Fランク冒険者なのに、最強すぎませんか❓ 世界最強の魔王は、自分をFランク冒険者だと思い込んでいる⁉️
3-6勇者の娘。教皇の娘。エルフ王の娘
ピピはエルフの森出身であり、ノウノはマホ教出身であり、アリルは冒険者として放浪しているそうだ。3人とも出身はバラバラだ。この都市イズェイルンには、一時的に滞在しているに過ぎないらしい。
「とりあえず腰を落ちつけるクランハウスを買うのが、目下の目的ね。クランハウスがあれば、宿に泊まらなくても寝泊りできるし」
宿。1階。
『新狩祭』の優勝祝いと、オレのパーティ加入祝いということで、テーブルには食事がならべられていた。巨木を輪切りにしたような巨大なテーブルの上に、いろんな料理が運ばれてくる。
オレたちを『新狩祭』の優勝者だと知っている者も少なくなかった。そういった者たちが、奢りで食事を追加したりする。
こんなに食べきれるだろうか……とオレは心配になったのだが、マッタクの杞憂であった。
アリルとノウノとピピの3人が、とんでもなく食べるのだ。
アリルはひたすら鳥のカラアゲやら、骨付きの鶏モモ肉にかぶりついている。
ノウノは目の前に並べられていくものを片っ端から平らげてゆく。アリルは野菜が嫌いなようで、タマネギやらピーマンやらを、ノウノの皿に移しているのだが、ノウノはそれも構わず全部たいらげてゆく。
ピピはバターアイスやら、ショートケーキといった甘いものばかり口にしていた。3人の好き嫌いがひと目でわかる。
肉なら何でも良いようで、アリルはゴブリンの干し肉にも手を伸ばしていた。ゴブリンの干し肉は腐りにくいために、冒険者の非常食として活躍する。とはいえ、臭みが強くて、美味しいとはレイは思えない。
「す、すごい食欲だな」
「レイも食べないと元気が出ないわよ。活躍したのはレイなんだから、もっとチャント食べないと」
「アリルのほうこそ野菜も食べないと」
「厭よ。美味しくないんだから」
と、言下に否定した。
オレも常人ぐらいには、食べたと思う。っていうか、見ているだけでも、お腹がイッパイになってくる。
ノウノはたしか今日の昼間も、パンをたらふく食べていたはずだ。
「今までFランク冒険者で、よくやって来られたな。食費がかさむんじゃないか?」
「大変だったわよ。ノウノとピピなんか食べてばっかりで、ぜんぜん働かないんだもの」
ワッチもガンバっておったわ――と、ピピがワンホールケーキにスプーンを突き入れてそう言った。
3人とも今は華奢と言えるぐらいの体型だが、将来が心配だ。セッカク3人とも風貌はととのっているんだから、太ったらモッタイナイような気もする。
でも、アリルはむしろ痩せてたなぁ……と今朝見た全裸を思い出した。不埒なことを思い出してしまい、あわてて頭から追い払った。
「で、なんだったけ? クランハウスを買うつもりなのか?」
「そうよ。『黄金のたまご』は、これからもっと大きなパーティにして行く。10人以上の組織になったら、クランとして認めてもらえるようになるわ。そして世界一の組織にして、いつかはお父さんのクランを追い越してやるんだから」
と、アリルは肉を食いちぎった。
アリルは父に認めてもらうために冒険者をやっている。そしてノウノは教皇を殺すために魔術師として修業中だ。
なら――。
「ピピはどうして冒険者になったんだ? 差支えなければ、教えて欲しいんだけど」
気にはなっていたのだが、質問する機会がなかった。今なら尋ねても良さそうな雰囲気があった。
「金」
と、ピピは親指と人さし指で輪っかをつくって見せた。
「え?」
「金が欲しい。ンで、隠居したい。楽して生きたい。それだけじゃな」
「へ、へー。それだったら別に冒険者じゃなくても良いんじゃないのか? 商人とか」
勇者に認めてもらいたい。
教皇を殺したい。
そんなふたつに比べると、なんというか――ずいぶんと俗っぽい望みである。
「50年ぐらいゴロゴロして過ごしていたら、父のエルフ王に追い出されてしもうた。行く当てがなかったところを、偶然にもアリルにひろわれたから。まぁ、拾われたから、冒険者をやっておる」
「え? なに? 50年? エルフ王?」
いろいろと気になる単語が出てきた。
「エルフは長寿じゃからな。100歳まではまだ子供じゃ。ちなみにワッチは80歳じゃ」
唖然。
たしかにエルフは長寿だという話は聞いたことがあるが、まさかピピがもう80歳だとは思わなかった。15歳前後だろうと考えていた。その幼い目元に爛熟した色気がやどるときがあり、納得できないわけでもなかった。
「エルフ王っていうのは?」
「エルフを統括している王じゃ。ワッチはその娘じゃな」
「えぇ……ッ」
勇者の娘。
教皇の娘。
エルフ王の娘。
こうして一同がそろう前に紆余曲折はあったようだが、とんでもないメンツである。なんだか自分だけ、場違いな人間であるような気がしてきた。国家間の話し合いの席に、無知なる少年がポンと放り込まれたかのようだ。
指先にクリームがついていることに気づいたようで、ピピは指をしゃぶっていた。その所作はとてもじゃないが、エルフ王の娘のものとは思えなくて、ふっと緊張が吹き飛んだ。あるいはレイの緊張をときほぐすために、ピピはそんな無邪気な所作をとったのかもしれない。
「ワッチの夢はスローライフじゃ」
