傷痕~想い出に変わるまで~
依存 6
スーツをハンガーに掛けていると、体温計の測定終了のアラームが鳴った。
「何度?」
体温計を見せられて思わず目を見開いた。
「40.5℃?!えぇっ、何これ……!」
「俺も初めて見た……」
見て見ぬふりしてほったらかしにしないで良かった……!
とりあえず薬を飲ませなきゃ。
でも何か食べてからでないと……。
「薬飲む前にお粥とかゼリーくらいなら食べられる?あっ、それともやっぱり病院に行った方がいいかも……」
「もういい……。後は自分でやるから……」
門倉はさっきからしきりに私を帰らせようとする。
こんな時くらいは頼ってくれてもいいのに。
私が光を選んだから?
門倉とは付き合えないって言ったら、今までの信頼関係も何もかもなかったことになるの?
ずっと一緒に頑張ってきたのに、そんなの寂しい。
冷蔵庫からゼリーを取り出して来て、スプーンですくって門倉の口の前に突き出した。
「私なんかとはもう関わりたくないとか思ってるかも知れないけどさ……こんな時くらいは頼ってくれてもいいでしょ……?おまえなんか要らないって言われてるみたいで寂しいじゃない……」
「要らないって言ったのは……おまえだろ……」
門倉が目をそらして寂しそうに呟いた。
胸がギュッと鷲掴みされるように激しく痛んだ。
「要らないなんて言ってない……」
私の手からゼリーの容器とスプーンを取り、門倉は自分でゼリーを口に運んだ。
「何かあれば……おまえが来てくれるとか……思いたくねぇんだよ……」
「え……?」
門倉はゼリーをベッドサイドに置いて私の腕を掴み、いつもより頼りない力で私を引き寄せ抱きしめた。
熱に浮かされた門倉からは、速い鼓動と熱い体温が伝わってくる。
「そういうの……残酷なんだよ……。これ以上……期待させるようなことすんな……。おまえは俺より……あいつを選んだんだろ……」
「門倉……」
門倉の手が私の体からゆっくりと離れた。
「もう行け……」
「でも……」
「抑えきかなくなるから……俺が熱で何もできないうちに……行けっつってんの……」
門倉はまた容器を手にとって、スプーンでゼリーを口に運んだ。
本当はつらいはずなのに、どうして門倉はこんな時まで強くて優しいんだろう。
不意にあの日のことを思い出した。
光が他の女と情事に及んでいる声を聞きながら、高熱のつらさに耐えて自分で自分の世話をした。
目が覚めた時、私のそばには誰もいなくて、光に見捨てられたんだと思った。
あの時の悲しさとかみじめな気持ちが蘇る。
「ごめん、やっぱりほっとけないよ。私はほっとかれてつらかったし、そばにいて欲しかったからさ……。せめて門倉が薬飲んで眠るまでは見届けさせてよ、心配だから」
「……勝手にしろ」
ゼリーを食べ終えた門倉に薬と水を渡した。
門倉は素直に薬を飲んで横になった。
「すぐ手が届くところにスポーツドリンク置いとくからね」
「おー……」
ベッドサイドにペットボトル入りのスポーツドリンクを置いて離れようとすると、門倉は私の手を掴んだ。
「俺が眠るまで……いるんだろ?」
「ん?うん、いるよ」
門倉の手が熱い。
その熱が伝わって私の手まで熱くなる。
「だったら……こうさせとけ」
「それで安心して眠れそう?」
「興奮して……眠れなくなったら……責任とれよ」
「バカ……」
手を握られながらベッドのそばに座って、しばらく門倉の様子を見ていた。
門倉はつらそうに息をしながら目を閉じている。
ちゃんと眠れるかな。
早く薬が効くといいんだけど。
目を閉じた門倉の顔を見ていると、私までだんだんまぶたが重くなってきた。
ずっと寝不足で疲れが溜まっているから、気を抜くと眠ってしまいそうだ。
私まで眠ってどうする。
門倉が眠るまでなんとか持ちこたえなくちゃ。
「何度?」
体温計を見せられて思わず目を見開いた。
「40.5℃?!えぇっ、何これ……!」
「俺も初めて見た……」
見て見ぬふりしてほったらかしにしないで良かった……!
