チビでドジな私の従魔士道

ノベルバユーザー487211

7偉そうな騎士と神官女

私もその中の1人。なにするんだろ?集められて少しすると、昨日の騎士と深々とベールを被った女性が現れた。

「皆の者喜べ。今年は神官女シンカンジョ様が同行されている。神官女様のご好意により、神より与えられし使命を見てくださる」

神より与えられし使命?私もそうだけど皆んなも意味がわからずザワザワとしていた。

「人の中には産まれながらにして神より使命を与えられたものがいる。それを見ることができるお方が神官女様だ」

農民に生まれれば一生農民。貴族に生まれれば貴族。騎士の家に生まれれば騎士。そう思っている事だろうと騎士は話を続けた。

「しかし!神官女様のお力を借り神より与えられし使命があるものには、それに準じた職を与える事が出来る!農民を抜け出すチャンスなのだ!」

はぁ。別に私は農民で不自由もしてなければ不満もない。今のままで全然良いんだけど。でも違う子もいる。
俺にも騎士の使命とかあればこの暮らしから抜け出せる。私も死ぬまで畑仕事なんて嫌よ!良い職に就かせてもらえるなら家族を養える。皆んな意見は様々だった。

「では1人ずつ神官女様の前に出てくるように。なお拒否をする事は許されていない」

なんか偉そうだな。この騎士。何様だよ。騎士様か。1人ボケツッコミする私。心配で見に来ていた親の1人があの…と騎士に声を上げる。

「もしも、もしも私の子が神からの使命を与えられていた場合…子供はどうなるのでしょう…」
「使命にもよるが重要な使命であるならば、幼いうちは国で保護し王都にて教育を施す」
「それは親もついていけるのでしょうか?」
「子だけだ。神の使命に甘えは許されない。神の使命を持つ子を産めたことを誇りに思うと良い」

なにそれ!?勝手に来て集めて話がこれ!?酷すぎる。

「騎士様。それではあんまりです。村にとって子供達は将来を担う大切な存在です」
「村の将来と神の使命。天秤にかけなくてもどちらが大切かなんて明白だろう」
「そんな…」
「これは王命だ。逆らうことは許さん」

騎士の言葉にシーンとする村人達。

「ま、それはいればの話しだ。ここに来るまでに7つの村を回ったが誰1人として神の使命を持つものはいなかった。それだけ数が少ないのだ。それに使命を終えれば多額の報償金と地位が約束されている。そのあと一緒に暮らす事も可能だ。長くても数年といったところだろう」

その言葉に皆んな、ビックリさせてとホッとした顔をしていた。それに反して騎士の顔には影があるように見えるのは気のせい…なのかな。
さっきまで神の使命があればと言っていた人達も、さっさとやって畑仕事に戻ろうと言っていた。私もそう思う。早く戻りたい。退屈だ。

「では1人ずつ前へ」

20数名が神官女様の前に列を作った。この小さな村では、かき集めても12歳から20歳と限定されるとこれぐらいしかいない。1人。また1人と終わり終わった人から帰って行った。
ま、ここでも全員農民しか出ないだろうし神官さん様も大変ね。後ろ手を組みながら順番を待った。

そう思っていたら18歳のザケルが終わっても帰らず待機していた。もしかして…。ザケルは村の端に住んでいた為あまり会う事はなかったけど、お互い名前は知っている間柄。何かあったのであれば気になる。

「マロン、もしかしてザケルのやつって…」
「わかんない。どうなんだろう…」

私の前に並んだいたドッジも気になるのだろう。心配そうな顔をしていた。

「では次!」
「俺の番だ。言ってくる」
「はーい」

ここまで来れば神官女と見てもらっている人の会話も聞こえてきた。ドッジの前に見てもらっていた2人は、なにもありませんお帰り下さいと言われていた。なにもありませんって言い方もどうなのよ。

「目を閉じ心を穏やかに呼吸をして下さい」
「は、はい」

ドッジのやつ緊張してるぅ。後でからかってやろ。神官女は左手をドッジの前に掲げ右手に本を持っていた。本が勝手にパラパラとめくれ、神官女はただその本を見ているだけだった。風吹いてたっけ。

「おめでとうございます。素晴らしいわ。あなたには神より#神器__シンキ__#を作る鍛冶士としての指名を受けていらっしゃいます」

へ?ドッジが鍛冶士?1度もドッジが何かを作るのを見た事なんてない。それなのに鍛冶士。なにあれ。適当なんじゃないの。横で待つようにと言われたドッジは、うーんと言った顔でザケルの横に並んでいた。

