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戦闘狂の迷宮攻略 〜早熟と模倣でお前のスキルは俺のもの〜

水色の山葵

スタンピード



「こちらパリからの生中継です。現在パリではダンジョンから現れたと思われる生物たちによって一般市民にまで被害が及ぼうとしています」


 表彰式から数日、僕が朝何気なくテレビをつけると、そこには圧倒的な物量のダンジョン生物たちがフランスの街に向かって進軍する姿が映し出されていた。その映像は空撮で地上の様子がよくわかる。だから、こそ警察官によって討伐されている数よりもフランスのダンジョン【凱旋門】から現れるモンスターの数のほうが勝っている事が解る。


「モンスターがどんどん溢れ出てきます。モンスターの姿は様々ですが、非常の凶暴である事が伺えます。既に警察官による鎮圧は開始されていますが、モンスターの数が減っていく様子はありません。どうなってしまうのでしょうか」


 キャスターが顔面蒼白の様子で、伝えている。逃げ惑う人々、食い殺される人々、阿鼻叫喚という言葉がこれほどまでに相応しい状況を現代で実行する事は不可能だとさえ思える。
 しかし、それは紛れもなく現実。だからこそ、そんなファンタジーが現実になった今だからこそ、それに対応するための存在が表に出てくる必要がある。日本にもいたのだ、大陸の国がそれを持っていないはずもない。


「あれは何でしょうか! 全身に鎧を纏った騎士のような一団が現れました。その数は凡そ200と言ったところでしょうか!」


 さあ、出てきたようだ。あれがフランスの退魔師。異形と戦うための軍団。日本にもあるのだからフランスにない道理はない。


 キャスターの男は触れてはいなかったが、その甲冑の騎士たちの先頭には3人の装いの異なった者達がいた。甲冑の騎士たちからはこの状況に全く動じた気配はない。そしてその空気を創り出しているのは間違いなく先頭の3人。彼らの存在は他の騎士たちにとって絶対的な何かなのだろう。


「騎士たちが次々に怪物たちを倒しています! しかも、なんでしょうあれは……魔法……?」


 リポーターの言葉は正しい。騎士たちは炎や雷を手から発生させ怪物たちを屠っている。その戦力は今のところ圧倒的だ。


 僕のポケットに入ったスマホが震えた。すぐに画面を見ると、そこには本郷悟の文字が光っていた。


「もしもし、どうかされましたか?」


『ああ、ニュースは見たかね?』


「パリの物なら見ました」


『その件でフランスの騎士が日本に来ている。君に話があるそうだ』


「このタイミングで、ですか? フランスはこの事態を想定していたという事でしょうか?」


 フランスが僕、つまり不明アンノウンの存在を知っている事は解る。日本の同盟国間で共有しているワールドレコードを見れば不明アンノウンという冒険者の存在と、所属国が解る。だからその事は知っても不思議ではない。
 しかし、事件が起きてから日本に来るまでが早すぎる。起きたのは今日の朝、フランス時間では深夜だ。それが起こってから日本に来たと言うのは幾ら何でも速すぎる。


『分からない。日本政府も彼らの来訪には非常に困惑している。彼らが言うには自らは対異形のスペシャリストだという。だが、何故彼らが君を訪ねるのかが分からない。今回の事件に協力してほしいと言ってはいるが、それが真実だとは限らない。正直、私には自国の問題を日本に頼る意味が分からない』


「なるほど」


『取り合えず、私は警察庁のダンジョン対策課にいるから君も来てくれ』


「了解しました」


 本郷さんがここまで焦っているのは初めてだ。何が正解か迷っているかのようだ。あの人でも状況を読めていないという事は、相手方もかなり頭が切れるという事だろう。


 急いで警察庁へ向かう。




 ダンジョン対策課の長官室。つまり、それは隊長のための部屋なのだが、今はそれより地位の高い人間が殆どだった。
 部屋にいる人物が合計6人。僕と寧さん。そして外務大臣とダンジョン対策機関隊長、そしてフランスからの来訪者、少年と呼べるほど小柄な金髪の男と、日本人よりも大和撫子という言葉が似合いそうな黒髪の女性。


「お久しぶりです!」


「久しぶりって、この前表彰式であったと思うんだけど」


「一週間も前ですよそれ。しかも徹さんダンジョン攻略ばかりで殆ど学校に来ないじゃないですか」


「ん? 何か僕に伝えたい事でもあった?」


「そういう事じゃありませんよ」


 寧さんだって日本のダンジョンを攻略しているだろうに。ワールドレコードを見る限り到達階層がすごい勢いで進んでいると思うんだが。よく学業と両立できるものだ。


「君が不明アンノウン君、なのかな?」


 挨拶を済ませると金髪の少年が僕に問いかけてきた。それを僕は頷き返す。


「そうです」


 黒髪の女は少年の後ろで控えている。まるで従者のようだ。


「君にお願いがあって僕達ははるばる日本までやってきたんだ」


 実に流暢に彼は日本語を話す。見た目から察する年齢よりも成熟した精神を持っているようだ。


「まずは内容を教えてほしい」


「もっともだね。知っての通りフランスのダンジョンからモンスターが外へ出て街中で暴れている。騎士が対処に当たってはいるがモンスターの勢いは収まる所を知らない。それどころか増えているぐらいさ。だから、その元凶を止めなければならない。そして、原因の解明、解決には現在人類が保有する最高戦力である不明アンノウンの協力を要請したい」


「原因について心当たりはあるのですか?」


「現状何もわかっていないというのが見解だね。正直、今の僕らだけじゃどれだけ時間がかかるか分からない。騎士たちも戦ってはいるが持ちこたえているだけじゃいずれ限界が来る」


「早期解決のためだと?」


「ああ、その通りだ」


 何を考えているか分からない笑みで少年は笑う。表情だけを読み取ればそれは純粋無垢な笑みという言葉がピッタリな物だが、フランス政府からの来客という政治的な関与が裏があるように思わせる。


「勿論、報酬は用意するつもりだ。それにダンジョンの事で友好的な関係を築くのも悪くないんじゃないかな?」


 今度は本郷悟に話しかける。それは日本への提案なのだろう。
 確かに彼が言っている事は正しいのかもしれない。しかし、それでは日本国に都合が良すぎる。自国の問題を他国に協力して貰う時点で貸しを作るようなものだ。そんな事をするくらいなら自分達で解決する方がいいだろう。
 それほどまでにフランスは追い詰められているとも思えない。


 しかし……


不明アンノウン、出来れば私は君に出動してほしい」


 僕も同意見だ。相手が何を考えているか分からない。だからこそ放置しておく方が何倍も愚策だと思える。


「分かりました」


 僕はフランス騎士と共に、ダンジョンを攻略する事に決めた。

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