とりあえず薬を飲ませなきゃ。
でも何か食べてからでないと……。
「薬飲む前にお粥とかゼリーくらいなら食べられる?あっ、それともやっぱり病院に行った方がいいかも……」
「もういい……。後は自分でやるから……」
門倉はさっきからしきりに私を帰らせようとする。
こんな時くらいは頼ってくれてもいいのに。
私が光を選んだから?
門倉とは付き合えないって言ったら、今までの信頼関係も何もかもなかったことになるの?
ずっと一緒に頑張ってきたのに、そんなの寂しい。
冷蔵庫からゼリーを取り出して来て、スプーンですくって門倉の口の前に突き出した。
「私なんかとはもう関わりたくないとか思ってるかも知れないけどさ……こんな時くらいは頼ってくれてもいいでしょ……?おまえなんか要らないって言われてるみたいで寂しいじゃない……」
「要らないって言ったのは……おまえだろ……」
門倉が目をそらして寂しそうに呟いた。
胸がギュッと鷲掴みされるように激しく痛んだ。
「要らないなんて言ってない……」
私の手からゼリーの容器とスプーンを取り、門倉は自分でゼリーを口に運んだ。
「何かあれば……おまえが来てくれるとか……思いたくねぇんだよ……」
「え……?」
門倉はゼリーをベッドサイドに置いて私の腕を掴み、いつもより頼りない力で私を引き寄せ抱きしめた。
熱に浮かされた門倉からは、速い鼓動と熱い体温が伝わってくる。
「そういうの……残酷なんだよ……。これ以上……期待させるようなことすんな……。おまえは俺より……あいつを選んだんだろ……」
「門倉……」
門倉の手が私の体からゆっくりと離れた。
「もう行け……」
「でも……」
「抑えきかなくなるから……俺が熱で何もできないうちに……行けっつってんの……」
門倉はまた容器を手にとって、スプーンでゼリーを口に運んだ。
本当はつらいはずなのに、どうして門倉はこんな時まで強くて優しいんだろう。
不意にあの日のことを思い出した。
光が他の女と情事に及んでいる声を聞きながら、高熱のつらさに耐えて自分で自分の世話をした。
目が覚めた時、私のそばには誰もいなくて、光に見捨てられたんだと思った。
あの時の悲しさとかみじめな気持ちが蘇る。
「ごめん、やっぱりほっとけないよ。私はほっとかれてつらかったし、そばにいて欲しかったからさ……。せめて門倉が薬飲んで眠るまでは見届けさせてよ、心配だから」
「……勝手にしろ」
ゼリーを食べ終えた門倉に薬と水を渡した。
門倉は素直に薬を飲んで横になった。
「すぐ手が届くところにスポーツドリンク置いとくからね」
「おー……」
ベッドサイドにペットボトル入りのスポーツドリンクを置いて離れようとすると、門倉は私の手を掴んだ。
「俺が眠るまで……いるんだろ?」
「ん?うん、いるよ」
門倉の手が熱い。
その熱が伝わって私の手まで熱くなる。
「だったら……こうさせとけ」
「それで安心して眠れそう?」
「興奮して……眠れなくなったら……責任とれよ」
「バカ……」
手を握られながらベッドのそばに座って、しばらく門倉の様子を見ていた。
門倉はつらそうに息をしながら目を閉じている。
ちゃんと眠れるかな。
早く薬が効くといいんだけど。
目を閉じた門倉の顔を見ていると、私までだんだんまぶたが重くなってきた。
ずっと寝不足で疲れが溜まっているから、気を抜くと眠ってしまいそうだ。
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