俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。
04.信じたくないのですが……?
んでここに俺という新入生部員という片割れが居残っているわけだが、どうやら相当危険な場所に足を踏み入れてしまったらしい。
いやしかしだ、ここまで予想できる方が可笑しいというものだ。校舎の端に寄せられた唯一の活動場所、掲示板に貼られていなかった新入生歓迎の文字。
というかそもそも入学式の後の部活動紹介であそこまで脱力した部活動であれば、俺のように高校生デビューなど毛頭ない輩が集まってくるはずなのではないのか。
それもなく、この教室に居座るのは俺を含んで二人しかいない。しかも女子、おそらくネクタイの色からみても同年代。
リア充爆発しろというアンチテーゼを掲げて生きる孤独な人間な俺にとっては、こんなラブコメの波動を感じる男女二人だけの教室などアウェー中のアウェーだ。
どちくしょうと俺の頭の四隅で考えながらも俺はその女の反対側の席にさりげなく座る。
どうやらその女生徒は我が道を行く、なんて掲げるように自分のパソコンをいじっているようで俺の存在には見向きもしない。
俺は書類の塊に途方に暮れていたため何も考えずに同じくノートパソコンを開いた、決して対抗したわけではない、そう信じたい。
デスクトップを開くと編集者から送られた改編を促す小説を書き進めていくことにした。この二人だけという環境もあるのだが、何しろこの禍々しい量の分厚い紙束を見ていられなかったのだ。
「ったく、またこれかよ。お前は俺の母親か何かかよ。いや……鬼も同然だな。ははっ」
仕事関係は自宅の部屋でしか行わないために自分が今置かれている状況に気付いた時には遅かった。
反対側から俺の顔を覗いてくるのが瞼は見えないが、視線で分かった。
「あっ、すんません……」
俺はへこへこと頭を下げながら自分のパソコンに頭をぶつける、なんて社畜という体系に属しているように醸し出すのが得意なのか俺は。
数十分後。俺は漸く書き終えた改編小説を添付ファイルに入れて送信者の欄に忌々しい編集者のアドレスを打ち込むとファイル内を確認することなく即座に送りつけた。
数分後。返信が怒涛の赤線と赤文字の羅列に埋まったもはや俺の小説ではないそれが返されてきた。
数十分後。俺は編集を済まして再度送り付ける。
数分後。さらに速い速度で返信。
俺は度重なる送信と返答の螺旋階段に歩き疲れたので、瞬時に赤文字を直し送り返してやるが、それよりも速いスピードで返信がやってくる。
送られる、返す、送られる、返す。何度繰り返せば済むのか分からないその無限ループが段々とリズミカルに運動を起こす。
ん?リズミカル?
俺が送る作業をしているとき、俺の前に座る彼女はただ茫然と座るだけだ。
だがこれまた俺が編集を終え送りつけてやると彼女は自分の体に霊が入り込んだかのように恐ろしいスピードでキーボードを打ち鳴らす音が聞こえる。
まさか……。
いやそんなことあるわけがない。というかこんな俺と同年代で?こんな静かそうでおしとやかそうな人が?
