Invincible ~路地裏の話~

キハダマグロ

episode1 chapter3

追い風に流されながら歩く男が1人。足元ばかり見ながら歩いていて、何も持たず目的もないように見える。換気扇とパイプに囲まれて、まるで責め立てられているように錯覚してしまう。

「人がいないから、心地いい」

乾いた風に独り言を隠した。黒髪で少し長い襟足。大きく開いた首元を飾る青い宝石のついたチョーカー。何より目立つのは黒と青のオッドアイだ。この男「メロウ」もInvincibleの一員で、1番の古株戦闘員だ。自分の腕を撫でながらおごそかなこの路地裏を迷わず進む。

「あれ、メロウだよね?」

突然投げ掛けられた声に、肩を震わせる。恐る恐る振り返ると現代社会離れした服装で背中の刺青いれずみが目立つ女がいた。かなり髪が長く、しゃがむと地面についてしまいそうだ。

「あっ…アルア…」
「えー?何?まだ慣れてくれないの?」

半分パニックを起こしているメロウに、ニコニコと近づきそう言った。背中を小突き、肩を組む。

「ちょ、タンマ…やめろ」
「へぇー、人じゃなくって女の子に慣れてないんだー?結構ウブだよねー」

顔を青くしたり赤くしたりする彼をいじる事を楽しむ「アルア」は、メロウの足を早める。彼女も優秀な戦闘員でメロウとはよくパーティを組む事も多い。

「アジトに戻るんでしょ?一緒に戻ろ?」
「…断る理由がないから、断れない…」
「本当は嬉しいくせにー!」

アルアがInvincibleに入ってきたのもつい最近の事だ。どこからともなく、知るでもなく皆BOSSに救われて構成員となる。不思議な話だ。そして偶然とは思えないほど皆、戦闘能力に長けている。そしてBOSSも、この状況を前もって知っていたかのように振る舞っているのだ。

「…やっぱ1人で帰っていいか…?」
「ダメでーす!メロウはすぐに放浪する癖があるんだから!」

それを、誰1人として疑ったり不思議に感じる者はいない。BOSSに救われたから。行き場のない過去の通過点、もしくは終点を与えてくれたから。


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