異世界に召喚されたのでさっさと問題を解決してから

水色の山葵

一話 スタート



 彼女の知識の入ったシステムを適当に流し見していると、目の前に地図が表示された。
 宇宙の地図だ。
 立体的で太陽系のような物が表示されている。


「人間はどの惑星に要るんだ?」


「人間が生存可能な惑星は第三惑星だけです」


「そうか、もっと別の惑星には転移出来ないのか?」


「可能ですが、外的要因が発生する次元の狭間はこの太陽系の第三惑星に存在するので」


「なるほど、理解した」


 それは地球と同じように青い惑星だった。
 月のような物が周りを回っている。
 だが異世界だと言う事は一瞬で分かった。
 太陽の数がおかしい。
 その惑星の周りの月のような衛星も二つある。
 木星の様な形の物もあるが、輪っかが五本の物も見える。
 物理法則が絶対おかしい。


「その第三惑星の地図に切り替えてくれ」


「はい」


 今度は地球儀のような地図に切り替わる。
 俺の家においてあった地球儀は大きい方だったのだが、それより更にでかでかと表示された。
 町なんかもくっきり見える。


「じゃあ人間が多く居るのはどのあたりだ?」


「リース、カルムの人口が多いです。その二つの王都は人口二千万人程です。他にも亜人を含むので有れば各国の王都の人口は同じような物です」


「うーん。じゃあ出来る限り色んな人種の居る王都に飛ばしてくれ」


「畏まりました。アルバニア共和国の王都へ転移させます」


「頼んだ」


 勿論誤転移防止のため細かく場所を指定した。


「それでは行ってらっしゃいませ」


 視界が霞み彼女が消えた。
 いや消えたのは俺の方だな。


『最強の付与を開始……完了』
『システム起動』
『システム補助開始』
『ステータスの最適化を実行……完了』
『肉体の最適化を実行』
『肉体の再構築開始……完了』
『スキルの適応開始……完了』
『レベル1ボーナス。スキルポイント100を獲得』
『レベル1ボーナス。旅人装備一式を獲得』
『レベル1ボーナス。500ゴールドを獲得』
『異世界転移を確認。称号〈転移者〉を獲得』
『スキル〈転移魔法〉を獲得』
『ファースト称号ボーナス。スキルポイント100を獲得』
『スキル習得を確認。ファーストスキル習得ボーナス。スキルポイント100を獲得』
『女神との会話記録を発見。称号〈女神の加護〉を獲得』
『スキル〈信託〉を獲得』
『前世の記録を発見。称号〈転生者〉を獲得』
『スキル〈記憶保存〉を獲得』
『初期設定の適応完了』




 アルバニア共和国の王都、馬車や人の大通りでそんな声を耳にした。
 システム音声の素材にしたのは、さっきまで会話していた彼女だ。
 音声をググっても合成音声しか出てこず、違和感のある声にしかならなかったので彼女の知識で代用させてもらった。
 違和感なくしゃべってくれるようで良かった。
 自分の声にもできたが、気持ち悪かったので止めた。
 女性の声の方が気分が上がるので問題無い。
 それと彼女は女神だったらしい。
 驚きである。
 確かに金髪美人だったが、どこか人間的で全く女神なんて発想は出てこなかった。
 まあ神々しく美人だとは思ったが。


 いや今はそれよりもスタートダッシュだな。
 まずは金銭を稼ぐ手段とレベル上げの手段の確保だ。
 要するに冒険者ギルドを探す。


 りんごのような果実を売っていたおっちゃんに聞いたところ、冒険者ギルドは存在するようで場所は直ぐに分かった。
 俺は歩きながらメニューを確認する。


 ステータス
 スキル獲得
 ストレージ
 マップ
 検索
 設定


 六つの項目が開かれた。
 メニューの操作は思考で簡単に出来るように設定したので、指を使う必要もない。
 さっきりんごを一つ買ってみたのだが、ゴールドは使えるようだ。
 設定時に、見た事の有る全ての金貨に変換できるという設定を加えている。
 勿論シルバーやカッパーの単位も存在する。
 金貨をだしたらかなり大金のようだったので、釣りは要らないと言って立ち去った。
 まだ499ゴールドあるしな。
 さ、本題に戻ってステータスの確認だ。


