Invincible ~路地裏の話~

キハダマグロ

episode1 chapter2

「あーもう、なんで分け前がこんなに少ないわけ!?」

バーカウンターで甘ったるいカクテルを飲み干し、崩れ落ちる女が1人。BOSSのようなブロンドヘアだが少し癖っ毛で、左右におさげをしている容姿から未成年に見える。

「何を今更。お前がド派手に壊した建物の修理代に金がまわったんだ。それともお前が払うのか、カーラ」

そう冷たく言った男は、軽く鼻を鳴らしコーヒーを口に含む。こちらも髪に癖があるが、銀髪が印象的だ。曇りひとつない眼鏡をかけシワひとつないスーツを身に纏っている。

「んんん…敵対組織のビルをなんで修理するわけ?ぶっ壊せば、治安も良くなるじゃん!まあ…マフィアの私らが治安維持に貢献なんて変な話だけどさ?てかウルーだって最後に手榴弾グレネード投げたじゃん!」

コーヒーマグをソーサーに置き、ハンカチで口元を拭きながら、カーラを軽くあしらう。

「あれは必要だったから投げたまでだ。敵の数と銃の弾丸の数が割り合わなかっただろ。あと、修理しないとマフィア同士の抗争が表立って政府やスパイに足がつくだろ」

あっさり正論をかまされ、虫の居所が悪くなったカーラは空になったカクテルグラスを手で弄びもてあそだす始末。ウルーは小説を出し読み進める。性格こそ真逆だが、仲が悪いわけでもない凸凹パーティだろう。

バーにはカーラとウルーの2人しかいない。バーでもあり、アジトでもあるここ『Bird Song 小鳥のさえずり』は人が好んで通ろうとは思わない路地裏にひっそりとたたずんでいる。レンガの外壁に木製のドア。繁華街にあれば、人気のバーになっていただろう。店内も小洒落こじゃれたガスランプとロウソクの灯りが照らし、年季の入ったテーブルとバーカウンターがムーディーな雰囲気を醸し出す。生憎あいにく、店主であるバーテンダーは今日は留守のようだ。

「そういえば、お前ジンバーテンダーもいないのにどこからカクテル出したんだ?」
「いいんですー、ジンさんには許可をもらいましたよーっと」

カーラは弄んでいたカクテルグラスをバーカウンターに伏せて置き、バーの奥にある階段を登って行った。

「…全く、気まぐれなやつだな。どうやったらそんな自由気ままになれるんだ…」
「聞こえてるけどー!?」

そう、武器さえ持たなければ、Invincibleの構成員は皆、普通の人間だ。だが過去にトラウマ、あるいはしがらみを持つ者ばかりである事を各々知らずにいる。




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