チートクラスによる異世界攻略

水色の山葵

強すぎるその力



 騎士団に行く理由は装備やその能力を実際に見たかったかだ。


 だが、そこへ行くと何故かクラスの皆が集まっていた。
 何やら騒がしい声は怒気と蔑みを含んでいた。


 一番後ろに居た龍哉と沙耶姉に声を掛ける。


「なあ、皆どうしたんだ?」


「あ、吟君。部屋で会議した後、実際にスキルを試してみたいって話になってメイドさんにここの事を教えて貰って、それで騎士団の練習場を使わせて貰おうと思ったんだ。雅音さんと忠人くんが話しかけたら、つっぱねられちゃって」


「ただ突っぱねるだけなら皆怒らなかったと思うんだけど、酷い暴言を吐かれて百花ちゃんと正人くんがキレちゃってね~」


「まあ、大体理解した。俺が纏めるよ」


「ごめんなさいね。別に皆吟君に迷惑かけようとしてる訳じゃ無いから」


「解ってるよ沙耶姉」




 騎士団とクラスメイト達の間になる位置に移動した俺は、大きく声を掛ける。


「ほら皆、そこまでだ。俺が話す!」


「吟……」


 申し訳なさそうに雅音が俺の名前を呟いた。


「もう話し合いは終わったのか」


「ああ、終わったよ。それでどうしたんだ忠人」


「あいつらは、糸羽を笑ったんだ「お前みたいな異世界人の猿は娼婦ぐらいしか行き場はねーよ」ってな」


「そうかここは任せてくれ」


「すまねえな」


「いいや、俺の過失だ」


 忠人は申し訳なさと、自分の不甲斐なさを知ってか、唇を思いっきり噛みしめていた。


「なあ、糸羽を傷つけて忠人にこんな顔をさせてるんだ。あいつらに何のお咎めも無しじゃ僕は何するかわからないよ」


 ドスの効いた声でいくらちゃんが耳元でささやく。
 いくらちゃんが本気になれば誰も止められない。
 本当にこの騎士団が嫌いらしい。


「解ってるよ、いくらちゃん」


 そう言って俺は騎士団に向き直る。


「なんだ? なんか文句でもあるかよ?」


 ギャハハハ、と野太い笑い声が響く。


「いや。品の欠片も無い騎士団だと思いまして。まあそうか、魔族や亜人との戦争にも連れて行って貰えない雑魚しか残ってないんだから当然か」


 笑い声が止んだ。


「俺達に言ってやがんのか?」


「他に誰か見えるのか? 馬鹿もここまで来ると重傷だな」


「喧嘩を売ってんだな?」


「いいや。俺は練習場をさっさと使わせろつってんだよ」


「誰がお前らみたいなガキに使わせるかよ」


「俺達はさっきこの国の王と必要な全ての物資を俺達に無条件で提供するって約束事をして来たんだ。それに逆らうって事は国にたてつく事になる訳だが、それでいいのか?」


 ちょっとばかし盛って話してはいるが、解りはしないんだから関係ない。
 もし解っているなら俺達に逆らう意味を知らないのは可笑しい。
 多分、こいつらが知ってるのは異世界人を召喚するって事だけで、待遇なんかは何も聞かされちゃいないんだ。
 今の内に国から搾れるだけ搾る口実を作るか。


「うるせえよ、ガキ。そんな証拠どこにある」


 そう言うとリーダーらしき男は殴りかかって来た。
 これを俺が受ければ、国は世界の意思との約束を早くも未遂の形だが破った事になる。
 それを口実に好き勝手させて貰おう。
 金好きのいくらちゃんならこれで勘弁してくれるだろう。


「【完璧な先手獲得ファーストゲット】」
「【瞬の最速トップモーメント】」


 拳が俺に届く前に、百花と正人が声を荒げた。
 スキルか?


 2人の拳が騎士の顔面にめり込んだ。


「くそが!」


 だが、筋骨隆々の騎士は高校生2人の拳で沈む程弱くはなかった。


「こんなガキにやられてたまるか!【筋力……」


 スキル名を叫ぼうとした騎士だが、それを最後まで言う事は出来なかった。
 【完全なもう一発ネクストゲット】と言う百花の声と共に騎士の顔面に三つ目の拳が突き刺さる。
 そして、それはまだ終わらない。


「【完全なもう一発ネクストゲット】」


 更にもう一撃。
 男を地面に倒してまたがる。
 スキル名を叫ばれないように喉や顔面を的確に狙う。


「【完全なもう一発ネクストゲット】【完全なもう一発ネクストゲット】【完全なもう一発ネクストゲット】【完全なもう一発ネクストゲット】【完全なもう一発ネクストゲット】【完全なもう一発ネクストゲット】………………」


 喉が枯れる程叫び続ける百花。
 騎士の男の心はもう折れている。


「やべて……ゆるじでぐ!……ああああ……ずいまぜんでじったあああ!!」


 歯が幾つも飛んで行った結果、男はもうまともにしゃべる事も出来てない。
 百花は殴る事に必死でそんな事には気にしていない。
 百花は向こうの世界でも喧嘩っ早かった、それでもこんなに人を殴る経験は初めてだろう。


 最初に動いたのは詩羽と沙耶姉だった。
 2人が抱き着いて百花を止める。


「【傷を吸う掌ダメージドレイン】。百花ちゃん、もういいから、もういいから。もうやめて、お願い……」
「【心に触れる暖かさカームタッチ】! 百花、もう大丈夫だから」


 後ろに居た糸羽が、百花に近寄る。


「ありがとう百花ちゃん! 嬉しかった! でも私は百花ちゃんが傷つく方が嫌なの!」


 糸羽の言葉でやっと百花は止まった。
 百花は男の上からどき、糸羽に言った。


「ごめんな」


「私こそ」


 良く周りを見ると、他の皆も好戦的に構えている。
 まずいな。
 特にいくらちゃんの怒りメーターがやばい。
 そして何よりまずいのは俺がこの場を収める手段を持っていない事。


「皆やめて!!」


 沙耶姉の声が皆に響き渡った。
 皆声を荒げる沙耶姉を始めて見たんだ。
 そしてその瞳に涙を見た。


「【掻き消える傷ダメージデリート】そう、皆落ち着いて。今は百花と糸羽の心配をしなさい」


 結局雅音が纏める形で事態は収まった。
 俺達はそのまま部屋に戻る。
 このけじめは絶対につけてやると決心しながら。






























 残された騎士達。


「なあ見たかよ。あいつらのスキル」


「ああ、回復系が2人も居た」


「いやそれよりも殴ってた奴はスキルを二つ使ってなかったか?」


「もしも他の奴が全員そんな性能だったとしたら……」


「それよりもスキルの名前を思い出してみろよ。どいつもこいつも固有スキルばっかだったぞ」


「「「「「「「は!?」」」」」」」」


「固有スキルなんて、持ってる奴はこの国に10人も居ない才能だぞ!」


「だから、異世界の英雄ってのは本当の話だったんだよ!!」


「俺達、殺されないかな?」


 騎士団詰所は無言で支配された。



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