異世界に召喚されたのでさっさと問題を解決してから

水色の山葵

十話 嫉妬



 不命の花はゲットできた。
 さてまずは。


「それじゃあノル、プレゼントだ。花瓶はミーナに会いに行った時に買ってきてるから家に飾っとくな」


「ありがとうございます! ご主人が何も説明してくれなくていきなり瞬間移動した時はどうなる事かと思いましたが。私のため、だったのですね」


「まあ、ついでみたいなもんだ気にすんな」


 それじゃあ不命の花を使ってクッキーでも焼いてみるか。
 〈調理〉スキルを取り、料理人に職業を変える事で、上位スキルの〈超調理〉に昇格させる。
 それから〈レシピ〉スキルも獲得して、作りたい料理の道筋を完璧にする。
 後は鍛冶で料理道具を作る。
 必要な鉄は昨日装備を作るに当たって買い込んでいる。
 まだまだ余裕はありそうだ。
 クッキーの素材もミーナに聞きに行った時の帰りに買っている。
 調味料の類はかなり高かったが金で解決できる時点で入手難易度は低い。
 砂糖やら塩の類は一キロずつ購入した。
 ストレージに入れれば苦にもならないしな。
 不命の花はバニラエッセンスの代わりに入れた。


 さてクッキーも出来た。
 これはミーナ用だ。
 次はシルフィーナへのプレゼントだが、とっておきを考えている。


 それを作り終えた俺はギルドに向かった。
 勿論ノルも一緒だ。
 まあ、俺以外の奴には見えないけど。


 ミーナを見つけたので受付へ直進した。


「こんにちわシル様。今日は二度目ですね」


 ミーナにシルフィーナへのプレゼントの選定を手伝って貰ったからな。
 お礼はしっかりしないとな。


「ミーナ、クッキー焼いてきたんだが一緒に食べないか?」


「え? 乙女ですか!?」


「何だ知らないのか? 最近は女子力の高い奴がモテるんだぞ」


「知りませんよ。もう少ししたらお昼休みなので酒場の方で待っててください」


「ああ、解った」


 酒場の一席で待っていると直ぐにミーナやって来た。
 急がせてしまったか?
 まあSSS++の素材を使ったお菓子を食わせてやるのだから勘弁してほしい。
 味見もちゃんとしたが、かなりうまかった。
 SSS++の素材を使った為か料理人のレベルが30まで一気に上がっていた。
 生産系の職業は物を作る事でもレベルアップするのだ。
 っと、今はミーナと食事だったな。
 軽い昼食を取った後、クッキーをストレージから差し出す。


「これ……クッキー。すごく甘い。なにこれ砂糖? でも砂糖って高級品だよね」


 一口食べたミーナは放心してしまったようだ。
 俺も食べよ。
 やっぱりうまいな。
 この世界じゃ勿論、前世を合わせても一番うまいお菓子だと思う。


「どうだ? うまいか?」


「はい。すごく美味しいです」


「そうだろうそうだろう。まあ俺は基本なんでもできるからな」


「これって砂糖ですか?」


「ん? ああそうだぞ、それと不命の花の蜜を隠し味に入れている」


「えっ……不命の花?ってあの? 蘇生のポーションの素材になる?」


「あ? ああ詳しくは知らんがそれで間違いないと思うぞ」


「なー! シルさん! 何考えてんですか! 蜜一滴が白金貨で取引される代物をクッキーに混ぜるとか、バカですか!?」


「うん、俺頑張った! いやーそれにしても白金貨かーじゃあミーナが手に持ってるそれは金貨30枚分くらいはするのかな?」


 ミーナが立ち上がってデカイ声で抗議してくる。
 うるさい、けど可愛いな。
 アリだな。


 勿論、この花の相場も知ってる。
 検索でひっかけた。
 でも俺今金に困ってないし。
 困る未来も見えないし。
 まあ楽しければいい。


「はあ。ほんと信じられません。私、請求されても払えませんからね?」


「違う違う。俺はミーナの驚く表情を白金貨何枚かで買ったんだ、いやー安い買い物だったな」


 実際不命の花には一銭もかけてないしな。
 砂糖は一キロ金貨五枚もしたけど。


「何恥ずかしい事言ってんですか!」


「そうだなミーナ。確かに同席している女性が店内でいきなり叫び始めている現状はかなり恥ずかしい。さっさと座ってくれたまえ」


「あ、ああ!すいません」


 勢いよくミーナは着席した。
 さっきから店の客と店員からめっちゃガン見されてたんだよな。
 まあ気にするほどでも無いけど。
 ミーナの昼休みも終わり、その日は直ぐに分かれた。
 ミーナは終始金の話をしていたと、付け加えて置こう。


