Saori's Umwelt (加藤沙織の環世界)
第37話 Motala Cohenburg (モーシャ・コーヘンバーグ)
「それでは、まずは沙織と愛染にオーラの使い方を教えなくてはならないな。モーシャ」
「はっ」
呼ばれて、ダビデ王と近い年齢に見える男がやってきた。ターバンを巻いて、ヤマと同じような上着を着ている。
緑のロングスカートを履いて、宝石がついた指輪をはめているが、女装趣味があるようには見えない。
声に張りがある。
耳が大きく、額の赤い聖痕と鋭い目が特徴的だ。
手には二本の棒を持っている。
「KOKではオーラの師範をしている。6番隊隊長、モーシャ・コーヘンバーグだ」
モーシャは、棒を沙織と愛染に放り投げた。吸い込まれるようにうまく二人の手元におさまる。
「それでは、今からどのくらいのオーラが出せるのか、その棒にオーラを込めてみたまえ」
沙織は、まじまじと棒を見た。
黒い。
軽い。
長さは二十センチくらい。沙織の手にもなんとか収まる太さだ。
ーー麩菓子(ふがし)みたい。
沙織は、素直に自分の精神を集中させた。もう今日だけでも三回、しっかりとオーラを錬成している。毎日繰り返している修行ではあるが、やはり実践は違うのだろう。いつもよりかなり速く、多めにオーラを生成することができるようになった。
全身に回ったオーラを棒に集中させる。
ーーどうだろう。これでいいのだろうか?
愛染を見ると、愛染の棒にもかなりのオーラが溜まっているようだ。うっすらとオーラが見える。他人の目からもオーラが見えるというのは、かなりの達人レベルだ。
ーー凄い。
しかし、沙織にも自信があった。
ーーどう?
沙織はモーシャを見た。
「これで全力か?」
驚かれると思ったのに、モーシャは逆に納得がいっていないようだ。
ーーでも、これで全力だもん。
不承不承、沙織はうなづいた。
「なるほど。素質はあるが、まだ気とオーラの違いが理解できていないようだな」
「棒にオーラを注入すると、本当はどうなるんですか?」
愛染の問いに、モーシャは無言で手を出した。愛染は、モーシャに棒を手渡した。モーシャは目をつぶり、一言なにかをつぶやいた。目を開ける。モーシャの額にある赤い聖痕が光る。棒は意志を持ったように動き出し、十メートル伸び、細くなり、色を変え、トゲトゲになり、また元の黒い棒に戻った。
「こうなるな」
モーシャは、愛染に棒を投げ返した。
「なるほど、です」
愛染は、棒をまじまじと見ている。どうなるのかという結果がわかればそこへ向かえばいい。目的がわかっていればやるだけだ。
沙織は棒にオーラを通し、まずは伸びたり縮んだりするイメージを持った。
が、できない。
他のクリーチャーたちが呆れた顔をしていないので、こういうものなのかもしれない。
沙織は、一発でできる自信があったので悔しかった。
唯一の慰めは、愛染もできていないことだった。
何分かそうしていたが、今すぐは無理だとダビデ王は思ったようだ。玉座のように豪華な椅子で座って見ていたが、立ち上がって何かを言おうとした。
「はっ」
呼ばれて、ダビデ王と近い年齢に見える男がやってきた。ターバンを巻いて、ヤマと同じような上着を着ている。
緑のロングスカートを履いて、宝石がついた指輪をはめているが、女装趣味があるようには見えない。
声に張りがある。
耳が大きく、額の赤い聖痕と鋭い目が特徴的だ。
手には二本の棒を持っている。
「KOKではオーラの師範をしている。6番隊隊長、モーシャ・コーヘンバーグだ」
モーシャは、棒を沙織と愛染に放り投げた。吸い込まれるようにうまく二人の手元におさまる。
「それでは、今からどのくらいのオーラが出せるのか、その棒にオーラを込めてみたまえ」
沙織は、まじまじと棒を見た。
黒い。
軽い。
長さは二十センチくらい。沙織の手にもなんとか収まる太さだ。
ーー麩菓子(ふがし)みたい。
沙織は、素直に自分の精神を集中させた。もう今日だけでも三回、しっかりとオーラを錬成している。毎日繰り返している修行ではあるが、やはり実践は違うのだろう。いつもよりかなり速く、多めにオーラを生成することができるようになった。
全身に回ったオーラを棒に集中させる。
ーーどうだろう。これでいいのだろうか?
愛染を見ると、愛染の棒にもかなりのオーラが溜まっているようだ。うっすらとオーラが見える。他人の目からもオーラが見えるというのは、かなりの達人レベルだ。
ーー凄い。
しかし、沙織にも自信があった。
ーーどう?
沙織はモーシャを見た。
「これで全力か?」
驚かれると思ったのに、モーシャは逆に納得がいっていないようだ。
ーーでも、これで全力だもん。
不承不承、沙織はうなづいた。
「なるほど。素質はあるが、まだ気とオーラの違いが理解できていないようだな」
「棒にオーラを注入すると、本当はどうなるんですか?」
愛染の問いに、モーシャは無言で手を出した。愛染は、モーシャに棒を手渡した。モーシャは目をつぶり、一言なにかをつぶやいた。目を開ける。モーシャの額にある赤い聖痕が光る。棒は意志を持ったように動き出し、十メートル伸び、細くなり、色を変え、トゲトゲになり、また元の黒い棒に戻った。
「こうなるな」
モーシャは、愛染に棒を投げ返した。
「なるほど、です」
愛染は、棒をまじまじと見ている。どうなるのかという結果がわかればそこへ向かえばいい。目的がわかっていればやるだけだ。
沙織は棒にオーラを通し、まずは伸びたり縮んだりするイメージを持った。
が、できない。
他のクリーチャーたちが呆れた顔をしていないので、こういうものなのかもしれない。
沙織は、一発でできる自信があったので悔しかった。
唯一の慰めは、愛染もできていないことだった。
何分かそうしていたが、今すぐは無理だとダビデ王は思ったようだ。玉座のように豪華な椅子で座って見ていたが、立ち上がって何かを言おうとした。
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