傷痕~想い出に変わるまで~
束縛 5
その日以来、光が私の体を乱暴に扱うことはなくなり、何もかもが今まで以上に優しくなった。
そして昔のように毎日会うようにもなった。
仕事を終えて自宅に戻ると、何時だろうがマンションの前で光が待っている。
一人だと適当に済ませる夕飯も、二人分の支度と後片付けをしなくてはならない。
夕飯と入浴を済ませた後で持ち帰った仕事を片付けたくても、光は私を抱いて満足するまで離してくれない。
仕方なく光が眠った後に持ち帰った仕事をして、朝方ようやく仮眠のような形で眠る日が増えた。
そして時には朝も求められる。
眠ってまだあまり時間の経たないうちに何度もキスされて体を弄られ、もう少し眠りたいのに無理やり突き上げられて起こされる。
ほとんど毎日まとまった睡眠時間が取れず、ひどい時は一睡もできないまま出勤する日もある。
仕事中は眠るわけにはいかないからなんとか気力で持ちこたえ、昼休みは食事をゼリードリンクなどで数秒で済ませて仮眠を取るか、少しでも持ち帰らなくて済むように仕事を片付ける。
休みの日くらいはゆっくり眠りたいのに、光が隣にいるとそれもままならない。
そんな日が半月ほども続いてすっかり憔悴しきっている私を、部下たちは心配そうに見ている。
本当の理由なんて絶対に言えないから、夜あまりよく眠れなくて睡眠不足だと言葉を濁す。
不眠症か何かと勘違いされているかも知れない。
本当は眠くて眠くて堪らないのに。
時々門倉の視線を感じることがあるけれど、あれから私は用がある時以外は、できるだけ門倉の方を見ないようにしている。
少しでも仕事に関係ない会話をすると、光とのことを聞かれそうでイヤだから。
門倉に心配かけたくないし、私たちのことに巻き込みたくない。
光が毎日私のところに来るのは、私と門倉を会わせたくないからなんだろう。
家の前だけでなく、時々会社の前で待っていることもある。
会うのを断ると、また光が不安と嫉妬に駆り立てられそうで怖い。
疑われてあんなに乱暴にされるのもつらいけれど、もしも万が一やけを起こしたらと思うと、できるだけ光を刺激しないようにしなくてはと思う。
まるで腫れ物に触るみたいな感じ。
光が私を愛してくれているのは息苦しいほどに実感しているけれど、このままでは私の身がもたない。
寝不足のせいで精神的にもかなり不安定だ。
仕事に支障をきたさないように気を付けてはいるけれど、時々目を開けたまま意識が飛びそうになることもある。
お願いだから私をゆっくり眠らせて。
ちゃんと仕事をさせて。
そうすればあとは何をしても構わないから。
今日もまた一睡もできないまま出勤した。
前の日も2時間足らずしか寝ていない。
ぼんやりした頭をなんとか叩き起こそうと、駅の売店でドリンク剤を買って一息に飲んだ。
あまり多用してはいけないとわかっているけれど、こんなものでも飲まないと体がもたないから、一日に数本飲む日もある。
パソコンの画面に羅列された文字が意味をなさないものに見えてきた。
かなりの末期状態だ。
午後3時半過ぎ。
あまりにも眠いので、眠気覚ましにコーヒーでも飲もうと小銭入れを持って立ち上がった。
その途端にグニャリと視界がぼやけて、足元はスポンジか柔らかい何かの上を歩いているかのような、言い様のない不快感に襲われた。
次の瞬間、一瞬視界が真っ白になり、その直後真っ暗闇に突き落とされたような感覚に陥った。
私の体は重力に逆らえず、その場にドサリと崩れ落ちた。
「篠宮課長?!」
「大丈夫ですか、課長?!」
部下たちが駆け寄ってくるのがなんとなくわかった。
だけど私はもう目を開けることもできない。
「篠宮!!」
辺りが騒がしくなるのを感じながら、どんどん意識が遠のいて、そこで何もかもがプッツリと途切れた。
