傷痕~想い出に変わるまで~
情事 1
週末は土曜日の休日出勤を終えた後、初めて光の部屋にお邪魔した。
あまり広くはない1DKのマンションで、そこに住み始めてからもうすぐ2年になると言っていた。
離婚してからこの部屋に入居するまでは、精神的に不安定で体調もあまり良くなかったので実家に居たそうだ。
離婚してから5年も経った今になってまた私たちが付き合っていると知ったら、両親たちはどう思うだろう?
本当の離婚の理由は詳しく話さなかったけれど、私の両親はきっと反対すると思う。
離婚した時には『若気の至りで結婚を早まったから、世間と現実の厳しさを知ってうまくいかなかくなったんだな』と散々言われた。
光の両親がなんと言っていたのかは知らない。
結婚生活がうまくいっているうちは時々光の実家に遊びにも行ったし、光の両親にはとても可愛がってもらった。
だけど結果的に離婚してしまったのだから、今となってはもしかしたら、可愛い息子を追い詰めてしまった悪い嫁として憎まれているのかも知れない。
光の部屋に行く前に二人で夕飯の材料を買いにスーパーへ行った。
約束していたハンバーグの材料を買って、光の部屋の少し狭いキッチンで料理をした。
久しぶりに作ったハンバーグは少し見た目が不格好だったけれど、光はとても嬉しそうに食べてくれた。
「また瑞希の手料理が食べられるなんて、ホントに夢みたいだな」
そう言った光の目が心なしか潤んで見えた。
食事の後は一緒にキッチンで洗い物をして、入浴を済ませてから二人でお酒を飲んだ。
昔みたいに缶チューハイの1本や2本で酔ったりしない。
光は思っていた以上に私がお酒に強くなったことに驚いていた。
今の仕事のこととか好きな食べ物の話とか、他愛ないことを遅い時間までお酒を飲みながら話した。
その夜も私たちはベッドで抱き合った。
別れる前からこの間の夜まで何年も触れ合っていなかったから私が忘れてしまっただけなのか、それとも実際に変わってしまったのか。
光って昔もこんな風に私を抱いていたかな?
……そうか。
光としか経験のない私と違って、光は他の人たちとも何度も関係を持っているんだ。
私が聞いたのは二人だけだったけど、実際はもっとたくさんの人としていたのかも知れない。
きっと今は私だけなんだと信じてるけど。
好きじゃない人とでも体だけの関係を持つことができたんだよね、光は。
実際のところ、私以外に一体何人くらいの人と関係を持ったんだろうとか。
昔はこんなことしなかったなとか、一番最近別の人を抱いたのはいつだろうとか。
その気になれば私も好きじゃない人とでもできるものなのかなとか。
光に抱かれながら、そんなことばかりが頭の中を巡った。
「瑞希、大丈夫?つらい?」
よほど私が上の空だったのか、それともあまり良くなさそうだと思ったのか、光は途中で手を止めて私の顔を覗き込んだ。
……しまった。
いくらなんでも失礼だろう。
「大丈夫……。この間までこういうのずっとなかったし、まだ慣れなくてちょっとね……」
苦し紛れに答えると、光は少し首をかしげた。
「え……?ずっとなかったって……そんなに?」
しまったな、余計なこと言っちゃったかも。
「この間も少し思ったけど……それでちょっとアレなのかな。よく慣らしたつもりだったけど、もしかして痛かった?」
ちょっとアレってなんだ?
そんな経験豊富な人みたいに……。
なんだか他の人と比べられてるみたいでイヤな気分だ。
最初からものすごくその気だったわけじゃないけど、一気にその気が失せた。
「……その話はもういい。ごめん、今日はちょっと無理みたい」
「えっ……」
ごろりと寝返って背を向けると、光は隣に横になって少し困った様子で私を後ろから抱きしめた。
「ごめん……なんか俺、気に障るようなこと言った?それとも瑞希が嫌がるようなことでもしたのかな?」
途中でこんなのひどいと思われるかも知れないけど、私にだってプライドくらいある。
他の人と比べるようなこととか、体があまり良くなかったようなことを言われたら傷付くのは当たり前だ。
あの日バスルームから聞こえた、絡み合う男女の恍惚に喘ぐ声をまた思い出して吐き気がした。
両手で顔を覆って不快感に耐える。
あまり広くはない1DKのマンションで、そこに住み始めてからもうすぐ2年になると言っていた。
離婚してからこの部屋に入居するまでは、精神的に不安定で体調もあまり良くなかったので実家に居たそうだ。
離婚してから5年も経った今になってまた私たちが付き合っていると知ったら、両親たちはどう思うだろう?
