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戦闘狂の迷宮攻略 〜早熟と模倣でお前のスキルは俺のもの〜

水色の山葵

最強の剣士



 徹さんが気絶して30分ほどが経過した。王女は取り戻しましたが、セバスさんの使ったスキルの威力にこちらは四人がかりだというのに押されています。
 身体能力も魔力量も恐らく徹さんを超えているであろう、その戦闘能力は私のユニークスキルからあふれる黄金の魔力によっても消滅することがない。
 むしろ黄金の魔力の方が弾かれてしまっている。どうやら、あまりにも魔力量に差がある存在には黄金の魔力は機能しないようだ。まさか、この男が一の権能を持っているというわけではないだろう。




 セバス・レイビエス
 レベル35


 ユニークスキル
 天道(加護)
 修羅道(加護)
 人間道(加護)


 Pスキル
 短剣術3
 暗殺術4
 近接格闘2
 投擲術2
 闇魔法2
 魔力操作2
 魔力集中3


 Aスキル
 アサシンエッジⅠ
 アクセルムーブⅡ
 ダークバレットⅠ
 マインドアイⅢ
 ブラックローブIV






 セバスさんの身体は黒く禍々しいオーラに包まれている。それを形成しているのは恐らくブラックローブというスキルなのだろう。
 それのせいで黄金の魔力が意味をなさなくなっている。


「徹さん……」


 徹さんが倒れている部屋へ視線を向かわせる。心配と期待を込めて。
 こんな時まであの人は私に期待を抱かせるのか。本当に、あの人がいるだけで私は勇気を手に入れられる。徹さんに期待するのは止めよう。それじゃあいつまでたっても私はこのままだ。


 勝てなくても一矢報いる。そう心に決め私は持てる全ての力を使い自己強化を行う。


(僕も力を貸そう)


 鏡花水月、剛腕剛力、魔力解放、電光石火。
 あの人に近づくために手に入れた私の力。付与術。私が追いかけるあの人に近づくために。
 複製再現。


 影魔法、シャドウソード。今の私はあの人と同じことができる。
 両腕の甲から伸びた二本の影の剣を闇の巨人へ向ける。


「先ほどまでとは少し違うという事でしょうか」


「ええ、今の私は世界で二番目に強い」


 アクセルダブルスラッシュ起動!


 その二本の影の剣がセバスさんへ迫る。全魔力を解放する事で、数分間だけ消費魔力を零にする魔力解放があれば、複製再現で付与した徹さんと同じスキルを徹さんと同じように無尽蔵に連鎖させ続ける事が出来る。
 付与術の中でも特に威力の高い術を同時に6つ展開しているこの状態は魔力的にも身体的にも今までの術とは比べ物にならないほどの負荷を受けている。
 もって一分。


 シャドウソードの連撃は、その膨れ上がった両腕を切り付けるが、その肉が立ち切れる事はなくスーっと赤い切り傷ができる程度だった。


「ほう。今の私の身体に傷をつけるとは。確かに今までとは違うようですね」


 事実上、アーサスさん黛さんケイオス君の三人は戦力外だ。気絶はしていないようだが、ケイオス君とアーサスさんは倒れている。隆起した筋肉による拳を反応する事も出来ずに受けたアーサスさんは間違いなく骨が砕けているだろう。すぐに手当てしなければ危ない程に。
 ケイオス君も小柄な体格に拳が突き刺さり、ユニークスキルで創り出していた鎧のような物も砕け散っている。
 黛さんは流石の耐久力で地に足をつける程度で耐えている。後一撃くらいなら耐えられそうだが、どうやら黛さんはこれと言った攻撃手段を持っていないようだった。


 エアジャンプ。


 跳躍から、更に上へ空を蹴って跳躍する。そこから放たれるのは一刀両断の剣。


「ブッタギリ!」


「フン!」


 魔力集中。それは魔力を身体の一部分に集中させる事で、その部分での攻撃力や防御力を飛躍的に向上させる技術。
 私はそれをシャドウソードに使う事で、切れ味と威力を上げた。
 しかし、敵もそれを使えるようだ。両腕に魔力を込め、上から来る私の剣と正面から打ち合った。


 キィィィィイィン!!


 凡そ皮膚から出る音とはかけ離れた音が広がり、私の刃は完全に弾かれた。その勢いのまま、振られた腕
によって私は壁まで一気に吹き飛ぶ。
 咄嗟に魔力を背中に集め防御力を上げるが、それでもかなりのダメージを受けた。
 内臓が、血肉が、全身の骨が悲鳴を上げる。それでも私は立ち上がらなければならない。何故なら……


「私は! あの人の隣に立てなければいけないか……ら」


 立ち上がったはずなのに、目と鼻の先に見えるのは地面と敵の靴だけ。


「どうやら、その強化は私のスキルとは違って時間制限があったようですね」


 そんな、まだ一分も経っていないはず。いや、今のでダメージを受けすぎた。身体がもうついていかない。


「ああ!!」


 地面を殴りつける。私の拳から真っ赤な血があふれ出てくる。


 動いてよ!