そして昔のように毎日会うようにもなった。
仕事を終えて自宅に戻ると、何時だろうがマンションの前で光が待っている。
一人だと適当に済ませる夕飯も、二人分の支度と後片付けをしなくてはならない。
夕飯と入浴を済ませた後で持ち帰った仕事を片付けたくても、光は私を抱いて満足するまで離してくれない。
仕方なく光が眠った後に持ち帰った仕事をして、朝方ようやく仮眠のような形で眠る日が増えた。
そして時には朝も求められる。
眠ってまだあまり時間の経たないうちに何度もキスされて体を弄られ、もう少し眠りたいのに無理やり突き上げられて起こされる。
ほとんど毎日まとまった睡眠時間が取れず、ひどい時は一睡もできないまま出勤する日もある。
仕事中は眠るわけにはいかないからなんとか気力で持ちこたえ、昼休みは食事をゼリードリンクなどで数秒で済ませて仮眠を取るか、少しでも持ち帰らなくて済むように仕事を片付ける。
休みの日くらいはゆっくり眠りたいのに、光が隣にいるとそれもままならない。
そんな日が半月ほども続いてすっかり憔悴しきっている私を、部下たちは心配そうに見ている。
本当の理由なんて絶対に言えないから、夜あまりよく眠れなくて睡眠不足だと言葉を濁す。
不眠症か何かと勘違いされているかも知れない。
本当は眠くて眠くて堪らないのに。
時々門倉の視線を感じることがあるけれど、あれから私は用がある時以外は、できるだけ門倉の方を見ないようにしている。
少しでも仕事に関係ない会話をすると、光とのことを聞かれそうでイヤだから。
門倉に心配かけたくないし、私たちのことに巻き込みたくない。
光が毎日私のところに来るのは、私と門倉を会わせたくないからなんだろう。
家の前だけでなく、時々会社の前で待っていることもある。
会うのを断ると、また光が不安と嫉妬に駆り立てられそうで怖い。
疑われてあんなに乱暴にされるのもつらいけれど、もしも万が一やけを起こしたらと思うと、できるだけ光を刺激しないようにしなくてはと思う。
まるで腫れ物に触るみたいな感じ。
光が私を愛してくれているのは息苦しいほどに実感しているけれど、このままでは私の身がもたない。
寝不足のせいで精神的にもかなり不安定だ。
仕事に支障をきたさないように気を付けてはいるけれど、時々目を開けたまま意識が飛びそうになることもある。
お願いだから私をゆっくり眠らせて。
ちゃんと仕事をさせて。
そうすればあとは何をしても構わないから。
今日もまた一睡もできないまま出勤した。
前の日も2時間足らずしか寝ていない。
ぼんやりした頭をなんとか叩き起こそうと、駅の売店でドリンク剤を買って一息に飲んだ。
あまり多用してはいけないとわかっているけれど、こんなものでも飲まないと体がもたないから、一日に数本飲む日もある。
パソコンの画面に羅列された文字が意味をなさないものに見えてきた。
かなりの末期状態だ。
午後3時半過ぎ。
あまりにも眠いので、眠気覚ましにコーヒーでも飲もうと小銭入れを持って立ち上がった。
その途端にグニャリと視界がぼやけて、足元はスポンジか柔らかい何かの上を歩いているかのような、言い様のない不快感に襲われた。
次の瞬間、一瞬視界が真っ白になり、その直後真っ暗闇に突き落とされたような感覚に陥った。
私の体は重力に逆らえず、その場にドサリと崩れ落ちた。
「篠宮課長?!」
「大丈夫ですか、課長?!」
部下たちが駆け寄ってくるのがなんとなくわかった。
だけど私はもう目を開けることもできない。
「篠宮!!」
辺りが騒がしくなるのを感じながら、どんどん意識が遠のいて、そこで何もかもがプッツリと途切れた。
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