品は継承すべき人類の英知だ」なんて中二病満載の感想を書く奴もいるし、「こんな駄作、後世に残すべきではない。
なぜこんな作品肯定派が生まれるのか理解出来ない」と不満をぶちまける奴もいる。ここは●チャンネルじゃないっての。
そう、いつもの如く論争している中に飛び込むと、やはり一人だけ、「出雲流」という名前の人物が書いたもの、そもそもこれが普通の感想であるはずの文が見つかった。
『最新話投稿ありがとうございますっ!やっぱり、というとちょっぴり失礼かもしれませんが早苗月先生の作品は惹かれますねw。なんといってもこの主人公の!やっぱりスルトとユリィのバトルシーンはたまりません……純愛で素朴な恋愛をしていたにもかかわらず……』と長々と作品について語ってくれるこの感想文は、俺がこの作品を投稿すると毎度のように投稿後数分経って送られてくるのだ。
俺として、いや小説家としてこれほど自分の作品について語ってくれるのはこれ以上にないほど嬉しいものだろう。『この台詞が好きです、頑張ってください』なんて言われたらもう最高である。
しかも俺が脳内で描いているキャラクターやら背景画を自分で描いてそれを感想文とともに添付ファイルを送ってくるのである。
それがまた考えているまさにその場景で脳に描いたものが二次元として生まれ変わっているようで、この人は神かと思うほど。
何度も送ってくるので自分のパソコンのフォルダ「いもいもワンダーランド絵画」に50枚以上の画像が入っている。
「またこの人か……」
そんな恩恵をくれる人物であるのだが。
「この一文が要らないんだよなーーーー、というか……」と言葉を濁らす俺は致し方ない。
『追記』
『どこに住んでいますか?日本ですか?住所はどこですか?電話番号は何ですか?男性ですか、それとも女性ですか?何歳なんですか?郵便番号はいくつですか?彼氏又は彼女っているんですか?子供はいるんですか?』
「いや、こええって!!!!」
パソコンの画面を下にスクロールするや否やマウスをベッドに投げつける俺。
そう、素晴らしいお言葉、激励をくれるありがたい読者であるのだが……
どこか別の方向に向かって度が過ぎているのだ。
いや、今はその名前は使わないことにしよう。なぜなら現時点での俺の名前は「早苗月亮」。
俺は自分のパソコンのモニターを睨みながら、いつ行動を起こすべきか悶々と悩み、迷走中。
まるで好きな人からのメッセージが届かないかと待ち望んでいるリア充のようだ。言っておくが俺はそんなものには興味はないがな(リア充爆発しろっ)。
「嗚呼、早く来ておくれーー、ワターシハモウガンマンデキマセン!」
自覚しているというのなら相当なものであろう。今の俺の気分は普段よりも絶大に高揚している。
来ておくれというのは、さっきのような彼女からの手紙やら文章ではなく(そもそも彼女なんて存在しない)、時間だ。
11時59分、これらがオールゼロになった時、全ては始まる。
そう、俺は現在嵌まりにはまっているネット小説の投稿時刻を待望しているのだ。
宝くじの当選結果を見たいようなものに近く、試験の合否結果を見たいものではない。
いわゆるリスクを承知の上に立った、勝負をしているのと同じ、能力によって決まる要素もあるのかもしれないが、誰かが、自分の小説を読んで、その人の心の隙に入り込めるチャンス、それをそれだけを望んでいるのだ。
別に自分の小説が売れて欲しいとか、名声を得たいわけじゃない。ただ、読んで欲しいだけだ。
それもこの投稿サイトの掲示板に乗ることから始まる。
ーーーー-0:00------
「今だっ」と言わんばかりに「投稿」ボタンを連続クリックする。カチカチカチカチとダブルクリックする音が俺の部屋を反響させる。
そうして俺は「投稿完了」という文字を確認してから投稿サイトの掲示板を確認するのだ。すると、
ーー俺の異世界転生先は妹だらけのワンダーワールドだったーー
なんともいかがわしさMAXの作品タイトルが画面に堂々と貼り付けられていた。
通称、いもいもワンダーランドと呼ばれる(俺がそう呼んでいるだけだが)この小説は俺の自信の大作、全てが詰まっていると言っても過言ではない。
内容は……タイトル通りの妹しかいない世界に生まれ変わるというものだが、実のところ、妹のことが好きなわけではない、その場のノリで書いたら筆が進んでしまったというわけだ。
まあそのせいでとある関係がギクシャクしてしまったのは言うまでもないが。だが、俺以外の人間はこれまた評価が二つに分かれるのだ。
一方は妹フィーバーの作品肯定派、もう一方は理解しがたいと主張する作品反対派だ。
毎度恒例行事のように投稿した数分後に自作感想欄を開く、そこで派閥争いが起こっているのだ。
誰かが、「この作品は継承すべき人類の英知だ」なんて中二病満載の感想を書く奴もいるし、「こんな駄作、後世に残すべきではない。
なぜこんな作品肯定派が生まれるのか理解出来ない」と不満をぶちまける奴もいる。ここは●チャンネルじゃないっての。
そう、いつもの如く論争している中に飛び込むと、やはり一人だけ、「出雲流」という名前の人物が書いたもの、そもそもこれが普通の感想であるはずの文が見つかった。
『最新話投稿ありがとうございますっ!やっぱり、というとちょっぴり失礼かもしれませんが早苗月先生の作品は惹かれますねw。なんといってもこの主人公の!やっぱりスルトとユリィのバトルシーンはたまりません……純愛で素朴な恋愛をしていたにもかかわらず……』と長々と作品について語ってくれるこの感想文は、俺がこの作品を投稿すると毎度のように投稿後数分経って送られてくるのだ。
俺として、いや小説家としてこれほど自分の作品について語ってくれるのはこれ以上にないほど嬉しいものだろう。『この台詞が好きです、頑張ってください』なんて言われたらもう最高である。
しかも俺が脳内で描いているキャラクターやら背景画を自分で描いてそれを感想文とともに添付ファイルを送ってくるのである。
それがまた考えているまさにその場景で脳に描いたものが二次元として生まれ変わっているようで、この人は神かと思うほど。
何度も送ってくるので自分のパソコンのフォルダ「いもいもワンダーランド絵画」に50枚以上の画像が入っている。
「またこの人か……」
そんな恩恵をくれる人物であるのだが。
「この一文が要らないんだよなーーーー、というか……」と言葉を濁らす俺は致し方ない。
『追記』
『どこに住んでいますか?日本ですか?住所はどこですか?電話番号は何ですか?男性ですか、それとも女性ですか?何歳なんですか?郵便番号はいくつですか?彼氏又は彼女っているんですか?子供はいるんですか?』
「いや、こええって!!!!」
パソコンの画面を下にスクロールするや否やマウスをベッドに投げつける俺。
そう、素晴らしいお言葉、激励をくれるありがたい読者であるのだが……
どこか別の方向に向かって度が過ぎているのだ。
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