傷痕~想い出に変わるまで~
懺悔 3
「再婚はしなかったの?……あの人と」
歯に衣着せてもしょうがないから、単刀直入に尋ねた。
光は少し驚いたのか、ばつの悪そうな顔をしている。
「彼女とは……あれから半年くらいで別れた」
「……たった半年で?」
「彼女には遠距離恋愛中の彼氏がいて、後腐れなく遊べる浮気相手が欲しかっただけなんだ。既婚者の俺ならお互い本気にならないからちょうどいいって。俺が離婚して状況が変わったし、彼氏が戻ってくるから別れようって、あっさりと」
「ふーん……」
そんな女と付き合ってたのか、光は。
「本気で好きだったの?……彼女のこと」
「最初は瑞希への当て付けというか……瑞希には俺なんか必要ないんだからもういいや、浮気してやれって、やけになって付き合い始めたんだけど……」
「浮気が本気になったわけね」
「……うん」
彼氏のいる人と一時の遊びのつもりで付き合って、本気になって私と離婚した上に、彼女にも捨てられたわけだ。
ずっと一緒にいたいと言って結婚した私より、光をただの浮気相手だと思っていた彼氏持ちの女の方が良かったっていうことか。
光にとって、私はその程度の存在だったんだな。
「ごめん……こんなこと今更聞きたくなかったよな」
「聞きたいって言えば嘘になるけど……私が聞いたことだから」
悪かったと思ってるなら、嘘でもいいからもう少しまともないいわけをしてくれればいいのに。
ずっと一緒にいたいって先に言ったのは光だった。
先に心変わりしたのも光だった。
人の気持ちなんて、いつ変わるかわからない。
ずっと変わらないと信じていたのは、もう昔のことだ。
今更だけど惨めだな。
できればこんなこと聞きたくなかった。
もうここにいたくない。
「まさか、今更こんなこと話すために私に会おうと思ったの?だったらもう話は済んだでしょ」
短くなったタバコを灰皿の上でもみ消して、タバコケースと伝票を手に取り立ち上がろうとした。
「違う、まだ話したいことがあるんだ」
「光は話せばスッキリするのかも知れないけど、今更そんなこと聞かされた私はどうすればいいの?もう何も聞きたくない」
立ち上がって席を離れた私の腕を光が強い力で掴んだ。
「待って瑞希!お願いだから!」
またジロジロ見られてる……。
まるで見世物だ。
人前で痴話喧嘩してるカップルみたいで恥ずかしい。
「痛いよ……離して」
「あ……ごめん」
光は慌てて手を離し、私の手から伝票を取ろうとした。
「俺が払うから」
「いい。ほとんど私の分だから私が払う。恥ずかしいから、とにかく早くここ出よう」
会計をカードで素早く済ませて店の外に出た。
店を出たのはいいけれど……これからどうしようか。
まだ話したいことがあると言われても、外で人目を気にせず落ち着いて話せる場所なんて知らないし、室内で二人きりになるのは避けたい。
腕時計を見ると、時刻は既に9時半を回っている。
ここからまっすぐ自宅に帰っても10時を過ぎてしまう。
それより何より、何時だろうが構わないけど、とにかく帰りたい。
早く光のいない場所で一人になりたい。
「明日も仕事があるし、もう遅いから帰りたいんだけど」
「えっ……話の続きは?」
「話はもういいよ。帰るね」
背を向けて足早に歩き出すと、光は私を追い掛けてまた腕を掴んだ。
「待って。もう少しだけでいいから」
光は私の腕を離そうとしない。
「だから痛いって……」
「ごめん、でもどうしても聞いてほしい」
私が話を聞くまで離さないつもり?
