東大卒でコミュ症持ちの僕が魔王の息子として転生した結果〜魔王の力を受け継いでいる僕ですが人間界で勇者のパーティメンバーとして楽しく暮らしていこうと思います〜

皇城咲依

1.転生!!

「あぁ…。今回もだめだったな…。」

僕、不破ふわ裕伊ゆい、36歳。未だに絶賛就活中。
母校である東大を卒業してからと言うものの、中々就職先が決まらない。

何故なら、僕は所謂「コミュニケーション障害」というものなのだ。

人と話すことがままならないため、幾度と面接を重ねても、東大卒なのに職業が決まらないのだ。

「いっそ、起業でもしようかな…。」

僕は諦め気味につぶやく。
その途端、すれ違った奇抜な格好の男の人に話しかけられた。

「お、そこのお兄さん、起業したいのかい?ならうちの…」

なんか怪しいセールスマンだな。
だったらここは…。

「……って、うちの姉が言っていたな…。」

と僕は付け足す。
すると男は眉をよせ、明らかに不機嫌になった。
そして僕は何気なく通り過ぎる。 
 
怪しいセールスマンの舌打ちが聞こえる。

はぁ…また嘘ついてしまった…。
本当は姉なんていないのだ。
僕は金持ちの間に生まれた一人っ子だ。
一人っ子なんて嫌なことだらけだった。

そんな一人っ子の僕は親にたくさんの習い事や塾を無理強いされ、ここまで来た。

ヴァイオリンでは全国大会3位。書道では5段。ピアノは世界大会まで行き、9位入賞。弓道は6段を持っている。英語検定は余裕で1級、漢字検定は準1級、数学検定1級、パソコン検定2級などなどの称号をもっている。

勉強面では学校ではいつも一番。僕と2位はいつも、50点以上の差があった。
模試では必ず全国の中で10位に入り、1位をとったときもあった。

だから、友達なんてものは居なく、部活も入れず、人と話さなかったため、コミュニケーション障害に陥ってしまったのだ。

結局、努力の意味がなかったのだ。
なんて悲しい人生。
はっきり言って、「つまらない」。

喋ることができず、いつも人の面に向かって話すとなると言葉が出てこなくなり、喉に詰まる。頭が真っ白になり、何を言おうもしたのかを忘れる。

「確かにこんなやつ、要らないよな。」

僕はふっ、と鼻で笑う。

そんなときだった。
後ろから甲高い悲鳴が聞こえてきた。
僕はゆっくりと振り向く。

そこにはブレーキが効かなくなったのか、必死の形相でバイクを落ち着かせようとしているヘルメットを被った運転手が僕の方へ突っ込んでくるのが見えた。

「え…?」

怖くない…。
もうすぐ死ぬのに、全然、全く怖くない。

運転手は僕とぶつかる寸前、ぎゅっと目を瞑った。


僕が覚えているのはここまでだ。

そこからはぶっつりと太い糸が切れたように意識がない。


どんどん体が持ち上がってくる感覚がする。
気持ち悪い。吐きそう。

あぁ、これが死ぬってことか。

血が無くなったのかな、寒いな…。

…………待って。僕本当に死んだ?
考えることができるのなら、生きてるよね?
意識を持つ死人なんて幽霊でしか見たことないし。
幽霊なんて嫌だ。
それに、どう見ても僕、透けてないし。

…良かった…。

なんか、ベッドに寝転がっているようだ。

声…。声は…。

「あー、あー。」

うん。出る。
出るが、声が高すぎる。
しかも、声が出しにくい。

あれだ、しばらく喋っていなかったら声が出にくくなっていた、というようなアレだ。

僕は人一倍そのような経験をしているのでよく分かる。

「う…あー…。」

僕が声を出していると、そこにある女性が来た。

「あら!ヴァンティ!起きたの!」

と言い、僕に駆け寄る。

うっわ……もっのすごい美人…。

「ほーらほーら。ヴァンティ…。お母様ですよ〜。」

え?!こんな美人が僕の母さん?!なんかうれしい…。
って、この人が母親ってことは、僕やっぱり赤ん坊になったんだ…。

呆然としている僕の元にある男性も来た。

「おお、ヴァンティエール!起きたのか!」
「あら、あなた。」

夫婦らしい二人は仲睦まじく見つめ合う。

ヒューヒュー。お熱いですねぇー(棒読み)。

ちっ。僕もこういう関係の人なんて居なかったからな…。
なんか悔しい。

「ほーら。私はお前の父だぞー。魔王をやってるぞー。」

そんなことを言う父親。

って魔王?
魔王ってあの魔王?
悪役のあの魔王?

「あなた。この子に魔王なんて分からないわよ。」

母親は僕を抱きかかえながら笑いながら言う。

「はっはっ!確かにそうだった!」

ごめんなさい。分かってます。
というかあなた方の言葉も理解してます。

そう笑う魔王は「悪役」というよりも「父親」と言ったほうが合ってるように見える。

魔王…。確かに父親の頭には角がついてる。
僕にはないのかな?

頭を触ってみる。
無い。
母親は角がついていないからその遺伝子を受け継いだのだろうか。

「にしてもヴァンティエールは『魔族』よりも『人間』に似てるな。」
「そりゃそうよ。私は女神ですもの。その血も受け継いでいるって証拠よ。」

母親よ、あなた、今なにやら凄いことをおっしゃいましたけどー?

「はは!政略結婚といえど、こっそり付き合っていた我らが結婚できたのはまさに運命としか言えないな。」
「まぁ。あなたったら、口がお上手なんだから。うふ♡」

あー、もうやだ。見たくない。
ラブラブは二人でしておいてください。
僕はもう寝ます。

転生した僕は半眼になり、目を閉じた。

転生なんて物語の中でしかないと思っていたけど。
結構楽しそうかも。

僕は『魔王』と『女神』という異色のカップルの間に生まれた、「魔人」といて生まれ変わったのであった。

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