異世界に召喚されたのでさっさと問題を解決してから

水色の山葵

七話 屋敷の幽霊



 今日は家を買おうと思う。
 宿屋でもいいのだがもっと広いスペースが欲しいのだ。
 不動産屋はマップと検索によって見つけた。
 中に入る。


「いらっしゃいませ」


 揉み手をしながら小太りの男が声をかけてきた。


「本日はどのようなご用件でしょうか」


「家が欲しい。俺は相場がよく解らないんだがこの店で一番高い物件はいくらだ?」


「はい。うちで扱ってる物件ですと白金貨2枚が最高額です」


「そうか。なら多少ぼってもいいから白金貨2枚までで鍛冶や木工の設備のある家は無いか? 今すぐ欲しいんだが」


「そうなりますと離れに鍛冶職人を雇っていた貴族が使って居た屋敷があります」


「案内を頼めるか?」


「畏まりました」


 一度奥に引っ込んだ男は手に小さな鞄を持って出てきた。
 このまま向かうようだ。
 はぁ。
 商人って聞くと妙に身構えちまうな。
 ラノベの読み過ぎだな。
 取り敢えず白金貨2枚、金貨200枚なら俺が五日本気で働けば稼げる量だ。
 問題無い。


 屋敷に着くと、取り敢えずデカかった。
 俺が昔1人暮らししてたアパート丸々って感じの物だ。
 本当に金貨200枚でこんな物が変えるのだろうか。


「取り敢えず職人が使ってったって場所を見せて貰ってもいいか?」


「承知しました。ついてきていただけますか」


「ああ」


 裏手にまわるとそこそこ立派な一軒家が目に留まった。
 確かに職人用の場所っぽい。
 中に入ると道具の類は持ち出されているが炉のような物が設置されている。


「木工用のスペースは生憎無いのですが、いかがでしょうか?」


「そうだな。一応屋敷の中も見ていいか?」


「勿論でございます」


 屋敷の中もこれと言って不備がある訳でもなくちゃんと管理されているようだ。
 うん。
 ここで良さそうだな。
 トイレもちゃんとしてるし。
 風呂もある。
 調理場なんかもちゃんとしてて難癖のつけるとこが見つからない。


「ここにする」


「ありがとうございます。ですが実はこの物件は幽霊が出るといわくつきなのですが、それでもよろしいでしょうか?」


 幽霊か。
 聖魔法が使える俺には問題なさそうだな。
 それにファンタジー要素は取り入れて行く主義だ。


「構わない」


「では金貨50枚でいかがでしょうか?」


「こんな立派な屋敷がそんな安くていいのか?」


「本来は白金貨1枚なのですがお客様には特別です」


「そうか。助かる」


 俺の金銭感覚がおかしいのか?
 うん、麻痺してても不思議じゃ無いな。
 なんせりんご一個を金貨一枚で買う男だ。
 頭可笑しい。
 金貨50枚を店主に渡して契約書を書いた。
 これで正式にこの家は俺の物だ。
 そのまま店主は帰って行った。
 内装や使用人と考える事は結構あるが今日は最低限の事だけしよう。
 本来の目的は武器の製作だ。
 取り敢えず50ポイントで結界魔法を獲得。
 永続式の結界を家全体に貼る。
 この結界は害意に反応して作動するので泥棒の類は侵入できない。
 まあ後はベットでも買うか。
 うん、メンドイ後にしよ。
 俺は武器を作りたいんだ。
 そのまま離れに向かった。


 腰を落ち着けると職業を鍛冶師に変更する。


『鍛冶師レベル1ボーナス。初級の金槌を獲得』
『鍛冶師レベル1ボーナス。スキル〈鍛冶〉を獲得』
『スキル〈鍛冶〉を感知。〈鍛冶〉と相乗させ〈超鍛冶〉へ昇格』


 上位スキルのいい名前が思いつかなかった奴は適当に名付けた。
 超がつくスキルはそのまま機能の拡張と増徴だが、これは単純に凄いということを指す。


 炉がついているのは良いが今回は〈獄炎魔法〉の黒い炎で代用する。
 なんかこっちの方が強そうだ。
 防具と剣だ。
 接近職も育てたい。
 何時までも怖がっている訳にはいかないからな。
 剣はダンジョンで手に入れた物があるんだが、鑑定した結果打ち直しが必要らしい。


