『クロス・ブレイド~剣爛舞踏~』
第6話 第二章『シーサイドクロスブレイド』②
じぃーっ。
熱視線を送る彼女。ショートカットの下級生だった。間違いなく美少女ではあるが、興味の対象以外には恐ろしく淡泊な性格をしていた。そう、親愛なる姉以外のことはさして興味がない。極端なシスコンだった。彼女の名は明智水穂。そして視線の先にいるのは姉である姫乃だった。
「ああ・・・・・・・お姉さま。盛ってますわ。お姉さま。そう、それはもう。発情期の雌犬のように。盛った匂いがぷんぷんとしますわ」
奇怪にしか聞こえない独り言だった。周囲から怪訝そうな視線が集まっているが、そんなことは彼女にとっては興味のないことだった。凡俗の視線など興味の範囲外だ。しかし、親愛なる姉のことである。変な虫が寄りつかないように、そしてどこの馬の骨ともわからない輩の手に渡るのを布施がなければならない。
どれどれ。ここにはいない両親に代わり、ここは自分が査定してやらねばなるまい。
水穂はそう思いながら、姉である姫乃の発情対象を見やる。
「ない」
やる気のなさそうな態度。容姿も平均点。あんな男になぜ親愛で聡明で可憐な姉が夢中になっているのか理解に苦しむ。
「はっ。まさか」
別の理由があるのではないか。そう水穂は考え出した。そう、例えば姉はあの男に弱みを握られ、無理矢理服従されているのではないか。
そう。
「お、お姉さまの恥ずかしいビデオを録画。そして、「言うことを聞かなければこのビデオを全国ネットでバラまいてやる」「や、やめて。それだけは。何でも言うこと聞くから」こ、このような経緯があったのでは。いえ、そうに違いないですわ」
妄想は次第に強固なものになっていく。そう、頭の中では完全にそれが事実ということで定着していった。
「い、いけない。お姉さまの呪縛を解き放ち、真実の愛を教えることができるのは、妹であるこのわたくし、水穂しかいないのですわ」
そう、高らかに彼女は言った。
明らかに面倒臭そうなことになりそうだった。
それは日曜日のことだった。
「ふぁ・・・・・・・・」
刀哉は欠伸をした。日曜日。公園の噴水の前。そこには昼間から盛ったカップルが何人もいた。「ごめん? 待った?」「う、ううん。今きたところ」などという、いかにもラブコメで定番なやりとりをするカップルが何人もいた。
「眠い」
その日は当然のように日曜日なので授業はない。休日である。刀哉は私服を着ていた。
「・・・・・・帰ろうか」
なぜ自分はこんなところで待ちぼうけを喰らっているのか、理解に苦しんだ末、踵を返そうとした。
「ごめん。待った?」
と、その時のことだった。待ち人が現れた。私服。清純そうな白のワンピースを着て彼女は現れた。ただそんな格好の彼女でも帯刀は欠かさなかった。えらく不似合いでアンバランスな気はした。だが有事の際何があるかわからないので仕方がない。
「すげー待ったんだが。時間に遅れるとは何事だ」
「だ、だからごめんって。こういう時、嘘でも「今きたところ」っていうのがセオリーでしょうが」
姫野はそう言う。
「なぜ時間を守った俺が責められにゃならん」
不満げに刀哉は言う。
「そ、それより早く行きましょう」
姫乃は歩き出す。そう、刀哉の手を引っ張るようにして。
「……あやしい」
その様子を水穂は見ていた。
怪しい。いや、怪しいを通り越している。あれは確信を持って言える。
そう。あれは恋する乙女の目だ。
「お、お姉さまが発情期の雌のように盛った真似をするなんて」
あの男がどんな手を使い、姉を誘惑したのか。洗脳でもしたのか。どんな弱みを握り、姉をあんなふしだらな雌豚にしたのか。とても理解が追い付いていない。
ただひとつだけ理解している事がある。
そう。
「あの男は敵……そう、親愛なるお姉さまをみだらな雌豚に落とした畜生に違いない! この水穂の宿敵にちがいないですわ!」
そう、高らかに宣言した。隠れていた草むらから身を乗り出し、高らかに。
周囲の人々から白い目で見られていても彼女にとってはそんな事は興味の範囲外だった。
