傷痕~想い出に変わるまで~
告白 2
「おはようございます!」
「わぁっ!」
急に声を掛けられて、驚きのあまり椅子からずり落ちそうになった。
「どうかしました?」
田村くんが不思議そうな顔で私を見ている。
「お、お、おはよう……」
びっくりした……。
ドアが開いたの全然気付かなかった……。
ぬるくなったコーヒーを飲み干して席を立った。
慌てて喫煙室を出ようとして椅子の脚につまずき転びそうになる。
「篠宮課長、大丈夫ですか?」
「う、うん……大丈夫……」
眠気は覚めたけど、朝からこんな状態じゃ仕事にならないよ!
これから仕事なんだからしっかりしなきゃ。
とりあえずさっきのことは一旦忘れようと思うと同時に、また門倉の唇の感触を思い出して赤面してしまう。
「ホントに大丈夫ですか?」
「大丈夫、ホントに大丈夫だから!」
これ以上ボロを出して挙動不審と思われないように急いでオフィスに戻り、なんとか必死で気持ちを切り替えて仕事に取り掛かった。
目を通した企画書を閉じて金城くんを手招きする。
「はい、なんでしょう」
「この企画書だけどね。なかなか面白いと思うんだけど、ちょっと盛り込みすぎかな」
「そうですか?」
「やりたいことはわかるよ。でもあれもこれも欲張りすぎてひとつひとつの内容が薄くなってる気がする。全面的に推したい部分をいくつか残して、ひとつひとつをもう少し深く突き詰めてみたら?今よりもっと良くなると思う」
「わかりました」
企画書を返そうとして、金城くんに教えてもらったエレベーターの止まる時間が間違っていたことを思い出した。
「金城くん、昨日のエレベーターの夜間点検のことだけど、止まる時間は2時間じゃなくて20分の間違いだったよ」
「あ、そうでしたか?」
そこに私が閉じ込められていたことを知らない金城くんは、どうってことなさそうな顔をしている。
「あれだね。誰かに物事を伝える時は間違えないようにしないと。人との約束にしてもそうだけど、特に仕事に関しては時間を正しく伝えるのは大事だから」
「そうですね。気を付けます」
金城くんからエレベーターが止まることを聞いていたのに、実施される時間も確認せず慌てて飛び乗ってしまった私も人のことは言えないんだけど。
そのことを話すと面倒なことになりそうだから、私が閉じ込められていたことは誰にも言わないでおこう。
昼休み。
社員食堂に向かう途中で門倉を見かけた。
また今朝のことを思い出してしまい、顔を合わせるのが気まずくて社員食堂に向かう人混みの影に隠れようとすると、突然門倉が振り返って目が合った。
……こっち見てるよ……。
しかも今日は同僚と一緒じゃなくて一人らしい。
門倉はそのまま社員食堂には入らず、入り口の前で待ちかまえていた。
「隠れることないだろ」
「……だって」
今朝あんなことがあったばかりなのに、門倉はなんでこんなに何事もなかったような顔していられるんだろう。
私は恥ずかしくて顔を上げることもできないのに。
うつむいていると門倉が少し顔を近付けて、私の顔を覗き込んだ。
えっ、まさかまたこんなところで?!
「ん?篠宮、なんか顔色悪いぞ」
「えっ?!ああ……そう?」
焦った……。
まさかそんなことはないと思ったけど、またキスされるんじゃないかなんて一瞬でも考えた自分が恥ずかしい。
「体調でも悪いのか?」
「いや……大丈夫」
「ホントに大丈夫か?」
「夕べ眠れなかっただけだから」
あっ……しまった!
昨日のエレベーターでのできごとで頭がいっぱいになって眠れなかったって言ってるようなもんじゃないか!
「わぁっ!」
急に声を掛けられて、驚きのあまり椅子からずり落ちそうになった。
「どうかしました?」
田村くんが不思議そうな顔で私を見ている。
「お、お、おはよう……」
びっくりした……。
ドアが開いたの全然気付かなかった……。
ぬるくなったコーヒーを飲み干して席を立った。
慌てて喫煙室を出ようとして椅子の脚につまずき転びそうになる。
「篠宮課長、大丈夫ですか?」
「う、うん……大丈夫……」
眠気は覚めたけど、朝からこんな状態じゃ仕事にならないよ!
これから仕事なんだからしっかりしなきゃ。
とりあえずさっきのことは一旦忘れようと思うと同時に、また門倉の唇の感触を思い出して赤面してしまう。
「ホントに大丈夫ですか?」
「大丈夫、ホントに大丈夫だから!」
これ以上ボロを出して挙動不審と思われないように急いでオフィスに戻り、なんとか必死で気持ちを切り替えて仕事に取り掛かった。
目を通した企画書を閉じて金城くんを手招きする。
「はい、なんでしょう」
「この企画書だけどね。なかなか面白いと思うんだけど、ちょっと盛り込みすぎかな」
「そうですか?」
「やりたいことはわかるよ。でもあれもこれも欲張りすぎてひとつひとつの内容が薄くなってる気がする。全面的に推したい部分をいくつか残して、ひとつひとつをもう少し深く突き詰めてみたら?今よりもっと良くなると思う」
「わかりました」
企画書を返そうとして、金城くんに教えてもらったエレベーターの止まる時間が間違っていたことを思い出した。
「金城くん、昨日のエレベーターの夜間点検のことだけど、止まる時間は2時間じゃなくて20分の間違いだったよ」
「あ、そうでしたか?」
そこに私が閉じ込められていたことを知らない金城くんは、どうってことなさそうな顔をしている。
「あれだね。誰かに物事を伝える時は間違えないようにしないと。人との約束にしてもそうだけど、特に仕事に関しては時間を正しく伝えるのは大事だから」
「そうですね。気を付けます」
金城くんからエレベーターが止まることを聞いていたのに、実施される時間も確認せず慌てて飛び乗ってしまった私も人のことは言えないんだけど。
そのことを話すと面倒なことになりそうだから、私が閉じ込められていたことは誰にも言わないでおこう。
昼休み。
社員食堂に向かう途中で門倉を見かけた。
また今朝のことを思い出してしまい、顔を合わせるのが気まずくて社員食堂に向かう人混みの影に隠れようとすると、突然門倉が振り返って目が合った。
……こっち見てるよ……。
しかも今日は同僚と一緒じゃなくて一人らしい。
門倉はそのまま社員食堂には入らず、入り口の前で待ちかまえていた。
「隠れることないだろ」
「……だって」
今朝あんなことがあったばかりなのに、門倉はなんでこんなに何事もなかったような顔していられるんだろう。
私は恥ずかしくて顔を上げることもできないのに。
うつむいていると門倉が少し顔を近付けて、私の顔を覗き込んだ。
えっ、まさかまたこんなところで?!
「ん?篠宮、なんか顔色悪いぞ」
「えっ?!ああ……そう?」
焦った……。
まさかそんなことはないと思ったけど、またキスされるんじゃないかなんて一瞬でも考えた自分が恥ずかしい。
「体調でも悪いのか?」
「いや……大丈夫」
「ホントに大丈夫か?」
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