 太古の魔法剣
 レア度 C
 攻撃力 30
 状態 錆
 付属スキル〈魔法付与〉


 鑑定の結果装備する事で〈魔法付与〉と全く同じ能力が備わっている事が解った。
 俺のシステムではこれも相乗効果で上位スキルになる様に設定している。
 スキル鍛冶の効果は知識による部分が大きいのだが、それに沿って体が勝手に動く。
 まあ平たい話が俺の出る幕ないって事。
 スキルが俺の要望に応えてくれる形だ。


 武器の修繕は直ぐに終わったのだが再度鑑定してみると可笑しなことが起こっていた。


 太古の魔法剣(打ち直し)
 レア度 S
 攻撃力 3400
 状態 ヘルファイアエンチャント
 付属スキル〈魔法付与〉〈翔刃〉〈見切り〉〈剣技・改〉


 強すぎだろ。
 状態のヘルファイアエンチャント状態は永続のようで攻撃すべてに獄炎属性が付く。
 付属スキルは何故か四つに増えていた。
 レア度はS。
 最高レア度はSSS++だが、こんな転生何日目で手にできるような装備では無い。
 世の中おかしな事ばかりだ。
 防具も作ってしまおう。


 九頭竜のグリーブと九頭竜の籠手を作った。
 鎧は動きにくそうなので今回は無しだ。
 ちなみに俺のシステムの中に魔法使いは鎧が装備出来ないとか、そんな不要な物は含んでいない。


 九頭竜の籠手
 レア度 A
 守備力 2230
 状態 ヘルエンチャント
 付属スキル〈衝撃吸収〉〈重力半減〉


 グリーブも同じような物だ。
 ヘルエンチャントがついているので殴る蹴るすると相手は燃える。
 まあ初級武器よりいい物をって感じで作ったからかなり満足だ。
 明日はまたほかのダンジョンをミーナに教えて貰おう。
 遠かったとしても転移で帰りは楽々だ。
 それじゃあ後回しにしてた家具でも買いに行くか。


 一度屋敷に戻ろうと思うと危機察知が反応した。
 おかしい、結界が貼られているから賊は侵入できないはずだ。
 何者だ?
 幽霊?
 取り敢えず10ポイントだし霊感スキルを獲得する。
 するといきなり変な声が聞こえる。
 女の声、泣いているようだ。
 声の方に歩いて行くと、1つの部屋に行きあたった。


「父様母様どこですか? 私はここに居ます。生きています。1人にしないで!ごめんなさい!!」


 彼女の声が徐々に大きくなり、爆音が轟くと部屋の窓が一気に割れた。


「ヒッ。怖いよう……」


 彼女はどうやら自分でやったことに驚いているようだ。
 うん、そういうことあるよね。
 壁殴ったら思ったより痛かった、みたいな。
 ってかそんな場合じゃない。
 早く止めないと。
 家が壊れる。


「おい。泣き止んでくれ」


「だれ? お父様は何処なの?お母様は?」


「お前の両親の事は知らん。だがお前が無く姿を俺は見たくない。泣き止んでくれ」


 顔を隠して泣いていたから気が付かなかったがかなり美人だ。
 俺的にはもう少し年齢が欲しいが。


「お前はもう1人や無いんだ。今日から俺はこの家に住む事になった。名前はシルだ。よろしくな」


 追い出す事や消し去る事は出来そうだが、鑑定結果は外的要因では無いようなので可愛い女の子にそんな事は出来ない。
 取り敢えず使用人として雇うか。
 あー、でも幽霊ってお茶注げるかな?
 掃除とかも出来ないかも。
 もしそうだったら俺のセラピー的に役に立ってもらおう。

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