傷痕~想い出に変わるまで~
動揺 4
7時半過ぎ。
ようやく仕事を終えてメールを送ろうとしていると門倉がやって来た。
「そろそろ終われるか?」
「あ、うん。ちょうどメールしようとしてた」
「そんじゃ行くか」
一緒に会社を出ていつもの居酒屋へ向かった。
「わざわざ迎えに来たの?」
「別にそういうわけじゃないけどな。そろそろ終わったかなーと思って覗いてみただけ。メールするより早いし」
「ふーん……」
居酒屋に着く少し前、会社の受付嬢と会った。
若くてかわいいと評判の彼女は私に軽く会釈をした後、親しげな様子で門倉に話し掛けて、今度食事に誘ってくださいとか猫撫で声で言っていた。
きっと門倉のことが好きなんだろう。
これまであまり気にしたことはなかったけれど、門倉ってモテるのかな?
彼女の私を見る目には少なからず敵意を感じた。
私はただの同期だし敵意を向けられる覚えもない。
だからというわけでもないけれど、私がすぐ隣で待っているというのに話がなかなか終わらないので少しイラッとした。
「門倉課長、お邪魔なようでしたら私は先に失礼しますけど。私の話は特に急ぎませんので」
わざとらしくそう言うと、門倉は不気味なものでも見た時のように眉をひそめた。
受付嬢は嬉しそうに門倉に笑い掛けた。
「でしたらこれから私と一緒にお食事でも……」
「いや、悪いけど今日はこの後、篠宮課長と大事な話があるから。じゃあまた」
あっさりとその場を去ろうとする門倉と私を見る彼女の視線の鋭さには身震いがした。
大事な話ってほどでもないのに。
若くてかわいい女子と食事する方が門倉の将来にとっては大事なんじゃない?
「彼女の誘いに乗ってあげたら良かったのに」
「何言ってんだ。あんな小娘にはなんの興味もねぇよ」
「あっそう……」
当たり前かも知れないけど、門倉にも好みのタイプとかあるんだな。
若くてかわいい女子に興味がないとすれば、実は歳上熟女が好きとか?
まぁ、私には関係ないけど。
居酒屋に入り席に着くとまずはビールと適当な料理を注文した。
今日はあの女子大生風の店員はいないらしい。
門倉はビールを飲みながら私にお通しの小鉢を差し出した。
イカとトマトのマリネだ。
私は黙ってそれを受け取った。
「それで昨日何があった?」
「それ、2回目だよね?」
「あれじゃわからん。もっと詳しく話せ」
詳しく話して聞かせるような内容でもなかったんだけど、仕方がないので昨日のことを話した。
「俺が悪かったって……ホントにごめんって頭下げて謝られた。うまくいかないのを全部私のせいにしてたとか、自分からは何も話さなかったのに、どうして俺の気持ちをわかってくれないんだって思ってたって。瑞希は俺より仕事が大事なんだって拗ねてたらしい」
門倉は運ばれてきた枝豆に手を伸ばしながら少し首をかしげた。
「元旦那が会社に行けなくなった本当の理由はなんだ?」
「本人からは聞いてないけど……友達の話では同じチームの上司と先輩から嫌がらせっていうか、イジメみたいなことされてたって」
「その原因は聞いてないのか?」
「新卒で結婚してたから新人の頃から目立ったみたいだけど……4年目に配属された営業部で、なかなか婚活がうまくいかない上司とか、結婚間近だった彼女と別れて間もない先輩から目の敵にされたって」
門倉は心底呆れたと言いたそうな顔をして枝豆の殻を殻入れに放り込んだ。
ようやく仕事を終えてメールを送ろうとしていると門倉がやって来た。
「そろそろ終われるか?」
「あ、うん。ちょうどメールしようとしてた」
「そんじゃ行くか」
一緒に会社を出ていつもの居酒屋へ向かった。
「わざわざ迎えに来たの?」
「別にそういうわけじゃないけどな。そろそろ終わったかなーと思って覗いてみただけ。メールするより早いし」
「ふーん……」
居酒屋に着く少し前、会社の受付嬢と会った。
若くてかわいいと評判の彼女は私に軽く会釈をした後、親しげな様子で門倉に話し掛けて、今度食事に誘ってくださいとか猫撫で声で言っていた。
きっと門倉のことが好きなんだろう。
これまであまり気にしたことはなかったけれど、門倉ってモテるのかな?
彼女の私を見る目には少なからず敵意を感じた。
私はただの同期だし敵意を向けられる覚えもない。
だからというわけでもないけれど、私がすぐ隣で待っているというのに話がなかなか終わらないので少しイラッとした。
「門倉課長、お邪魔なようでしたら私は先に失礼しますけど。私の話は特に急ぎませんので」
わざとらしくそう言うと、門倉は不気味なものでも見た時のように眉をひそめた。
受付嬢は嬉しそうに門倉に笑い掛けた。
「でしたらこれから私と一緒にお食事でも……」
「いや、悪いけど今日はこの後、篠宮課長と大事な話があるから。じゃあまた」
あっさりとその場を去ろうとする門倉と私を見る彼女の視線の鋭さには身震いがした。
大事な話ってほどでもないのに。
若くてかわいい女子と食事する方が門倉の将来にとっては大事なんじゃない?
「彼女の誘いに乗ってあげたら良かったのに」
「何言ってんだ。あんな小娘にはなんの興味もねぇよ」
「あっそう……」
当たり前かも知れないけど、門倉にも好みのタイプとかあるんだな。
若くてかわいい女子に興味がないとすれば、実は歳上熟女が好きとか?
まぁ、私には関係ないけど。
居酒屋に入り席に着くとまずはビールと適当な料理を注文した。
今日はあの女子大生風の店員はいないらしい。
門倉はビールを飲みながら私にお通しの小鉢を差し出した。
イカとトマトのマリネだ。
私は黙ってそれを受け取った。
「それで昨日何があった?」
「それ、2回目だよね?」
「あれじゃわからん。もっと詳しく話せ」
詳しく話して聞かせるような内容でもなかったんだけど、仕方がないので昨日のことを話した。
「俺が悪かったって……ホントにごめんって頭下げて謝られた。うまくいかないのを全部私のせいにしてたとか、自分からは何も話さなかったのに、どうして俺の気持ちをわかってくれないんだって思ってたって。瑞希は俺より仕事が大事なんだって拗ねてたらしい」
門倉は運ばれてきた枝豆に手を伸ばしながら少し首をかしげた。
「元旦那が会社に行けなくなった本当の理由はなんだ?」
「本人からは聞いてないけど……友達の話では同じチームの上司と先輩から嫌がらせっていうか、イジメみたいなことされてたって」
「その原因は聞いてないのか?」
「新卒で結婚してたから新人の頃から目立ったみたいだけど……4年目に配属された営業部で、なかなか婚活がうまくいかない上司とか、結婚間近だった彼女と別れて間もない先輩から目の敵にされたって」
門倉は心底呆れたと言いたそうな顔をして枝豆の殻を殻入れに放り込んだ。
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