異世界に召喚されたのでさっさと問題を解決してから

水色の山葵

十四話 魔王襲来



「おはよう……シルフィーナ」


「何よシル。私に何か言いたいことがあるんじゃないの?」


「すいませんでした」


 ベットの上でオー、アール、ゼットの体勢である。
 あの後直ぐにシルフィーナは目を覚ました。
 勘違いは訂正された。
 だが、勘違いしたのは俺の責任だという事で俺は凄く謝っている。


「シル、私の事はフィーナと呼んで。シルだとあなたと被るし、愛称で呼んで」


「わかったよフィーナ」


「それで。プレゼント……もらえるんでしょ?」


「ああ、渡すさ」


 ストレージから二つのアクセサリーを取り出す。


「ええ! 何それ!」


「何それって、ペアリングだよ。この世界じゃどうなのか知らんが俺の世界じゃ結婚する時に指輪を贈るんだ」


「そうなんだ……」


「ご主人、その風習はこの世界にもありますよ」


「お、ノルも起きたか」


「はい、ご主人が女性をいきなり連れ込んでいたので私は寝たままの方が都合がいいのかと思い、体勢だけは寝ていました」


「連れ込んでは……いるな。うん、俺の女でシルフィーナだフィーナと呼んでやってくれ」


 フィーナは何故か思考停止。
 ノルはご機嫌に微笑んでいる。
 俺はどうすればいんだよ。


「フィーナ、こっちはノル。俺の同居人だ。そもそも見えてるか?」


「見えてる。よろしくねノル」


「はい。よろしくお願いします、フィーナ様」


「そんな事より、何よこの指輪!?」


「結婚してくれフィーナ」


「なっ……違うくて、いつ買ったのよ!?」


「買ったんじゃない。俺が作ったんだ。フィーナが見るかもと思って最上級結界魔法をかけて魔法的に監視出来ないようにした部屋で作ったからな」


 ランクはSSお互いの意思を知り、その時の愛情度をリアルタイムで色として表示する。
 相手の危機を感知して知らせてくれる効果や、即死ダメージを一度だけ無効にする効果が付与されている。
 間違いなく、この世界でも上位のアイテムだろう。


「って事だ。どうだ、惚れたか?」


「惚れ……たわよ」


「ん? なんて?」


「惚れたって言ってんの!! 言わせないで」


「行ってほしいのが男の性ってもんだ」


「じゃあ言ってあげるわ! 好き好き好き好き好きー!!」


「結婚してくれっか?」


「うん」


 身を預けてきたフィーナを抱き寄せ、少しづつ顔を近づける。
 ノルはいつの間にか部屋には居なかった。
 空気の読める幽霊である。


「私ね、アンタとアーカイブの会話聞いてたの」


「そうか」


「それでね、その……勝手に勘違いしてごめん。あと、ありがとすごく嬉しかった。私からもお願い、一緒になって」


 その瞬間、2人の指輪は愛情の最高値である真紅を示した。


















 それから二時間ほど経った後、2人は殆ど裸体のままノルの前に姿を見せたという。
 かなりの頭お花畑状態であった。




















 そんなこんなで、重めの昼飯を食べた後なぜか俺の家に魔王が襲来した。
 普通に呼べばいい物を俺が貼った結界をボロクソに破壊しての強行突破である。


「何の用件だよ。お前らはアーカイブを見張ってるんじゃなかったのか?」


「ああシル。今日から私もここに住むから、あとアリルもな」


「今日からお世話になります。その事について魔王様がはしょった部分を説明しますね」


 リビングのソファーで横になったレティとそれを膝枕しているアリル。
 本当にレティだけで来てくれなくて助かった。


「まず、貴方が結界に突入した数十分後アーカイブが我々に和平条約、のような契約を交わすと言ってきました。細かくは省きますが、貴方を仲介人とすることで話を円滑に平和的に進めようと言った内容です。それについて魔王7人で会議を開いた結果、色々あって連絡係として魔王レティとその秘書のような役割を務めていた私がここに連絡要員として派遣されました。まああなたには私達異世界側とアーカイブの世界側を公平にジャッチする権限が与えられています。どちらかが条約を破った際などは貴方の一存で大きく無罪か有罪を決める事が出来るという事です。ですが不公平な事をした場合、解っているとは思いますが全ての魔王とこの世界から批判される事になります。私どもとアーカイブは貴方の立場を客観的に観察する権限と連絡要員をあなたにつけることが契約により許可されています」


「説明が長すぎる。簡潔に頼むわ」


「俺らとあいつ等を裁く権利をテメエにやる。けど不正な事したらどうなってるか解ってんだろうな。ああん!? それと連絡係を両方から出すから精々ハーレム楽しみやがれ。だそうです」


「それはだれの物まね?」


「魔王を統治している大魔王様のおっしゃった通りの語句です」


「なるほど、なんとなく分かったわ。それじゃ二人ともこれからよろしく」


「うむ。私は美味い物と暇つぶしを快適な寝床が有ればそれでよい」


 うっわ。
 このなんちゃって魔王マジヤバい。
 色々やばい。


「そのシル様、随分簡単に決めてしまうのですね?」


「文句はないな。俺はお前らの事気に入ってるから。それにどっちかをひいきする心配もしなくていいって解らせるには、それが一番都合がいいだろ。俺もその意見には賛成だし、一番解ってもらえると思う。まあフィーナ個人には無限にひいきするから、そこは諦めとけ」


「はあ。では御厄介になるに当たって。当面の生活費として白金貨500枚、それと献上品として魔王城にあった魔導具を数点お持ちしました。お納め下さい」


「ああ、貰っとく」


 アーカイブには俺のシステムのバージョンアップをして貰ってるし、これでお相子だな。これからも全部貰うか、全部拒むか、だけど取り敢えず貰えるもんは貰う方針で行こう。
 魔王とアーカイブがくれるってだけで期待が膨らむな。
 フィーナへのプレゼントとかも月一位で、いや週一位で上げたいし。
 うん素材の類が一番欲しいな。

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