「では次!」
「はーい」

チラッと神官女が持っている本を見たが文字が羅列しすぎててよく見えない。

「目を閉じ心を穏やかに呼吸をして下さい」

掲げられた左手から温かいものを感じる。これが見られてるって事なのかな。








「こんにちは」

ん?誰の声。誰かが挨拶してる声がする。村の人かな。

「おーい。こんにちは。目を開けて大丈夫だよ」
「え?」

終わったの?パッと目を開けると真っ白な空間。

「やぁ。ちゃんと会うのは初めましてだね。君は初めてじゃないんだろうけど」

笑いながら夢人さんが話しかけてきた。え?これ夢?まさか目を閉じたらそのまま寝ちゃったとか…。焦る私の顔を見て起きてるから大丈夫だよと言ってくれた。

「今君、神力が強い人がいる教会にいる?」
「いぃえ。神官女の前には立ってるけど」
「あぁ。それでか」

夢人さんが不思議がる私に説明してくれる。時折感じる見えない気配を感じていたこと。悪意はない気配だったため気には止めてなかったこと。でも、恋愛模様まで見られるのは嫌だったらしく私が神力に触れる機会がある時にコンタクトを取れるようにしていて今があること。

「なんでそんな事が出来るの!?」
「僕の側には妖精がいるし聖女様もいるから実現できた事だよ」
「妖精!?」
「そ。生意気なね」

聖女様とは夢人さんに抱きついた女の人。妖精が魔法陣を作り聖女がその魔法陣に神力を流す。妖精が私の気配とのルートを繋げる道を作り待っていたらしい。

「でも、やっぱり変な感じがするなぁ。僕が女の子かぁ」
「へ?」
「君は僕の生まれ変わり。だから僕の事を見にこれたんだろうけど、女の子かぁ…」
「な、なんで生まれ変わりってわかるの!?」
「魂の形が一緒だからさ。魂はどんなに生まれ変わっても形が変わる事はない。入る器が違ってもね。ま、妖精の受け売りだけどさ」

凄い。妖精ってそんな事もわかるんだ。不思議。でも、夢人さんを見た時に妖精らしきものはいなかったけどな。

「で、君が今いる時代はどこ?」
「今いる時代?えーっと…」
「あぁ。何世紀かで答えてくれれば良いよ」
「それなら12世紀よ」
「僕が死んで200年も経ってるのかぁ…」

あぁ、それで鎧とか建物とかがなんかちょっと古臭いなと思ったのはそのせいか。

「それで君は従魔士なの?」
「レインはそう言うけど、従魔士なんておとぎ話の話しよ。それに魔獣なんて知らなかったもの」

おかしいな。魔獣がいない?そんな事があるのか…と夢人さんは考え込んでしまった。

「ねぇ、夢人さん。従魔士って具体的にどんな事するの?おとぎ話では、勇者と一緒に魔獣を使って悪い奴らをやっつけたりしてるんだけど」
「夢人さんって僕のこと?」
「だって名前知らないんだもの」
「だからって夢人さんはないだろ。僕の名前はアーレンだよ。従魔士がおとぎ話とは。それもまた驚きだけど」

アーレンが従魔士は魔獣と心を通わせ力を借りる事が出来る職業。僕の時代は戦争も多い。魔獣を戦力として使えるよう鍛えるのさ。僕はあまり好きではないけどね…。

「そうなんだ。でも今の時代は平和よ!戦争なんて聞いた事がないもの」
「戦争がない時代が来るのか…。そういえばさっき言ってたレインってのは?」
「あっ!そうそう。なんか自分で自分の事ドラゴンとか言ってるんだけど、ただの食いしん坊よ。でも、農民の仕事と掃除はプロ級よ!」

ドラゴンが農民の仕事と掃除?その言葉にアーレンは不思議な顔をしていた。そのドラゴンの特徴を教えてもらえる?と言われ、見た目や出来る事。そして会話ができることなどを伝えた。

「虹色の鱗だって?」
「えぇ。光に当たると黒い鱗がキラキラと光って虹色に見えるとても綺麗な鱗よ」
「それが本当なら…ブライトゥドラゴン…なのか」
「なにその、ブライなんとかって」
「とても珍しく強く、そして気高いドラゴンだよ。そのドラゴンが現れた時世界が変動する時だと言われている。僕は今探してる最中なんだ。見つかって欲しいような欲しくないような気分ではあるけどね」

レインが気高い?食べる事しか考えてなさそうなレインが?しかも世界の変動をするとかないない。笑いながらきっと違うドラゴンねと答えた。

「でも良いかい?魔獣は君の気持ちとシンクロするんだ。君が怒りや悲しみのままに魔獣に命令すると、とんでもない事だって起きかねない。魔獣を信頼し自分を強く持つ。これが従魔士の1番大切な事だからね」
「心の隅にでも置いておくわ。だって私はずっと農民だもの」

さ、そろそろ戻った方が良い。また会おうとアーレンに言われ眩しい光に包まれた。

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