Saori's Umwelt (加藤沙織の環世界)

オミィ・ランバード

<Same World> Status Civitatis Vaticanae (バチカン市国)

 同じ時。

 バチカン市国。バチカン宮殿。謁見の間

 三人は、ローマ教皇にたいして振り返り、再度頭を下げた。

 一人は、短髪ごつ目の大男。
 一人は、メガネをかけた細面男子。
 一人は、長髪のふくよかな女性。

 三人ともが聖職者らしく、黒衣と十字架のネックレスを身にまとい、ツバのない丸いキャップをかぶっている。

 ここはバチカン市国。

 イタリアはローマの中にある、キリスト教カトリック派の総本山。ローマ教皇の鎮座する聖域だ。

 この国は、国とはいうものの、とても小さい。どのくらい小さいかというと、東京ディズニーランドよりも小さな国だ。

 この小さな国は、人口八百人程度で、軍隊すら持っていない。自国の軍ではなく、スイス軍に守られている国である。平和のためという名目はあるが、力を持つと戦争を起こすかもしれないというイタリアの思いも交錯している。

 だが、人間は力を持つと、戦力を持たずにはいられなくなる。誰かに自分の力を奪われてしまうかもしれないと不安になるためだ。自分を通すには力を持たなくてはならない。教皇も御多分に洩れず、密かに戦力を隠し持っていた。

 その組織の名は、教皇直属部隊『アリアンジェロ(天使の羽)』。奇跡調査委員会の中に隠されている、バチカン市国唯一の秘密組織である。

 『アリアンジェロ』のトップ三人は、三大天使と呼ばれ、ラファエル、ミカエル、ガブリエルの名を継承している。
 ただし、アリアンジェロは、戦力でありながら闘うことを好まない。行動に出るのは、教皇を守るためと、奇跡に対抗するため。それだけだ。

 三大天使は、先ほど教皇に呼ばれ、元アルカンジェロ(大天使)のネーフェが、クリマタクトをKOKに徴収されてしまったという知らせと、それでもこの件に関してはこれ以上首を突っ込むな、という命令を受けた。

 戦闘部隊の隊長でもある、アンジェロカポ(天使長)ミカエルは、巨柱が並ぶ大きな通路を歩きながら、首を捻った。

「しかし、あのネーフェ翁が、KOKと問題を起こすとは」

 聖遺物管理官でもある、アルカンジェラ(大天使)ラファエルもうなづく。

「ええ。信じられませんわ。アルカンジェロの中でも一番温厚だったあのネーフェ様が、一般人にFを使用しただなんて」

「うん。信じられない。というか信じなくていい話だと思いますね、僕は。ネーフェさんが問題を起こすはずがない。それなのに起こした。ということは、何か大きな理由があったのだと思います」

 情報部隊長でもあるガブリエルは、眼鏡を持ち上げた。

「待て。待て待て。それ以上は言うでない。いいのだ。教皇が言う通り、何も関与しなければ、それでいいのだ」

 ミカエルも本当は真実を知りたかったが、二人の不穏な空気を感じ、慌てて全てを否定した。これ以上問題を広げる気はない。なんせ教皇直々の命令だ。
 他の二人もうなづいた。

 ただ、ガブリエルの内心は違っていた。

ーーこれで良いとはいえ、何が起きたのかを知っておくことは悪いことではない。日本にもアンジェラ(天使)がいる。ネーフェに何が起きたのかを調べてみよう。

 三人はこれから食事をする、という雰囲気でもない。
 ただ軽く挨拶をして、それぞれのスケジュールへと戻っていった。

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