俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。
01.普段と変わらないのですが……?
「どうか、本校で自分の生き方、人生観を培いながら生活していって欲しいです」
高校デビューしても何らかの長が儀式や朝会を開くときに話すのは変わらないようで、あまり高校生という実感がわかない。
これは自分だけなのだろうかと疑念も浮かぶので周りを見渡すのだが、手元をひたすら眺める人物、小説に耽る人物、とある紙を一蹴するように遠い眼差しで見つめる人物。どうやら俺だけではないようで安心した。
「以上です」
誰なのかも名前も知らないお偉いさんによるご祝辞かなんとかがようやく終わり解放感に入り浸っているのだが、それも束の間。次は見た目からしてヤクザのような強面の男が舞台に上がった。
「次は生活指導主任の後藤時頼先生からのお話があります」
瞬時に彼の容姿がステージ上でマッチしている理由を理解できた。おそらくこれは非行行為に至らないための一種の脅迫だ。
「俺が後藤だ。俺からは1つしか話さん、心して聞け」
なるほどやはり体育系だな、短気そうだ。
「この学校に所属する生徒全員、少なくとも一つ部活動に励め、以上だ」
事の真意が理解しきっていないのはどうやら俺だけではないようで周りの連中は至る所でこそこそと囁き合っている。
「何言ってんの?」とか「それだけ?」だとか、まあそりゃあ信じようがないというか、なぜそこまでして部活動に執着するのか?という本質的な問題の方が俺にとっては重要だったのだが。
「いやしかし……何に入るべきか?」
そうこうしているうちに式も佳境に入り、セレモニーは部活動紹介に移る。
そもそも始業式になぜこんなことをするのかという疑問は置いといて、続々と各部活に所属している人物らしき人がステージの両裾から登場する。
『サッカー部です!』
運動部は入らないつもりの俺は片方の耳から聞いてもう片方の耳へ流すように聞いているだけだ。
「そんなの入ったら執筆できねえっての」
周りに聞こえないような声で囁くと、別に聞いてもらうために言ったわけでもないのに俺の右斜め前の女子生徒がこちらを振り返った。
こちらも挨拶代わりにと会釈するがじろりと顔を一瞥してからぷいっと前へ顔を戻した。
その態度は気にくわなかったが、彼女はまさに容姿端麗、長い黒髪を下げたTHEお嬢さまのような人だった。
『次に文化部について紹介します!』
俺が注目するのはここからだ。さっきまでよりも少しばかり背筋を伸ばし彼らの話に耳を向ける。
『科学部です!』
授業だけでも退屈なのにそこまで勉強したいか。
『美術部です!』
絵なんて何年も描けないのはもうすでに知ってる。
『天文学部です!』
星なんていつだって見られるだろう。
『料理部です!』
俺が作れば全てダークマターと化す。
『マルチメディア部です!』
パソコンなんてワープロ機能しか使わない。
『オカルト部です!』
いや何するんだよ。
ということで残りの部活もあと一つのみとなってしまった。この部活にも入りたくない理由が生まれてしまったらオカルト部に入ろうかと考えたが、そんなことはしなくてもいいようだ。
『文芸部です』
さっきまで威勢のいい掛け声とともに活動内容などを紹介していたが最後ばかりは全く違った。
『本を読んだり、書いたりします……』
そんな短文を発表するだけなのにどこか上の空のような口調だった。部活動紹介最後のトリでもあったので生徒全体のムードは無残にも破壊されたが俺にはどうってことない。
むしろ嬉しくてはしゃぎたくなるほどの気分の高まりだ。
「ここなら穏やかに過ごせる……」
誰にも聞こえないよう決意を表明したのだが、さっき後ろを振り向いてきた女子生徒には聞こえてしまっただろうかと疑心暗鬼するような感覚に襲われた。
高校デビューしても何らかの長が儀式や朝会を開くときに話すのは変わらないようで、あまり高校生という実感がわかない。
これは自分だけなのだろうかと疑念も浮かぶので周りを見渡すのだが、手元をひたすら眺める人物、小説に耽る人物、とある紙を一蹴するように遠い眼差しで見つめる人物。どうやら俺だけではないようで安心した。
「以上です」
誰なのかも名前も知らないお偉いさんによるご祝辞かなんとかがようやく終わり解放感に入り浸っているのだが、それも束の間。次は見た目からしてヤクザのような強面の男が舞台に上がった。
「次は生活指導主任の後藤時頼先生からのお話があります」
瞬時に彼の容姿がステージ上でマッチしている理由を理解できた。おそらくこれは非行行為に至らないための一種の脅迫だ。
「俺が後藤だ。俺からは1つしか話さん、心して聞け」
なるほどやはり体育系だな、短気そうだ。
「この学校に所属する生徒全員、少なくとも一つ部活動に励め、以上だ」
事の真意が理解しきっていないのはどうやら俺だけではないようで周りの連中は至る所でこそこそと囁き合っている。
「何言ってんの?」とか「それだけ?」だとか、まあそりゃあ信じようがないというか、なぜそこまでして部活動に執着するのか?という本質的な問題の方が俺にとっては重要だったのだが。
「いやしかし……何に入るべきか?」
そうこうしているうちに式も佳境に入り、セレモニーは部活動紹介に移る。
そもそも始業式になぜこんなことをするのかという疑問は置いといて、続々と各部活に所属している人物らしき人がステージの両裾から登場する。
『サッカー部です!』
運動部は入らないつもりの俺は片方の耳から聞いてもう片方の耳へ流すように聞いているだけだ。
「そんなの入ったら執筆できねえっての」
周りに聞こえないような声で囁くと、別に聞いてもらうために言ったわけでもないのに俺の右斜め前の女子生徒がこちらを振り返った。
こちらも挨拶代わりにと会釈するがじろりと顔を一瞥してからぷいっと前へ顔を戻した。
その態度は気にくわなかったが、彼女はまさに容姿端麗、長い黒髪を下げたTHEお嬢さまのような人だった。
『次に文化部について紹介します!』
俺が注目するのはここからだ。さっきまでよりも少しばかり背筋を伸ばし彼らの話に耳を向ける。
『科学部です!』
授業だけでも退屈なのにそこまで勉強したいか。
『美術部です!』
絵なんて何年も描けないのはもうすでに知ってる。
『天文学部です!』
星なんていつだって見られるだろう。
『料理部です!』
俺が作れば全てダークマターと化す。
『マルチメディア部です!』
パソコンなんてワープロ機能しか使わない。
『オカルト部です!』
いや何するんだよ。
ということで残りの部活もあと一つのみとなってしまった。この部活にも入りたくない理由が生まれてしまったらオカルト部に入ろうかと考えたが、そんなことはしなくてもいいようだ。
『文芸部です』
さっきまで威勢のいい掛け声とともに活動内容などを紹介していたが最後ばかりは全く違った。
『本を読んだり、書いたりします……』
そんな短文を発表するだけなのにどこか上の空のような口調だった。部活動紹介最後のトリでもあったので生徒全体のムードは無残にも破壊されたが俺にはどうってことない。
むしろ嬉しくてはしゃぎたくなるほどの気分の高まりだ。
「ここなら穏やかに過ごせる……」
誰にも聞こえないよう決意を表明したのだが、さっき後ろを振り向いてきた女子生徒には聞こえてしまっただろうかと疑心暗鬼するような感覚に襲われた。
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