異世界に召喚されたのでさっさと問題を解決してから
三話 ダンジョン
「何でまたここに居るんだよ」
さっき眠りについたのに、気づけば世界の狭間とか言ってた空間だった。
「知りませんよ。でも多分寝る事が貴方のスキル神託のトリガーになってるんだと思います」
「お? どうしたよ。なんか性格変わった?」
「貴方が会った私は分身です。分身ゆえに高度過ぎる思考は出来ないのです」
前会った女神が俺の言う事を何でも素直に聞いてたのはそのせいか。
言葉足らずなのもそのせいかもしれないな。
「それに貴方だって私に対して失礼過ぎる口調をありがとうございます」
「すまんな。あん時はいきなり美人と二人きりにさせられて緊張してたんだ」
ホントにそうだ。
死にましたなんていわれて冷静でいられるだろうか。
それに死にましたなんて言ってくる奴を相手に緊張するのも当然だろう。
「あ。あんた今ニヤっとしたね。女神様は綺麗だなんて言われ慣れてるよな。でもその顔俺は嫌いだから止めてくれ」
「力を与えた恩人に対しての言葉ではありませんね。それじゃあ貴方はどんな顔が好みなんですか?」
「あん? 男がグッとくる女の表情つったら笑顔以外に何が有るんだよ」
「えっ? そのじゃあ貴方は私の笑顔がみたいの?」
「当たり前だろ。美人なんだから笑ってればいいんだよ」
「そう……」
「急にシャイになってどうしたんだよ。そういうのは男相手に話すのに慣れてない奴の行動だぜ」
「だって最強を与えた中に、私に会う権利なんて言った人居なかったんだもん」
「女神さん、口調が崩れ過ぎだ。それに今度からは俺が会いに来るから心配すんな」
だもん、ってなんだよ。
可愛いな、おい。
「別に頼んでないわよ」
「それでも会いに来るって言ってんだ」
「そうなの……」
寝ると俺の意思に関係なくきちまうんだからしょうがねーだろ。
「なあ、これって俺の睡眠時間削られてんのか?」
「え? あ、そっか。ごめんなさい」
「何で女神さんが謝るんだよ。心配すんな、不眠不休スキル取ってるから。後、笑えっつったろ」
「あ、うん!!」
女神の笑顔を最後に俺は目を覚ました。
不眠不休って確か500ポイントだったよな。
張り切ってレベル上げすっか。
昨日はそのまま寝たので、着替える必要もなくギルドへ向かった。
まあ替えの服持ってないだけなんだが。
「あ、シル様~」
昨日の受付が手を振ってこっちこっちとやっている。
なんかいい依頼でも紹介してくれんのかな。
何も考えずに受付に向かった。
「あの、昨日の成果が認められてEランクに昇格しましたよ。ギルドカードも更新されているはずです」
「そっか。それより昨日より強い魔物が居るとこ知らない?」
「え? もっと驚いて下さいよ。私は昨日あんなにされちゃったのに」
「その言い方は語弊を含みまくるから止めろ。そんで、なんか無い?」
レベルを上げたいんだよ。
なんでもいいから。
一回約束した事を破るなんて断じてありえん。
それなら俺は不眠で死を選ぶ。
ああ、こんな思考に陥るのも胆力のスキルが悪いんだ。
ま、何にも問題無いけどな。
「そうですね。オーガ以上となりますと本当はB級推奨なんですが王都の中心から地下に伸びているヒュドラの迷宮はどうでしょうか?」
「迷宮? ダンジョンか!?」
「はい、そうです。基本的に迷宮の魔物は討伐部位を集める事は出来ませんが、魔物のドロップ品はどれも常時依頼の魔物よりも稼げます」
「よし、それにしよう。ダンジョンに入るのに必要な物とかあるのか」
「いえ、王都の迷宮はギルドカードさえ持っていれば誰でも入る事が出来ます」
「よしなら今から行ってくる」
「ちょっと待ってください」
「どうかしたか?」
「私ミーナと言います。そう呼んで下さい」
