拉致られて世界3位以上を取るとこになりました

陽くんの部屋

Online・AnotherWorld 3

「単刀直入に言うとね、君にとあるゲームで世界3位以内に入ってほしいんだ」
「……とあるゲーム?」

寝っ転がってた身体を起こしながら、言われた言葉を復唱した。
少しきつく拘束されてたから赤くなっている。
しかし世界3位以内とは、少しぶっ飛びすぎではないだろうか。

「そう、Online・AnotherWorldでその3位以内に入ってほしいんだ。このゲームは有名だからね、君も知っているだろう?」

腕を組んだ状態で聞いてくるもんだから、少し苛立ちを覚えるも、変なことをしたら俺自身に危険がある。
少しは抑えよう。

「……ということは、俺はフルダイブ技術を利用したVRMMOをプレイしなければならないんだな」
「そういう事だ。話が早くて助かるね」
「……もしそれをNOと言ったら?」
「……その時はYESと言うまでここにいてもらうことになる。それは君にとってもデメリットでしかないだろう?」

つまり、俺の選択肢はYES、つまりプレイしかないわけだ。
選択肢のない人生はとてもつまらないというのに。

「俺はゲームがあまり好きじゃない」
「どうやらそのようだね。だが、君がゲームを好きになる可能性は大いにある」
「……どうだか。しかし、なんで俺なんだ。他にもいくらでもいるだろう」
「……そうだねぇ……強いて言うならその頭脳だ。
ゲームの技術がなくても、君の頭脳ならいくらでも応用がきくからね。君程の頭脳を持ち合わせたものとはそう出会わないから」

初めてこの頭脳を必要とされた気がした。
気味悪がれるこの頭脳を発揮出来るというのか。

「……俺のことをどうやって調べた」
「ふふっ……それは秘密だ」

まるでハロウィンの時のいたずらに心躍らせる子供のような笑みだった。

「……分かった、続きを聞こう」
「それは嬉しいね。では話そうか」

男が立ち上がって歩いたと思えば、大きなモニターがある場所に軽く触れた。
すると様々な映像が浮かび上がってきた。
なるほど、3Dホログラムか。

そのうちの1つをスライドしこちらへ確認するよう促した。
見ると送られてきたのは、説明の書かれた紙のようで、Online・AnotherWorldの世界大会についてだった。

「それは、近いうちに行われるOnline・AnotherWorldの世界大会について書かれたものだ。まぁ、近いうちと言ってもここからまだ1年も先なんだけどね。この大会が行われるのが来年2057年の9月15日〜18日の間だ」
「1年プレイしただけで3位以内になんか入れるのか?」
「まぁ、そこは努力だね。そしてここがポイントなんだけど、世界大会へ出場するためには予選を通過しなければならない。予選は今までによると、時間制限のうちにミッションをクリアすればいいらしい。クリア人数に指定はないから、とりあえずクリアすればいい。だから毎年クリア人数がバラバラなんだけどね」

制限時間はあるが、人数に指定はない。
とりあえずどれだけ遅くなっても時間制限内にクリア出来ればいいわけだ。

「そういえば、今年はもう大会は終わったのか」
「いやまだ終わってない、来月の9月25日~28日の間さ。だから早めに始めて、大会のデータを取っておく。その方が大会で有利になるからね」

大会に出るのはいいが、その3位以内に入ったとして、一体何が与えられるのか。

「3位以内に入ったら、一体何が手に入るんだ」
「……私は実はゲーム会社の社長でね、VRMMOを作っているんだ。この大会に3位以内に入ると手に入るのは、膨大な資金。これは順位によって金額が変わるんだけど、大切なのはその次。これは3位以内に入れば全員貰える……政府からの援助権だ」
「政府からの援助……?」
「そう、VRMMOを作るにあたってや研究の為の資金や設備の準備。そしてどんなことにも政府は関与出来なくなるんだ。たとえそれが犯罪だとしてもね、目を瞑るしかない、逆にそれに対しての援助も望めばしてくれる。どうだい?凄い特権だろう?」

いわば、政府を都合のいい駒に出来るというわけだ。

「……でもそれじゃあ、政府が一方的にデメリットを背負うだけじゃないか」
「ただその代わり、政府からの依頼をこなさなければならない。人を殺せと言われれば殺すし、銃を作れと言われれば作る。政府が私たちの駒であるように、私たちも政府の駒なんだ」

なるほど、頼り頼られの関係が複雑化したらこうなるというのがよく分かる。
男がまたもや立ち上がり、今度はドアの方へと向かっていく。
どうやらこの場から去るらしい。

「ちなみに、君がもし成功したら、賞金の半分を差し上げよう。半分と言ってもかなりの金額になるはずだ。悪い話じゃないだろう?」
「……分かった。どうせ逃げれないしね、暇つぶしにはなると思う」

この男の言いなりになるしかないようだ。

「Thanks!期待していた返事をどうもありがとう。言い忘れてたいたが、今回の予選と世界大会の本戦は、2人1組のバディ戦だ。君のバディはこちらで用意しておく。君はひとまず休んでいてくれ」
「……出来れば、作戦を飲み込みやすい人がいいな」
「OK、参考にするよ」

キュイーンとドアが開き、去っていく男、その背中。
だが自分は、その男の名を聞くのを忘れていたことに気づき、出る1歩直前のところで呼び止めた。

「待って!」
「ん?どうしたんだい?」
「まだ、貴方の名前を聞いていない」
「おや、それは失礼した。私の名前は……」


霧生 鷺谷きりゅう さぎやだ。では、また昼食を持って戻ってくるよ。多分お昼はまだだろう?……ではまた後で、柚谷 光ゆずたに ひかる君?」

伝えていないはずの俺の名を告げて、社長の霧生さんはこの場を去っていった。

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