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戦闘狂の迷宮攻略 〜早熟と模倣でお前のスキルは俺のもの〜

水色の山葵

それぞれの意志



 僕は相当久しぶりに高校へ来ていた。ダンジョン探索にのめり込み、保護者と言う保護者も存在しない僕の行動を制限する者が居ない現状を最大限に利用し、学校をほぼ不登校状態でダンジョン探索を行っていた。
 普通ならどう考えても出席日数が足りないくらいには休んでいるが、テストの点数がいい事と、国から直々に許可をもらっている事もあってた僕は留年する事なく卒業を迎えられそうだ。


「なあ徹、大丈夫か? 最近全く学校に来てなかったじゃんか、何か手伝える事があるなら手伝うぜ?」


 僕にだって友人と呼べる奴の一人二人くらいは居る。けど、こいつらは僕の人格の事も知らなければ過去も今も把握していない友人だ。
 最低限、孤高で居る事のデメリットを消す程度の存在でしかない。


 そんな風に考えて作った友人も、別の世界へ旅立ってかなりの月日会えなくなると思えば大切な物だったような気もする。


「大丈夫だよ。ありがとう」


「そうか? ならいいけどよ」


 それ以上は彼らも深く聞いてくる事はしなかった。その程度の仲、いやあれは僕に気を使ってくれているというのが正しいだろう。


「徹さん! ちょっとお話いいですか?」


 三年生の教室は他の学年とは違う校舎にあるはずなのだが、態々昼休みにこの教室まで来たのは神道翔だった。
 勇者と言う異名で知られるワールドランキング3位の探索者。パーティー単位も個人単位も3位、つまりダンジョンという問題に置いて3番目に期待されている人物である。
 同じ学校に通っている事は知っていたが、まさか話しかけてくるとは思わなかったな。そもそもメールアドレス教えたのに直に会いに来るとは。


「え、あれ神道君じゃない!?」


 教室内や廊下に居た生徒、主に女子生徒が目立つ金髪と僕を呼ぶその声に反応して声を上げる。まさにピンク色の声とでも表現できるような声。
 神道翔と椎名寧はこの学校ではかなりの有名人だ。そもそも現役で探索者ランキングに乗っている探索者は1位の不明以外は身元が明らかになっている。
 人気商売とまでは言わないが、それに近いというか、少なくとも今世界で最も注目されている職種であり、その職種において一早く成功を手にした人物として知らない者は殆どいないほどの有名人だ。
 それに加えて二人は容姿良く性格良くで人気も高い。有名にならないはずがないのだ。


 握手やら写真やらサインやら、まるでアイドルだ。
 というか、君が僕に話しかけると僕が目立つでしょ。不登校続けてたやつが人類で最も注目されてる奴に話しかけられるの意味わからんでしょ。


「徹さーん!」


「あー、なに神道君」


 折れた。と言うか僕が折れるまで呼び続けるつもりだっただろあれ。


「一緒にお昼どうですか?」


「うんいいよ」


 というかこのまま教室で昼食食べ始めたら質問攻めにされる未来が容易に想像できる。
 それはすごくめんどくさい。




 どうやら昼食は屋上で取るようだ。確か屋上はカギが掛かってたはずだけど。
 と考えているとポケットから鍵を出して、屋上の扉を開けてしまった。


「校長先生に特別に貸して貰ってるんです」


 うん、一人の生徒をこんなに贔屓していいのだろうか。


 屋上に出ると、そこには僕達を除いて3人の生徒が居た。
 工藤伸、水島姫野、雅花蓮、翔君のパーティーメンバーだった。


「今回お昼に誘ったのは特定の理由がある訳じゃないんですけど、情報交換でも出来たらなと思ってですね」


「なるほど、いいよ。一緒に食べようか」


「ありがとうございます!」


 翔君は本当に後輩って感じだ。年下の子とここまで仲良くなったのは何気に初かもしれない。


 それから、僕はひとしきり彼らと話しこんだ。


 工藤伸は、剣術の道場の跡取りらしい。これだけ聞くと僕と同じような境遇の様だ。しかし、親が死んでいる訳でもなく今も毎日厳しい稽古を親父から受けていると言っていた。


「二人とも大切にしなよ」


「うん? 親父とおふくろの事か? あの二人は俺が守ってやるほど柔じゃねえよ」


 彼を羨ましいとは思わない。それが彼の人生で、僕の人生と彼の人生が違うのは当たり前のことだから。
 けど、だからこそ彼にはあいつと同じ悩みを抱いてほしくないと思った。父親から受け継ぐことができず、がむしゃらに藻掻いたあいつと同じようには。


 水島姫野はおっとりとした女の子だ。元気で明るい子で、それでいてこの中で一番友達の事を大切に思っているのだろうと感じる。いつも皆の事を見て、その状態を把握する事に長けている。
 だからこそ、彼女はこのパーティーに居なければならない存在だろう。彼女が居なくなったとすればこのパーティーはその連携を失ってしまう。