と、ピピは話をむすんだ。
3人はふたたび食事に没頭していた。話しかける隙もない。その3人の食べっぷりにレイは見惚れていた。
「とりあえず腰を落ちつけるクランハウスを買うのが、目下の目的ね。クランハウスがあれば、宿に泊まらなくても寝泊りできるし」
宿。1階。
『新狩祭』の優勝祝いと、オレのパーティ加入祝いということで、テーブルには食事がならべられていた。巨木を輪切りにしたような巨大なテーブルの上に、いろんな料理が運ばれてくる。
オレたちを『新狩祭』の優勝者だと知っている者も少なくなかった。そういった者たちが、奢りで食事を追加したりする。
こんなに食べきれるだろうか……とオレは心配になったのだが、マッタクの杞憂であった。
アリルとノウノとピピの3人が、とんでもなく食べるのだ。
アリルはひたすら鳥のカラアゲやら、骨付きの鶏モモ肉にかぶりついている。
ノウノは目の前に並べられていくものを片っ端から平らげてゆく。アリルは野菜が嫌いなようで、タマネギやらピーマンやらを、ノウノの皿に移しているのだが、ノウノはそれも構わず全部たいらげてゆく。
ピピはバターアイスやら、ショートケーキといった甘いものばかり口にしていた。3人の好き嫌いがひと目でわかる。
肉なら何でも良いようで、アリルはゴブリンの干し肉にも手を伸ばしていた。ゴブリンの干し肉は腐りにくいために、冒険者の非常食として活躍する。とはいえ、臭みが強くて、美味しいとはレイは思えない。
「す、すごい食欲だな」
「レイも食べないと元気が出ないわよ。活躍したのはレイなんだから、もっとチャント食べないと」
「アリルのほうこそ野菜も食べないと」
「厭よ。美味しくないんだから」
と、言下に否定した。
オレも常人ぐらいには、食べたと思う。っていうか、見ているだけでも、お腹がイッパイになってくる。
ノウノはたしか今日の昼間も、パンをたらふく食べていたはずだ。
「今までFランク冒険者で、よくやって来られたな。食費がかさむんじゃないか?」
「大変だったわよ。ノウノとピピなんか食べてばっかりで、ぜんぜん働かないんだもの」
ワッチもガンバっておったわ――と、ピピがワンホールケーキにスプーンを突き入れてそう言った。
3人とも今は華奢と言えるぐらいの体型だが、将来が心配だ。セッカク3人とも風貌はととのっているんだから、太ったらモッタイナイような気もする。
でも、アリルはむしろ痩せてたなぁ……と今朝見た全裸を思い出した。不埒なことを思い出してしまい、あわてて頭から追い払った。
「で、なんだったけ? クランハウスを買うつもりなのか?」
「そうよ。『黄金のたまご』は、これからもっと大きなパーティにして行く。10人以上の組織になったら、クランとして認めてもらえるようになるわ。そして世界一の組織にして、いつかはお父さんのクランを追い越してやるんだから」
と、アリルは肉を食いちぎった。
アリルは父に認めてもらうために冒険者をやっている。そしてノウノは教皇を殺すために魔術師として修業中だ。
なら――。
「ピピはどうして冒険者になったんだ? 差支えなければ、教えて欲しいんだけど」
気にはなっていたのだが、質問する機会がなかった。今なら尋ねても良さそうな雰囲気があった。
「金」
と、ピピは親指と人さし指で輪っかをつくって見せた。
「え?」
「金が欲しい。ンで、隠居したい。楽して生きたい。それだけじゃな」
「へ、へー。それだったら別に冒険者じゃなくても良いんじゃないのか? 商人とか」
勇者に認めてもらいたい。
教皇を殺したい。
そんなふたつに比べると、なんというか――ずいぶんと俗っぽい望みである。
「50年ぐらいゴロゴロして過ごしていたら、父のエルフ王に追い出されてしもうた。行く当てがなかったところを、偶然にもアリルにひろわれたから。まぁ、拾われたから、冒険者をやっておる」
「え? なに? 50年? エルフ王?」
いろいろと気になる単語が出てきた。
「エルフは長寿じゃからな。100歳まではまだ子供じゃ。ちなみにワッチは80歳じゃ」
唖然。
たしかにエルフは長寿だという話は聞いたことがあるが、まさかピピがもう80歳だとは思わなかった。15歳前後だろうと考えていた。その幼い目元に爛熟した色気がやどるときがあり、納得できないわけでもなかった。
「エルフ王っていうのは?」
「エルフを統括している王じゃ。ワッチはその娘じゃな」
「えぇ……ッ」
勇者の娘。
教皇の娘。
エルフ王の娘。
こうして一同がそろう前に紆余曲折はあったようだが、とんでもないメンツである。なんだか自分だけ、場違いな人間であるような気がしてきた。国家間の話し合いの席に、無知なる少年がポンと放り込まれたかのようだ。
指先にクリームがついていることに気づいたようで、ピピは指をしゃぶっていた。その所作はとてもじゃないが、エルフ王の娘のものとは思えなくて、ふっと緊張が吹き飛んだ。あるいはレイの緊張をときほぐすために、ピピはそんな無邪気な所作をとったのかもしれない。
「ワッチの夢はスローライフじゃ」
と、ピピは話をむすんだ。
3人はふたたび食事に没頭していた。話しかける隙もない。その3人の食べっぷりにレイは見惚れていた。
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