Fランク冒険者なのに、最強すぎませんか❓ 世界最強の魔王は、自分をFランク冒険者だと思い込んでいる⁉️
3.ミノタウロス
さすが回復草といったところか。ものの数分でアリルの傷は完治したようだ。
「魔界のトビラが開く場所には、たいてい優れた冒険者たちが駆けつけるもんじゃないのか?」
と、オレは不平を言うようにつぶやいた。
「たいていはそうだけど、ここは森のなかだし、今日は『新狩祭』があるでしょ。だから、こっちには冒険者が来てないんだと思うわ」
「そう言えば、そんな行事があったな」
ソロで冒険者をやっている身では関係ないが、パーティを組んでいる冒険者にとっては大切な日だ。Dランク以下の――いわゆる下級冒険者たちが、モンスターをどれだけ倒せるかを競うのだ。大会で優勝すればいっきに名前を売ることが出来る。賞金も出るとか聞いている。
「私も出たかったわ。実力テスト」
と、アリルはため息まじりに悄然として言った。
「パーティがいるのか?」
「いちおう私もふくめて3人ね。だけど1人足りないのよ。だからどっちみち出られなかったんだけど」
それは暗にオレに入ってくれ――と言ってるんだろうかと思った。が、率直に誘われないということは、期待されていないということかもしれない。そりゃゴブリン相手に苦戦するような冒険者が、誘われるわけがないか……と苦笑した。
「そのお仲間は、こっちには来てないのか?」
「私ひとりだけよ。他2人はまだ宿で寝てるわ。そっちこそ仲間はいないの?」
「オレひとりだけだ。パーティなんか組んだこともないよ」
誘われたこともないし、オレについて来てくれる冒険者がいるとも思えない。
「それは残念ね」
「助けは期待できないってことだ」
「生きて戻れたら奇跡ね」
周囲――。
森が、様子をうかがうかのように静まっていた。
もはや何匹いるかわからないゴブリンたちに包囲されていた。ゴブリンの何倍も大きなオークたちもいる。木々の香りは吹き飛ばされて、モンスターたちの魚が饐えたような臭いが充満していた。熱気が吹きつけてくる。オレのカラダを濡らしているのは、さきほどの湖の水なのか、それとも己の汗なのか、もはやわからなかった。
都市までは、まだ距離がある。
逃げるのはむずかしい。
モンスターの群れをかきわけて、ひとき図体の大きさモンスターが出てきた。牛の顔をしたモンスターだった。真っ赤な皮膚をしており、筋骨隆々の肉体はまるで岩石のようだ。ふいごのような鼻息を吹き放っていた。鉄のカタマリすら両断してしまいそうな、ハルバードを両手に装備していた。
ミノタウロスがそのハルバードを振るう。周囲に生えていた樹木の2本が倒れた。ドスンという倒木の音が腹にひびいた。砂煙をあげている。まるでその2本の倒木が、オレたちの未来を暗示しているかのようで、不吉に見えた。
「S級相当のモンスター。ミノタウロスね」
と、アリルが絶望するような口調で言った。
「あんなところに魔界のトビラが開かれたのが、オレたちの運の尽きってわけだな」
「だからと言って、死を受け入れるつもりはないわ。私にはまだ死ねない理由があるのよ」
と、アリルは剣を構えた。
「オレは――」
オレだって、Sランク冒険者になるという夢があるのだ。冒険者を夢見て、田舎から跳びだしてきた。いつかSランクになってやる――と。
一瞬。
その気持ちに疑念の気持ちが湧いた。
ホントウにそうか? それはオレ自身の夢だっただろうか? しかしその疑念はミノタウロスの突進にように打ち消された。
「ぶおぉぉ――ッ」
と、ミノタウロスが咆哮とともに猛進してくる。その1歩1歩が地を揺るがすかのようだった。
守る。
せめてアリルだけは守らなくては――。
オレはその猛進を、マトモに受けた。
意識が――とんだ。
「魔界のトビラが開く場所には、たいてい優れた冒険者たちが駆けつけるもんじゃないのか?」
と、オレは不平を言うようにつぶやいた。
「たいていはそうだけど、ここは森のなかだし、今日は『新狩祭』があるでしょ。だから、こっちには冒険者が来てないんだと思うわ」
「そう言えば、そんな行事があったな」
ソロで冒険者をやっている身では関係ないが、パーティを組んでいる冒険者にとっては大切な日だ。Dランク以下の――いわゆる下級冒険者たちが、モンスターをどれだけ倒せるかを競うのだ。大会で優勝すればいっきに名前を売ることが出来る。賞金も出るとか聞いている。
「私も出たかったわ。実力テスト」
と、アリルはため息まじりに悄然として言った。
「パーティがいるのか?」
「いちおう私もふくめて3人ね。だけど1人足りないのよ。だからどっちみち出られなかったんだけど」
それは暗にオレに入ってくれ――と言ってるんだろうかと思った。が、率直に誘われないということは、期待されていないということかもしれない。そりゃゴブリン相手に苦戦するような冒険者が、誘われるわけがないか……と苦笑した。
「そのお仲間は、こっちには来てないのか?」
「私ひとりだけよ。他2人はまだ宿で寝てるわ。そっちこそ仲間はいないの?」
「オレひとりだけだ。パーティなんか組んだこともないよ」
誘われたこともないし、オレについて来てくれる冒険者がいるとも思えない。
「それは残念ね」
「助けは期待できないってことだ」
「生きて戻れたら奇跡ね」
周囲――。
森が、様子をうかがうかのように静まっていた。
もはや何匹いるかわからないゴブリンたちに包囲されていた。ゴブリンの何倍も大きなオークたちもいる。木々の香りは吹き飛ばされて、モンスターたちの魚が饐えたような臭いが充満していた。熱気が吹きつけてくる。オレのカラダを濡らしているのは、さきほどの湖の水なのか、それとも己の汗なのか、もはやわからなかった。
都市までは、まだ距離がある。
逃げるのはむずかしい。
モンスターの群れをかきわけて、ひとき図体の大きさモンスターが出てきた。牛の顔をしたモンスターだった。真っ赤な皮膚をしており、筋骨隆々の肉体はまるで岩石のようだ。ふいごのような鼻息を吹き放っていた。鉄のカタマリすら両断してしまいそうな、ハルバードを両手に装備していた。
ミノタウロスがそのハルバードを振るう。周囲に生えていた樹木の2本が倒れた。ドスンという倒木の音が腹にひびいた。砂煙をあげている。まるでその2本の倒木が、オレたちの未来を暗示しているかのようで、不吉に見えた。
「S級相当のモンスター。ミノタウロスね」
と、アリルが絶望するような口調で言った。
「あんなところに魔界のトビラが開かれたのが、オレたちの運の尽きってわけだな」
「だからと言って、死を受け入れるつもりはないわ。私にはまだ死ねない理由があるのよ」
と、アリルは剣を構えた。
「オレは――」
オレだって、Sランク冒険者になるという夢があるのだ。冒険者を夢見て、田舎から跳びだしてきた。いつかSランクになってやる――と。
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その気持ちに疑念の気持ちが湧いた。
ホントウにそうか? それはオレ自身の夢だっただろうか? しかしその疑念はミノタウロスの突進にように打ち消された。
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と、ミノタウロスが咆哮とともに猛進してくる。その1歩1歩が地を揺るがすかのようだった。
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