「ああ、解ったミーナ。それじゃあ行ってくる」
「はい」
ギルドを出て走りだす。
そして方向が解らずギルドに戻ってくる。
馬鹿である。
自分の事だけど。
気持ち高ぶり過ぎだな。
「ミーナさん、ちょっと迷宮までの道教えてくんない?」
「もう、解りました!」
王都の地図を開いて教えてくれた。
それはもうお爺ちゃんに教えるかの如く丁寧だった。
ホントすいません。
「ありがとう」
「はい、行ってらっしゃいませ」
今度こそ迷宮に着いた。
ギルドカードを入り口に居た兵士風の奴に見せたら簡単に通る事が出来た。
迷宮の中は暗かった。
持っててよかった光魔法である。
魔法はスキルのおかげで本来の四分の一のMPで使う事が出来る。
ライトの魔法は本来消費魔力十なので四捨五入の三しかMPを使わない。
それに高コスト過ぎる転移魔法もこれで使える。
戻るときは一瞬である。
最初に出現した魔物は黒い犬の魔物だった。
鑑定結果はシャドウウルフ。
まず名前がかっこいい。
平均ステータスもオーガを上回り400だ。
迷宮は暗く、俺は光魔法のせいで光っている。
草原では先に敵を見つける事が出来たからこそ弓のヘッドショットが有効だった。
だが、それはもう出来ない。
シャドウウルフは俺を知覚している。
「ファイヤアロー!」
火炎魔法の中でも飛び切り威力の低い攻撃を選んだ。
俺の魔力は2100。
そもそもの地力が違い過ぎる。
シャドウウルフは一本のツメを残して消えた。
それをストレージ入れた俺は職業を入れ替える事にした。
職業にもレベルがある、それを上昇させる事でもスキルポイントを得る事が出来るのだ。
ならレベル20まで上げてしまった狙撃手よりも、レベル0の状態の他の職業にした方が早く500ポイント溜める事が出来る。
俺は魔法使いに職業を変更した。
『魔法使いレベル1ボーナス。初級の杖を獲得』
『魔法使いレベル1ボーナス。スキル〈火魔法〉を獲得』
『スキル〈火炎魔法〉を感知。〈火魔法〉と相乗させ〈獄炎魔法〉へ昇格』
第二段階の火炎魔法スキルを予め獲得しておいたのはこのためだ。
例えば称号で獲得するスキルを予め持っていた場合などはスキルが相乗効果を発揮し第二段階のスキルへ昇格する。
取り敢えず一段階上昇するのだ。
それのおかげで500ポイント必要な獄炎魔法を100ポイントで入手出来てしまった。
計算通りである。
進んで行くと更に強力そうな魔物がエンカウントした。
鑑定結果はヘルハウンド。
平均ステータスは700で多くのスキルを所持していた。
「ヘルファイヤ!」
獄炎魔法でも中の中くらいの威力の魔法を放った。
黒い炎は扇状に飛んで行き、ヘルハウンドに直撃。
ヘルハウンドは力尽きた。
狙撃手のレベルが無くなったが、それでも魔力値は1000を越える。
初級の杖も装備している事だし。
MPもまだまだ余裕だ。
このまま奥へ進んでしまおう。
道中出てくる魔物は犬とか狼ばかりだった。
平均ステータスは三桁後半なので、基本的には獄炎魔法一発で終わる。
『称号〈ダンジョンシーカー〉を獲得』
『スキル〈サーチ〉を獲得』
よしよしいい感じだ。
マップを見て迷わず進んでいるのだが、この迷宮がヒュドラの迷宮と呼ばれる意味がようやく解って来た。
ヒュドラの首の様に通路が何本も伸びているのだ。
それも殆どが行き止まり。
正解を選ぶには俺のマップのような能力が不可欠だろう。
ま、俺には関係ない。
臆さず進まさせて貰おう。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
35
-
-
124
-
-
140
-
-
310
-
-
0
-
-
381
-
-
141
-
-
23252
-
-
107
コメント