うん、何かの間違いだ。俺はそう自問自答しながら先の先輩が取り出した棚に戻り、さりげなく彼女の背後からデスクを垣間見る。
無数に散らばる黒文字の羅列、に彼女は黙々と赤字で消しては上乗せしている。
あるときは改行して、またあるときは余白を作りながらと巧みにパソコンを司る彼女の姿は俺のそれとは一風変わったもので、俺よりも上に突き進む職人の姿であった。
とはいうものの。俺は彼女のデータの名前に俺の作品タイトルが書かれていることでそれは事実確定したようなもので。
「それ俺の作品なんですけど……」
洗練された指使いから受け取れるようなものじゃない返答が返ってきて俺は戸惑うしかなかった。
「は?」
そう。俺はここからこの面倒な女とやり取りをやっていくんだと、考えたくもない事実を突きつけられた瞬間だった。
いやしかしだ、ここまで予想できる方が可笑しいというものだ。校舎の端に寄せられた唯一の活動場所、掲示板に貼られていなかった新入生歓迎の文字。
というかそもそも入学式の後の部活動紹介であそこまで脱力した部活動であれば、俺のように高校生デビューなど毛頭ない輩が集まってくるはずなのではないのか。
それもなく、この教室に居座るのは俺を含んで二人しかいない。しかも女子、おそらくネクタイの色からみても同年代。
リア充爆発しろというアンチテーゼを掲げて生きる孤独な人間な俺にとっては、こんなラブコメの波動を感じる男女二人だけの教室などアウェー中のアウェーだ。
どちくしょうと俺の頭の四隅で考えながらも俺はその女の反対側の席にさりげなく座る。
どうやらその女生徒は我が道を行く、なんて掲げるように自分のパソコンをいじっているようで俺の存在には見向きもしない。
俺は書類の塊に途方に暮れていたため何も考えずに同じくノートパソコンを開いた、決して対抗したわけではない、そう信じたい。
デスクトップを開くと編集者から送られた改編を促す小説を書き進めていくことにした。この二人だけという環境もあるのだが、何しろこの禍々しい量の分厚い紙束を見ていられなかったのだ。
「ったく、またこれかよ。お前は俺の母親か何かかよ。いや……鬼も同然だな。ははっ」
仕事関係は自宅の部屋でしか行わないために自分が今置かれている状況に気付いた時には遅かった。
反対側から俺の顔を覗いてくるのが瞼は見えないが、視線で分かった。
「あっ、すんません……」
俺はへこへこと頭を下げながら自分のパソコンに頭をぶつける、なんて社畜という体系に属しているように醸し出すのが得意なのか俺は。
数十分後。俺は漸く書き終えた改編小説を添付ファイルに入れて送信者の欄に忌々しい編集者のアドレスを打ち込むとファイル内を確認することなく即座に送りつけた。
数分後。返信が怒涛の赤線と赤文字の羅列に埋まったもはや俺の小説ではないそれが返されてきた。
数十分後。俺は編集を済まして再度送り付ける。
数分後。さらに速い速度で返信。
俺は度重なる送信と返答の螺旋階段に歩き疲れたので、瞬時に赤文字を直し送り返してやるが、それよりも速いスピードで返信がやってくる。
送られる、返す、送られる、返す。何度繰り返せば済むのか分からないその無限ループが段々とリズミカルに運動を起こす。
ん?リズミカル?
俺が送る作業をしているとき、俺の前に座る彼女はただ茫然と座るだけだ。
だがこれまた俺が編集を終え送りつけてやると彼女は自分の体に霊が入り込んだかのように恐ろしいスピードでキーボードを打ち鳴らす音が聞こえる。
まさか……。
いやそんなことあるわけがない。というかこんな俺と同年代で?こんな静かそうでおしとやかそうな人が?
うん、何かの間違いだ。俺はそう自問自答しながら先の先輩が取り出した棚に戻り、さりげなく彼女の背後からデスクを垣間見る。
無数に散らばる黒文字の羅列、に彼女は黙々と赤字で消しては上乗せしている。
あるときは改行して、またあるときは余白を作りながらと巧みにパソコンを司る彼女の姿は俺のそれとは一風変わったもので、俺よりも上に突き進む職人の姿であった。
とはいうものの。俺は彼女のデータの名前に俺の作品タイトルが書かれていることでそれは事実確定したようなもので。
「それ俺の作品なんですけど……」
洗練された指使いから受け取れるようなものじゃない返答が返ってきて俺は戸惑うしかなかった。
「は?」
そう。俺はここからこの面倒な女とやり取りをやっていくんだと、考えたくもない事実を突きつけられた瞬間だった。
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