始まりは水曜日の15時過ぎ

緑川まい

水曜日の15時過ぎ(2)


「今日は珍しく会議が中止になったんです。
だから早く来れました」

「そっか、よかったね。
私はね、まぁいつも通りだけど一応戻るときにここの資料持って帰らなきゃ。

先に取っていい?」


はい、という声に近くの踏み台を取りに行く。
本当にわずかな踏み台でいいのに、小さな脚立だからヒールのときちょっと怖いんだよね。

そんなことを考えながら、目当ての資料を探す。

「今回はなんてやつですか?」

「今回はね、ーーー」


いつものように背表紙の記載名を言って、野田くんのポジションからも探してもらう。

大体、野田くんが早いんだよね。


負けていられない!なんて思いながら一生懸命探すと。

「あ、あった!
今回は私が早かったよ!」

そう思って振り返ろうとしたとき、足を踏み外したのがわかった。

「危ない…!」

珍しく焦った野田くんの表情を見てから目を閉じた。


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