「もう大丈夫だ。良く耐えたね」


 意識が消えていく。身体も精神も私は未熟。それを思い知らせてくるような無力感。私が最後に見たのは、いつも見ていたあの人の背中。
 ああ、私は結局、またあの人に救われるのか。


「まだ、終わって、ない! 私は、背中を見たいんじゃない。私は隣に立ちたいの!」


(ああ、そうだね。君ならそういうと思ったよ。だから、僕は君にそれを教えたんだ。今の君なら使えるはずだよ。付与術の最終点を)


人格付与パーソナリティエンチャント! 安倍晴明、私に力を貸しなさい!」


 聖典が開く。今まで、私は聖典の能力を黄金の魔力を発するための媒体としてしか使用できなかった。けど、人格付与を発動させ、安倍晴明の力を完全に掌握した今の私なら、その本来の能力を発動させられる。


「エクスヒール。リジェネーション。マナブースト」


 体力回復。身体修復。魔力最大値上昇。
 私は事実上、この世界で書物となった全ての魔術を扱える。


「徹さん。私も戦えます」


 その人の隣に移動し、私は横顔を見ながら告げる。


「うん、一緒に戦おうか。寧さん」


「はい」


 え? 何か違和感が。いや、今はそんな事を言っている場合ではない。目の前の敵を倒さなければ。


「徹さん、今目の前にいるあの人はセバスさんです。しかし何かのスキルによって魔力も身体能力も強力になっています」


「ああ、見れば解るよ。僕が前衛をするから、後ろから支援や攻撃をしてほしい。頼める?」


「分かりました」


「それじゃあ行くよ」


 そう言った瞬間、徹さんの姿が掻き消えた。速いとかそういう話じゃない。視界から一瞬にして完全に消え去った。
 私の視線が外されたように。


 それはあの怪物にとっても同じなようで、急に目の前に現れた徹さんにギョッとなっている。
 すぐさま、セバスさんは拳を振りぬいた。


 え、徹さんって今私はそう言った?


 おかしい、魔法戦ならともかく接近戦闘で強敵相手に徹君が出てこないなんてありえない。一体どういう事。
 ただ、私の心配は杞憂に終わる。徹さんは、予めその攻撃が来るのが解っていたかのように拳を受け流した。


「何故、こんなに速い!?」


「お前がおせぇんだよ」


 その雰囲気が変わる。間違いない、徹君が出てきた。という事は、これからが本気?
 それは舞だった。舞踏と呼ぶにふさわしいその動きに、セバスさんは全くと言っていい程に動きを捉えられていなかった。
 いや、それは正しくない。連撃、一撃と一撃の間が極限まで短い。最小の動きで相手に反撃する隙を与えない速度で攻撃し続ける。


 一切の反撃を許さない。完璧な連続剣。


「私だって」


 ハイスピード、ストレングスアップ。
 攻撃速度と攻撃力を上げる。
 氷結雨。氷の雨を空中にとどまらせ、それを少しずつ、投擲していく。徹さんの対処すらできていない今の状態で、私の魔法を受けきれる余力はないはず。


「ナイスだ寧」


「小賢しいぃぃぃ!!!」


 その言葉は私がずっと欲していた言葉だった。徹君は嘘を吐かない。彼はそんな事をする必要が無い位に強いから。
 だから、その言葉は私を満たしてくれる。


「徹君、止めを」


「ああ」


 徹君の剣に黄金の光が宿る。セバスさんはそれを見た瞬間腕に魔力を集め、腕で前からの攻撃を防ごうとする。


「真・天照!」


 その一刀は、どこまでも伸びる一刀だった。迷宮の壁さえ割って、セバスさんを切り裂く。
 完膚なきまでに。腕の防御など関係ないという様に。


「なぜだ。我が王の力が敗れるはずが……」


 そう言ってセバスさんは倒れた。黄金の光は、セバスさんに致命傷を与えることなく気絶をいう形で無力化していた。相手を切らない剣の一刀。私にはどうやったのか見当もつかない。


「やりましたね!」


「来るな!」


 駆け寄ろうとすると瞬間、徹さんが静止の声を上げた。まだ戦闘が終わっていない?
 いや、セバスさんは完全に無力化したはず。ならどうして。
 その答えはセバスさんの身体にあった。身体から黒い靄のような物が出てきて、人型を創り出した。


「きゃはは。まっさか六道スキルを三つも宿したこの身体が敗北するなんてなびっくり仰天だよ。なかなかやるじゃんあんたたち」


 靄は少女を創り出した。ピンク色の髪に数か所水色の髪が混ざったギャル風の女性。
 それがセバスさんの傍らに現れた。


「誰だお前?」


「うーん、世界一位のお前には特別に教えてあげる。私は悪魔よ。まあ、別にこいつに召喚されたわけじゃないけどね。私の目的はこいつの、スキルっ」


 そう言って彼女はセバスさんの心臓を突き破った。


「そんじゃあね。ああ、あんたらは強いけど私の主人ほどじゃないからあんまり調子に乗らないでね。目に余るようだと殺しちゃうよ?」


 そう言い残し彼女の身体は紫色の煙となって消えていった。


「全く、何だってんだよ。はあ、こういうのは相棒に任せるとするか」


 あの少女の事は気になりますが、今は徹さんが帰ってきた事を喜ぶことにします。

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