本当の離婚の理由は詳しく話さなかったけれど、私の両親はきっと反対すると思う。
離婚した時には『若気の至りで結婚を早まったから、世間と現実の厳しさを知ってうまくいかなかくなったんだな』と散々言われた。
光の両親がなんと言っていたのかは知らない。
結婚生活がうまくいっているうちは時々光の実家に遊びにも行ったし、光の両親にはとても可愛がってもらった。
だけど結果的に離婚してしまったのだから、今となってはもしかしたら、可愛い息子を追い詰めてしまった悪い嫁として憎まれているのかも知れない。
光の部屋に行く前に二人で夕飯の材料を買いにスーパーへ行った。
約束していたハンバーグの材料を買って、光の部屋の少し狭いキッチンで料理をした。
久しぶりに作ったハンバーグは少し見た目が不格好だったけれど、光はとても嬉しそうに食べてくれた。
「また瑞希の手料理が食べられるなんて、ホントに夢みたいだな」
そう言った光の目が心なしか潤んで見えた。
食事の後は一緒にキッチンで洗い物をして、入浴を済ませてから二人でお酒を飲んだ。
昔みたいに缶チューハイの1本や2本で酔ったりしない。
光は思っていた以上に私がお酒に強くなったことに驚いていた。
今の仕事のこととか好きな食べ物の話とか、他愛ないことを遅い時間までお酒を飲みながら話した。
その夜も私たちはベッドで抱き合った。
別れる前からこの間の夜まで何年も触れ合っていなかったから私が忘れてしまっただけなのか、それとも実際に変わってしまったのか。
光って昔もこんな風に私を抱いていたかな?
……そうか。
光としか経験のない私と違って、光は他の人たちとも何度も関係を持っているんだ。
私が聞いたのは二人だけだったけど、実際はもっとたくさんの人としていたのかも知れない。
きっと今は私だけなんだと信じてるけど。
好きじゃない人とでも体だけの関係を持つことができたんだよね、光は。
実際のところ、私以外に一体何人くらいの人と関係を持ったんだろうとか。
昔はこんなことしなかったなとか、一番最近別の人を抱いたのはいつだろうとか。
その気になれば私も好きじゃない人とでもできるものなのかなとか。
光に抱かれながら、そんなことばかりが頭の中を巡った。
「瑞希、大丈夫?つらい?」
よほど私が上の空だったのか、それともあまり良くなさそうだと思ったのか、光は途中で手を止めて私の顔を覗き込んだ。
……しまった。
いくらなんでも失礼だろう。
「大丈夫……。この間までこういうのずっとなかったし、まだ慣れなくてちょっとね……」
苦し紛れに答えると、光は少し首をかしげた。
「え……?ずっとなかったって……そんなに?」
しまったな、余計なこと言っちゃったかも。
「この間も少し思ったけど……それでちょっとアレなのかな。よく慣らしたつもりだったけど、もしかして痛かった?」
ちょっとアレってなんだ?
そんな経験豊富な人みたいに……。
なんだか他の人と比べられてるみたいでイヤな気分だ。
最初からものすごくその気だったわけじゃないけど、一気にその気が失せた。
「……その話はもういい。ごめん、今日はちょっと無理みたい」
「えっ……」
ごろりと寝返って背を向けると、光は隣に横になって少し困った様子で私を後ろから抱きしめた。
「ごめん……なんか俺、気に障るようなこと言った?それとも瑞希が嫌がるようなことでもしたのかな?」
途中でこんなのひどいと思われるかも知れないけど、私にだってプライドくらいある。
他の人と比べるようなこととか、体があまり良くなかったようなことを言われたら傷付くのは当たり前だ。
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