一緒にいた頃は何も言わずに自分から離れて行ったくせに、今頃になって必死で引き留めて話を聞けなんて勝手過ぎる。
「……勝手だよね」
「ごめん。勝手なのはわかってる」
「わかってるなら離して。もういいでしょ?」
力ずくで振りほどこうとしても、光はやっぱり、私の腕を強く掴んだまま離さない。
歯に衣着せてもしょうがないから、単刀直入に尋ねた。
光は少し驚いたのか、ばつの悪そうな顔をしている。
「彼女とは……あれから半年くらいで別れた」
「……たった半年で?」
「彼女には遠距離恋愛中の彼氏がいて、後腐れなく遊べる浮気相手が欲しかっただけなんだ。既婚者の俺ならお互い本気にならないからちょうどいいって。俺が離婚して状況が変わったし、彼氏が戻ってくるから別れようって、あっさりと」
「ふーん……」
そんな女と付き合ってたのか、光は。
「本気で好きだったの?……彼女のこと」
「最初は瑞希への当て付けというか……瑞希には俺なんか必要ないんだからもういいや、浮気してやれって、やけになって付き合い始めたんだけど……」
「浮気が本気になったわけね」
「……うん」
彼氏のいる人と一時の遊びのつもりで付き合って、本気になって私と離婚した上に、彼女にも捨てられたわけだ。
ずっと一緒にいたいと言って結婚した私より、光をただの浮気相手だと思っていた彼氏持ちの女の方が良かったっていうことか。
光にとって、私はその程度の存在だったんだな。
「ごめん……こんなこと今更聞きたくなかったよな」
「聞きたいって言えば嘘になるけど……私が聞いたことだから」
悪かったと思ってるなら、嘘でもいいからもう少しまともないいわけをしてくれればいいのに。
ずっと一緒にいたいって先に言ったのは光だった。
先に心変わりしたのも光だった。
人の気持ちなんて、いつ変わるかわからない。
ずっと変わらないと信じていたのは、もう昔のことだ。
今更だけど惨めだな。
できればこんなこと聞きたくなかった。
もうここにいたくない。
「まさか、今更こんなこと話すために私に会おうと思ったの?だったらもう話は済んだでしょ」
短くなったタバコを灰皿の上でもみ消して、タバコケースと伝票を手に取り立ち上がろうとした。
「違う、まだ話したいことがあるんだ」
「光は話せばスッキリするのかも知れないけど、今更そんなこと聞かされた私はどうすればいいの?もう何も聞きたくない」
立ち上がって席を離れた私の腕を光が強い力で掴んだ。
「待って瑞希!お願いだから!」
またジロジロ見られてる……。
まるで見世物だ。
人前で痴話喧嘩してるカップルみたいで恥ずかしい。
「痛いよ……離して」
「あ……ごめん」
光は慌てて手を離し、私の手から伝票を取ろうとした。
「俺が払うから」
「いい。ほとんど私の分だから私が払う。恥ずかしいから、とにかく早くここ出よう」
会計をカードで素早く済ませて店の外に出た。
店を出たのはいいけれど……これからどうしようか。
まだ話したいことがあると言われても、外で人目を気にせず落ち着いて話せる場所なんて知らないし、室内で二人きりになるのは避けたい。
腕時計を見ると、時刻は既に9時半を回っている。
ここからまっすぐ自宅に帰っても10時を過ぎてしまう。
それより何より、何時だろうが構わないけど、とにかく帰りたい。
早く光のいない場所で一人になりたい。
「明日も仕事があるし、もう遅いから帰りたいんだけど」
「えっ……話の続きは?」
「話はもういいよ。帰るね」
背を向けて足早に歩き出すと、光は私を追い掛けてまた腕を掴んだ。
「待って。もう少しだけでいいから」
光は私の腕を離そうとしない。
「だから痛いって……」
「ごめん、でもどうしても聞いてほしい」
私が話を聞くまで離さないつもり?
一緒にいた頃は何も言わずに自分から離れて行ったくせに、今頃になって必死で引き留めて話を聞けなんて勝手過ぎる。
「……勝手だよね」
「ごめん。勝手なのはわかってる」
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