熱視線を送る彼女。ショートカットの下級生だった。間違いなく美少女ではあるが、興味の対象以外には恐ろしく淡泊な性格をしていた。そう、親愛なる姉以外のことはさして興味がない。極端なシスコンだった。彼女の名は明智水穂。そして視線の先にいるのは姉である姫乃だった。
「ああ・・・・・・・お姉さま。盛ってますわ。お姉さま。そう、それはもう。発情期の雌犬のように。盛った匂いがぷんぷんとしますわ」
奇怪にしか聞こえない独り言だった。周囲から怪訝そうな視線が集まっているが、そんなことは彼女にとっては興味のないことだった。凡俗の視線など興味の範囲外だ。しかし、親愛なる姉のことである。変な虫が寄りつかないように、そしてどこの馬の骨ともわからない輩の手に渡るのを布施がなければならない。
どれどれ。ここにはいない両親に代わり、ここは自分が査定してやらねばなるまい。
水穂はそう思いながら、姉である姫乃の発情対象を見やる。
「ない」
やる気のなさそうな態度。容姿も平均点。あんな男になぜ親愛で聡明で可憐な姉が夢中になっているのか理解に苦しむ。
「はっ。まさか」
別の理由があるのではないか。そう水穂は考え出した。そう、例えば姉はあの男に弱みを握られ、無理矢理服従されているのではないか。
そう。
「お、お姉さまの恥ずかしいビデオを録画。そして、「言うことを聞かなければこのビデオを全国ネットでバラまいてやる」「や、やめて。それだけは。何でも言うこと聞くから」こ、このような経緯があったのでは。いえ、そうに違いないですわ」
妄想は次第に強固なものになっていく。そう、頭の中では完全にそれが事実ということで定着していった。
「い、いけない。お姉さまの呪縛を解き放ち、真実の愛を教えることができるのは、妹であるこのわたくし、水穂しかいないのですわ」
そう、高らかに彼女は言った。
明らかに面倒臭そうなことになりそうだった。
それは日曜日のことだった。
「ふぁ・・・・・・・・」
刀哉は欠伸をした。日曜日。公園の噴水の前。そこには昼間から盛ったカップルが何人もいた。「ごめん? 待った?」「う、ううん。今きたところ」などという、いかにもラブコメで定番なやりとりをするカップルが何人もいた。
「眠い」
その日は当然のように日曜日なので授業はない。休日である。刀哉は私服を着ていた。
「・・・・・・帰ろうか」
なぜ自分はこんなところで待ちぼうけを喰らっているのか、理解に苦しんだ末、踵を返そうとした。
「ごめん。待った?」
と、その時のことだった。待ち人が現れた。私服。清純そうな白のワンピースを着て彼女は現れた。ただそんな格好の彼女でも帯刀は欠かさなかった。えらく不似合いでアンバランスな気はした。だが有事の際何があるかわからないので仕方がない。
「すげー待ったんだが。時間に遅れるとは何事だ」
「だ、だからごめんって。こういう時、嘘でも「今きたところ」っていうのがセオリーでしょうが」
姫野はそう言う。
「なぜ時間を守った俺が責められにゃならん」
不満げに刀哉は言う。
「そ、それより早く行きましょう」
姫乃は歩き出す。そう、刀哉の手を引っ張るようにして。
「……あやしい」
その様子を水穂は見ていた。
怪しい。いや、怪しいを通り越している。あれは確信を持って言える。
そう。あれは恋する乙女の目だ。
「お、お姉さまが発情期の雌のように盛った真似をするなんて」
あの男がどんな手を使い、姉を誘惑したのか。洗脳でもしたのか。どんな弱みを握り、姉をあんなふしだらな雌豚にしたのか。とても理解が追い付いていない。
ただひとつだけ理解している事がある。
そう。
「あの男は敵……そう、親愛なるお姉さまをみだらな雌豚に落とした畜生に違いない! この水穂の宿敵にちがいないですわ!」
そう、高らかに宣言した。隠れていた草むらから身を乗り出し、高らかに。
周囲の人々から白い目で見られていても彼女にとってはそんな事は興味の範囲外だった。
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