「君はあの三人の事が本当に大切なんだね」


「え、勿論ですよ。良く分かりますね。……私が中学生の時、私の友人が自殺したんです。だからもう二度とあんな思いはしたくないから、私はもう絶対に大切な人を失いたくないんです」


 彼女が冒険者採用試験を受けたのはそれが理由だったらしい。どんな形でも、彼らが死んでしまう事が絶対に許容できない。その表れが、気弱な彼女に勇気を与えた。
 ゲームとかで、回復を役割にするキャラクターの事をヒーラーと呼んだりする。大抵のゲームではヒーラーは味方の状態を常に把握し続けなければならない。それがこの現実にどれだけ重なるのかは正直分からないが、彼女にはその素質があると思う。そして精神的な意味でも彼女は翔君と同じようにパーティーの主柱になり得るだろう。




 雅花蓮は寧さんと同じように一ノ瀬の分家に当たる家の出身らしい。分家本家を合わせて一番の才能を持つのは誰がどう見ても寧さんだった。しかし、それに隠れるように雅花蓮には高い魔法適正があった。
 仮に寧さんの次に才能があるのは誰かと問われれば、答えを出すのにそれほど苦労はしないだろう。
 魔法習熟速度及び、習得確率向上、全属性習得可能、それが彼女の持つユニークスキルの持つ力だった。
 こと魔法において、彼女は安倍晴明さえ越える才能を持つ可能性がある。勿論、安倍晴明が聖典を持っていなければの話ではあるのだが。


「ありがとう……」


「ん? なんの感謝?」


「あの時、貴方が魔法に対してヒントをくれた。あんたなんかのいう事を聞くのは癪だったけど、貴方の言葉を信じて属性を材料に公式を組むというやり方で私の魔法はあり得ない位強くなったわ」


「なるほど、気にしなくていいよ。どうせ、僕が何も言わなかったとしても君はこれくらいの事は簡単にできたさ」


 雅花蓮の魔法関連のスキルはその全てがスキルレベル6を超えており、さらに言えば前は見えなかった魔法属性が幾つも追加されていた。
 いくらユニークスキルがあるとは言っても、一朝一夕でこれだけ熟達するには相当な努力が必要だろう。それこそ僕のヒントなんて関係なくなるくらいの。






 神道翔は、誰よりも正しくあろうと努力している。それがどんな相手でも手を指し伸ばし、それがどれだけ強い相手でも立ち向かう。その在り方は正しく勇者ヒーローなのだろう。
 彼はきっと、僕が立ちふさがったとしても自身が正しく思う正義のために突き進むだろう。それほどまでに彼の感情は本物で、それゆえに彼は勇者と呼ばれ、だからこそ彼がいるこのメンバーは絶対的に崩れない。


「君は強いと僕は思うよ。それこそ大切な、目の前の景色を守り切れるくらいには」


「それじゃ嫌なんですよ。よく、自分はただ目の届く範囲を守れればそれでいいと考えている人が居て、それ以上を望めるのは恵まれた力のある存在だけで、困っている人全員を助けたいだなんて驕りが通るほどこの世界は甘くないという人がいる。けど、僕はそれじゃ嫌なんです。全員を救いたい、誰も不幸に合わせたくない。限りない限りまで、全ての人間を救いたい。自分の見える景色以上を望むのは、こんなのはエゴですか?」


「じゃあ、もしもどちらかしか守れないとしたら、君はどうする?」


「決まってるじゃないですか。両方助けますよ。僕は絶望する全ての人間を救いたい」


 全く、君ほど勇者って言葉が似あう人間はこの先どこまでも生まれなそうだな。


「そうか。確かに、君のその考えはエゴなのかもしれない。けど、自分の限界を勝手に決めて諦める人間よりも、僕は君の方がよっぽど好感を持てる。けどきっと、その志を通すのは何よりも大変だ。君はそれを叶えたいと望むのなら、君に待ち受ける苦難の道は、目の前の景色を守る事の何倍も難しいだろう。それでも君はそれをできると信じれるかい?」


「はい! 当たり前です!」


 即答か。認めるよ、僕は君を子供の様に思っていた。実現できない夢を掲げ、それができなければ喚き散らし誰かのせいにするような子供だと思っていたのかもしれない。
 けど、どうやら君は本気で、誰よりも愚直な感情で動いているんだね。


「諦めんなよ? てめぇのその感情は『俺』たちとは違っていても俺たちと同じかそれ以上に強い思いなんだからよ」


「ありがとうございます!」


 生まれて初めてかもしれない。俺たちと同等以上に強い渇望を持った人間を見るのは。


「もしかしたら。俺を越えるのはお前なのかもな」

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