 その日はそのまま眠りについた。
 最近昼までしか活動してない気がするな。
 まあ不眠不休があるから、関係無いわけだが。


「シルフィーナ、プレゼントを渡しに来たぜ!」


「ねえ、シル。私さ、約束破っちゃった」


 約束って見るなって言ってた事か?
 まあ、いいか。
 心配して貰えたのかもしれないし。
 シルフィーナは我慢できないほど俺にべた惚れって訳だしな。


「そうなのか」


「ねえ、シル。私へのプレゼントを探してくれたんじゃないの? 私さ楽しみにしてたんだよ。何で他の娘にも渡してるの? なんで私が最後なの? ねえ、私ってあんたにとって何なのかな!?」


「おい、どうしたんだよ。シルフィーナ、何時ものお前なら嫌味の1つでも飛ばすとこだぞ」


「ねえ答えてよ!!お願いだから教えてよ!!私ってアンタのハーレム要員の1人なの!?」


「違う! 俺はそんな風にお前を見た事なんてねえ!」


「嘘じゃんか……。ねえシル、私ね明日死ぬらしい。罪状は人間と仲良くし過ぎた事だって。私はこの世界のアーカイブの人間的意思って存在だったんだけど、私を処分して代わりを作るのがこの世界の決定らしい。だからね、シル。お願いだから私に構わないで」


「何言って……」


 夢はそこで終わった。


「んだ……よ」


 シルフィーナ。
 クソが。


「ふざけんな!!」


 何言ってやがんだあいつは。
 シルフィーナが死ぬなんて冗談じゃねえ。
 ぜってえ助ける。


 『シルフィーナの居場所を教えろ』


『世界への接続が切れています。回答への情報が不足しています』


「クソが!」


 何か無いのか?
 シルフィーナが居るとしたらどこだ?
 俺が夢で見てたあの場所はなんだ。
 世界の狭間。
 いや、シルフィーナの役割が停止していると仮定するなら、転生を促す役目も放棄されてるはずだ。
 ならそこには居ない。
 どこだ?
 シルフィーナは何と言っていた?
 考えろ俺。
 並列思考、高速思考発動。
 シルフィーナはこの世界のアーカイブと言っていた。
 世界のアーカイブなんだ、ならそれはこの世界に存在するはず。
 それを探す方法。
 外的要因は魔物の事だった。
 魔物は次元の裂け目からくる。
 ならチェックメイトを取られないために俺ならアーカイブは裂け目から一番遠い場所に置く。
 宇宙か?
 いや、それならなんでこの惑星をアーカイブは捨てなかったんだ?
 そもそもなんで外的要因はこの惑星に次元の裂け目を作った?
 それは外的要因、魔物にとって都合がよかったからだ。
 もしも魔物たちの最終的な狙いがこの世界のアーカイブの破壊だとしたら、アーカイブは直ぐ近くにあるはずだ。
 いや、それならもっと次元の裂け目の位置を調整して直でアーカイブに乗り込めた方が良いんじゃないのか?
 なんでそれをしない。
 技術力が足りないのか?
 いや、出来ないのだとしたら。
 アーカイブあるのは地中とか天界か?
 天界には天使がいるはずだ、それにアーカイブを守らせているのか?
 いや、まだ決めつける訳にはいかない。
 結界のような物があるせいで直に乗り込めないのだとしたら。
 それがある場所がシルフィーナの居場所だ。
 居なかったとしてもアーカイブを俺にシステムにつなげて情報を引っ張ればいい。
 『天界に存在する結界を観測するにはどのスキルが有ればいい?』


『マップと連結させることで魔力制御と空間魔法を使う事で可能です。ですがMPが二十万程必要です』


 クソが。
 ならもっと絞り込む。
 俺ならアーカイブをどこに隠す?
 ダンジョンの様な場所の奥。
 ダンジョンか『天界のダンジョンの場所を特定するには?』


『ダンジョンはマップにより観測可能です。マップを世界地図とし、ダンジョンの場所を赤く表示します』



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