 名前
 種族 人間
 年齢 18
 職業


 レベル1
 体力50
 MP50
 攻撃力50
 防御力160(110)
 敏捷性80(30)
 魔力値50
 スキル 〈転移魔法〉〈神託〉〈記憶保存〉 
 称号 〈転移者〉〈女神の加護〉〈転生者〉
 装備 〈旅人の服〉〈旅人のズボン〉〈旅人の靴〉〈旅人のマント〉
 ゴールド 499
 スキルポイント300


 職業欄は設定していないので空白なのはわかるが、名前が空白なのはなんでだ。
 まあ、再設定出来るならここら辺の街並みから中世ヨーロッパっぽい名前にするか。
 名前はシル、職業は狙撃手に設定した。


 名前 シル
 種族 人間
 年齢 18
 職業 狙撃手(1)


『狙撃手レベル1ボーナス。初級の弓を獲得』
『狙撃手レベル1ボーナス。初級の矢・無限を獲得』
『狙撃手レベル1ボーナス。スキル〈弓術〉を獲得』


 初期職業は全て、それにあった初級武器とスキルを得る事が出来るように設定している。
 これはストレージに自動で入る。
 旅人装備は装備状態で出現したが。
 流石に全裸ではまずいとシステムが判断したのだろうか。
 自己学習能力なのか?
 まあいいか。
 次はスキルだな。
 必要なのは、〈鑑定〉〈隠密〉〈偽装〉〈胆力〉〈ターゲット〉〈追尾〉〈属性付与〉〈ステータス上昇率倍化〉だ。
 〈鑑定〉〈隠密〉〈偽装〉〈胆力〉が10ポイントで他が50ポイントだ。
 〈鑑定〉は相手のステータスを出力する。
 〈隠密〉は誰も俺の情報を探れなくなる。
 〈偽装〉は姿を偽る事が出来る。
 黒髪と黒目を金髪碧眼に変えて置く事にした。
 雰囲気的に黒髪黒目は目立ちそうだしな。
 〈胆力〉は女神が言っていた度胸を補うスキルだ。
 〈ターゲット〉は対象一つを見失う事が無くなる。
 〈追尾〉は遠距離攻撃が対象一つを追い続けるようになる、ガードをかいくぐるような事は無いが。
 〈属性付与〉は武器に火・水・風・土・聖・闇を纏わす事が出来る。
 〈ステータス上昇率倍化〉はレベル上昇時のステータスの上がりが倍になる。
 俺の造ったシステムが最強だと確信出来るな。


 そんな事をしている間に冒険者ギルドに到着したようだ。
 外観はデカいだけで剣と盾の看板がある訳じゃなさそうだ。
 さっさと中に入る。
 中は木製の市役所みたいな感じだが、武装した人間が多いので若干の恐怖を覚える。
 心配するな俺。
 この世界の平均攻撃力は100だ。
 武装しても150付近のはず守備力210で体力100の俺を一撃で殺す事は不可能だ。
 それに今の俺は痛みを感じないんだ。
 〈胆力〉もある。
 怖くない。
 そのまま受付に進んだ。


「いらっしゃいませ。ご用件をお聞きします」


「冒険者に登録したいんだが」


「畏まりました。ギルドカードを発光したしますので名前と年齢、それと何か特異な技能があれば」


「名前はシル、歳は十八です。弓を使えます」


「解りました。登録金として銀貨一枚を収めていただきます」


「金貨しか持ってないんですが?」


「! あ、失礼しました。金貨で構いません」


 金貨を具現化させて渡すと、銀貨を99枚と言って渡された。
 ストレージに入れてみると99シルバーが追加された。
 登録はそのまま完了した。

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