Fランク冒険者なのに、最強すぎませんか❓ 世界最強の魔王は、自分をFランク冒険者だと思い込んでいる⁉️
4-3.森
エルフの森の入口までは、貸し馬屋の馬車でむかった。イズェイルン丘陵の街道を南東にすすんだ。森の手前でおろしてもらうことにした。そこからは、アリルが魔針盤に視線を落としていた。
「針が指し示すには、どうやらこっちのほうらしいわね」
と、アリルが森のなかへと歩みをすすめた。
森のなかと言っても、ちゃんと道は敷かれてある。左右から伸びている木々が、風に揺られている。その姿が、手招きしているようにも見える。森のなかに誘い込み、人を迷わせようとしているのかもしれない。
「たしか昔は魔界と現実って同じ世界に存在したんだよな」
と、オレは誰に話しかけるわけでもなく、そう疑問を口にした。
「ええ。そう言われてるわね」
と、アリルがオレの言葉をひろった。
「なんで、世界が分かたれることになったんだろ?」
「そのへんのことは、ノウノが詳しいんじゃない?」
「ノウノが?」
「うん。昔のことが書かれた書籍とかはマホ教が多く有してるし、マホ教は魔法を神様からの授かり物としてるんだから、神話の時代にもくわしいでしょ」
オレはノウノに目を向けた。
ノウノはフードの奥から、白銀色の目をオレに向けてきた。
「私も幼いころに、マホ教を追い出されてるからそこまでは詳しくない。だけど、乳母からすこし教えてもらった。かつて神話の時代に、ドヴォルハイドという魔界の王がいた。いわゆる魔王」
「魔王ドヴォルハイド……」
と、その名をオレはくりかえした。
その人物名にやたらとなつかしい思いを抱いた。それと同時に、妙に悲しい気持ちにさせられた。
その名前を、オレは知っている気がする。
しかし、思い当る節はなかったので、思いすごしかもしれない。
「その王が魔族を率いて、人間たちに戦争を仕掛けた。人間はかつて魔王に滅ぼされかけた。それを見かねた神々が、魔王を封印するために、世界を二分した」
「でも、人間を守るために区分したのなら、完全に分ければ良かったのにな。ときおりトビラが開くのは、何か理由があるのかな」
「わからない。魔法か何かで、魔族がつなげようとしているのかもしれない。人間にはつなげる理由がないと思う」
「まぁ、そうだよな」
人間側が、わざわざモンスターを誘い込む理由。皆無――ということはない。いちおうモンスターの肉は食糧になる。皮は革になる。爪や甲殻も加工される。商業活動におおきな影響をあたえている。しかしだからと言って、わざわざモンスターを呼びこむことはない、と思う。
「最近、そのトビラが開くのがヒンパンになっている。もしかしたら、また世界はひとつに戻ろうとしているのかもしれない。ノウノの予測」
「そりゃカンベンしてもらいたいな。トビラからあふれ出てくるモンスターの処理で手イッパイなのに、そこいらにモンスターがいるなんて状況になったら、手に負えなくなる」
想像してみただけで、戦慄をおぼえる。
都市は城壁で守られているから良い。自衛能力を持たない村などは、すぐさまモンスターの餌食になることだろう。各地に冒険者支部があるとは言っても、さすがに手が回りきらない。
「このあたりよ」
と、アリルが脚をとめた。
気づけば敷かれた道をはずれて、森の深くまで入り込んでいた。大樹と言って差しつかえない巨体な木々が、真っ直ぐ天にむかって伸びていた。そんな木々の上に、木造家屋が建てられている。
「あれが、エルフの家じゃ。ここはエルフ王の住まう王都じゃ」
と、ピピが教えてくれた。
「へぇ。エルフは木々の上に住んでるのか。はじめて見た」
木と木のあいだには、桟橋がかけられているようだ。それによって、このあたりいったいが複雑怪奇な、ひとつの建造物のように見えた。やわらかい草のしげった足元。冒険者の職業病なのか、オレは回復草などの冒険者組合に売り渡せそうな草花を目でさがしていた。
冒険者は、土地の所有者の許可なく、採取採掘の権利をもっている。とはいえ、その協定をエルフと冒険者がむすんでいるのかはわからない。勝手に採るのはやめておこうと思った。
『セッカク我らが協力しようと言っているのだ!』
