始まりは水曜日の15時過ぎ

緑川まい

月曜日の17時過ぎ(8)


「ごめんね、ありがとう…」

「そこは、ありがとうでいいんだよ。
お前はすぐ謝る。
いつものキリッとした感じは微塵もないよな、ほんと。
まぁ、いいや、泣きたいなら泣け。
誰にも見られないようにしてやるから」

「ごめ…ありがとう」

「そう、それでいいんだよ」


柱の近くに連れて行かれて、彼はカバンからティッシュ箱を取り出す。
鼻炎で助かったな、なんて言ってる。

おまけに資料も片手に出して、関係が疑われないようにもしてくれた。


優しいな、ほんと。

「すげぇ泣くじゃん…普段どんだけ溜めてんだよお前…」

「だって、誰にも言えないし…気付いてすぐ失恋だなんて…」


ぽろぽろ、というより、ボロボロ。
とめどなく流れる涙に、さすがに彼も驚いている。

「やらずに後悔するのは嫌!っていつも言ってるんだから、今回も確かめて、彼女だとしても気持ち伝えて告白すればいいじゃん」

「でも…」

「そんな、でも…って言う女に育てた覚えないぞ」

「だって怖い…そして、育てられた覚えもないぃぃ」

「うわ、さらに泣いた…ほら、ごめんごめん」


自分の勇気のなさも情けなくなってさらに泣けてくる。

確かめればいい、わかってるけど怖い。



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