『要らぬ世話だ! 我らの土地は我らで守る!』
といった怒鳴り合う声が聞こえてきた。
「針が指し示すには、どうやらこっちのほうらしいわね」
と、アリルが森のなかへと歩みをすすめた。
森のなかと言っても、ちゃんと道は敷かれてある。左右から伸びている木々が、風に揺られている。その姿が、手招きしているようにも見える。森のなかに誘い込み、人を迷わせようとしているのかもしれない。
「たしか昔は魔界と現実って同じ世界に存在したんだよな」
と、オレは誰に話しかけるわけでもなく、そう疑問を口にした。
「ええ。そう言われてるわね」
と、アリルがオレの言葉をひろった。
「なんで、世界が分かたれることになったんだろ?」
「そのへんのことは、ノウノが詳しいんじゃない?」
「ノウノが?」
「うん。昔のことが書かれた書籍とかはマホ教が多く有してるし、マホ教は魔法を神様からの授かり物としてるんだから、神話の時代にもくわしいでしょ」
オレはノウノに目を向けた。
ノウノはフードの奥から、白銀色の目をオレに向けてきた。
「私も幼いころに、マホ教を追い出されてるからそこまでは詳しくない。だけど、乳母からすこし教えてもらった。かつて神話の時代に、ドヴォルハイドという魔界の王がいた。いわゆる魔王」
「魔王ドヴォルハイド……」
と、その名をオレはくりかえした。
その人物名にやたらとなつかしい思いを抱いた。それと同時に、妙に悲しい気持ちにさせられた。
その名前を、オレは知っている気がする。
しかし、思い当る節はなかったので、思いすごしかもしれない。
「その王が魔族を率いて、人間たちに戦争を仕掛けた。人間はかつて魔王に滅ぼされかけた。それを見かねた神々が、魔王を封印するために、世界を二分した」
「でも、人間を守るために区分したのなら、完全に分ければ良かったのにな。ときおりトビラが開くのは、何か理由があるのかな」
「わからない。魔法か何かで、魔族がつなげようとしているのかもしれない。人間にはつなげる理由がないと思う」
「まぁ、そうだよな」
人間側が、わざわざモンスターを誘い込む理由。皆無――ということはない。いちおうモンスターの肉は食糧になる。皮は革になる。爪や甲殻も加工される。商業活動におおきな影響をあたえている。しかしだからと言って、わざわざモンスターを呼びこむことはない、と思う。
「最近、そのトビラが開くのがヒンパンになっている。もしかしたら、また世界はひとつに戻ろうとしているのかもしれない。ノウノの予測」
「そりゃカンベンしてもらいたいな。トビラからあふれ出てくるモンスターの処理で手イッパイなのに、そこいらにモンスターがいるなんて状況になったら、手に負えなくなる」
想像してみただけで、戦慄をおぼえる。
都市は城壁で守られているから良い。自衛能力を持たない村などは、すぐさまモンスターの餌食になることだろう。各地に冒険者支部があるとは言っても、さすがに手が回りきらない。
「このあたりよ」
と、アリルが脚をとめた。
気づけば敷かれた道をはずれて、森の深くまで入り込んでいた。大樹と言って差しつかえない巨体な木々が、真っ直ぐ天にむかって伸びていた。そんな木々の上に、木造家屋が建てられている。
「あれが、エルフの家じゃ。ここはエルフ王の住まう王都じゃ」
と、ピピが教えてくれた。
「へぇ。エルフは木々の上に住んでるのか。はじめて見た」
木と木のあいだには、桟橋がかけられているようだ。それによって、このあたりいったいが複雑怪奇な、ひとつの建造物のように見えた。やわらかい草のしげった足元。冒険者の職業病なのか、オレは回復草などの冒険者組合に売り渡せそうな草花を目でさがしていた。
冒険者は、土地の所有者の許可なく、採取採掘の権利をもっている。とはいえ、その協定をエルフと冒険者がむすんでいるのかはわからない。勝手に採るのはやめておこうと思った。
『セッカク我らが協力しようと言っているのだ!』
『要らぬ世話だ! 我らの土地は我らで守る!』
といった怒鳴り合う声が聞こえてきた。
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