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戦闘狂の迷宮攻略 〜早熟と模倣でお前のスキルは俺のもの〜

水色の山葵

知と武



 それで、あのザマは何の冗談だ?


 僕に聞くなよ。ま、大かた目の前の成功に釣られたってところじゃないか。




 俺の目の前に広がる光景は俺の今までの苦労を水の泡にしてしまうような何かだった。
 銃は効果なし。銃で貫ける高度を鬼人の肌が越えているから。嬢ちゃんとやらの魔法じみた退魔能力も効果は薄い。


 連続で詠唱を変化させながら使っているから死者が出ていないだけ、仮に魔力切れがあるのならそれが起こった時点で詰みだ。




 それで、どうすんだ相棒? まさか見て見ぬふりするのかい?


 ……勝てる見込みは?


 変わらねえ、5割だ。


 そうか……


 考えてる時間はねえぜ、あの大部隊の内半分以上が一撃ノックアウトで戦闘不能状態だ。それに事実上あの嬢ちゃんの肉壁以外の仕事はできてねえ、お前が悩んでる内に嬢ちゃんが死ぬぜ?


 分かった。助けよう。


 ああ、お前ならそういうと思ったぜ。それとなあんな奴に負ける訳ねえだろ。




 そう言って俺は突っ走る。大きな門の中へと。




 おい、今のはどういう意味だ? お前僕に嘘を吐いたのか?


 そんな訳ねえだろ、5割ってのは俺が一人で戦ったらって話だ。


 なるほど、あの娘と強力すれば勝てるという意味か?


 はあ、馬鹿かお前は。俺が言ってるのはお前の事だよ。


 !!




 さあ、必要な情報は全部そろっただろ。後はお前が考えろ。俺はただ戦うだけだ、だから勝つ方法はお前が見つけろ。
 俺とお前が分かれている理由は単純な話なんだ。
 単純に、その方が強いから。


「行くぜ、相棒」


 ははは、面白い話だ。けど、勘違いするなよ。僕がお前を使うんだ。


 それでこそだ。






「トルネードダッシュ!! か~ら~の、アクセルスラッシュ!!」


 リモートアームズ起動。風の魔弾、多重展開。僕もこれで戦える。


 短剣が鬼人の皮膚を傷つけることはない。しかしその硬度を以てしても威力を殺しきれるかは別問題。鬼人は数m後ずさる。しかし、それだけでは終わらない。風の魔弾による追撃によって壁まで吹き飛んでいく。
 俺は部屋の中を見渡す。10人以上の軽傷者、生きてはいるが重傷の者が数名。戦闘不能が計16名。戦える奴は散開中。鬼人の身体能力を以てすれば一振りで三十人を一気に吹き飛ばすことができる。それを避けるためのこの布陣だ。あの退魔っ子の周りには3人、護衛役だろう。こいつらもあのこがやられれば終わるって理解してるのだろう。


 そしてみな一様に同じような表情を浮かべている。まあそりゃいきなりの乱入者に驚かい方がおかしいわけだが、そいつはプロとしてはどうなんだ?


「ほらまだ終わってねえぞてめえら。俺が協力してやるからさっさと逃げやがれ!」


 こいつらにしてみれば希望のはずだが、それにしても顔色が悪い。まるで今の言葉では何の解決にもならないかのような。何か違和感がある。




 だから僕は嫌だったんだ。部隊が半壊しても撤退を選択しない部隊なんておかしいだろう。




 相棒の言葉で理解する。なるほど、


「無理だ。この部屋からは出ることができないんだよ!」


 逃げることはできないってことかよ。
 まあ、ボス戦で逃げるなんてコマンドがあるゲームの方が珍しいわな。
 扉を見てみれば入るときは何もなかったはずの入り口に半透明の青い膜のような物が発生していた。
 多分あれのせいで出れないのだろう。


「そうかい、隊長さん。じゃあこいつを倒す、協力してくれ」


「はっ、誰だか知らねえがあいつは正真正銘の化け物だ。銃も爆弾も効果無し、今の装備じゃこいつには勝てねえぞ」


「今そいつは俺の攻撃で吹き飛んで行ったわけだが? それに、逃げられないならやるしかないだろ」


 そう、今俺たちは選べるような選択肢を持っていない。死ぬか殺すかだ。
 この隊長だってそれは解っていたのだろう。目つきが変わった。


「わかった俺たちはお前と協力しよう」


 物分かりのいい奴は好きだぜ。ただ、現実を理解していても精神が追い付かない奴だっている。
 ダンジョンだなんだと言ってもこの場所は殺し合いをする場所だ。いくらゲーム的だなんだと言っても死ぬ直前のモンスターの顔は見るだけで人の精神を蝕むだろう。
 共感はしないが理解はしよう。


「理を今一度読み解きあるべき形へ戻りたまえ。理を今一度読み解きあるべき形へ戻りたまえ。理を今一度読み解きあるべき形へ戻りたまえ。理を今一度読み解きあるべき形へ戻りたまえ。理を今一度読み解きあるべき形へ戻りたまえ」


 だから恐怖に怯えるお前に戦えなんて言わねえよ。


「お前はそこで見てな」


 鬼人がこちらへ歩みを進めてくる。走っているわけでもなく、ゆっくりと歩いているだけなのにその威圧感はこの場にいる全ての人間に恐怖を植え付ける程の物だった。


 おもしれえ。確に今までの敵とは格が違う。


「おい、作戦はどうする?」


「まずは怪我人を安全な場所に移な、その時間は俺が稼ぐ」


「なっ! そんな事っ……」


 ダブルドライブ。それは一歩を二倍にする効果を二歩まで発動させる。一気に距離を詰める。
 このまま次のスキルへつなげる。アクセルスラッシュ!
 アクセルスラッシュは自分のスピードによって攻撃力が変化する技だ。更にこのスキル自体に加速効果が発生する。
 やはり刃が鬼人の肉を裂く事はないが、それでもダメージはあるはず。数m後ろへずらすことには成功した。ただ、今度は反撃ターンだ。


 鬼人の武器は刀、いや大太刀とでも呼べる両手剣だった。それを上段から振り下ろすだけで人なんて軽々しく吹き飛ばすほどの威力を持っていた。
 チッ、当たってもないのにこの威力って。受け身は取れるが、ガードも回避も間に合わない。


 次の攻撃が来る。レベル7まで上がった剣術、体術、武術の身体操作性能を以ってすれば合わせる事等容易い事。
 クリティカルカウンター。それは相手の攻撃を弾き、カウンターとして弱点を攻撃する技。この技の優秀な点は防御タイミングさえ合わせる事ができれば後は身体が自動的に相手の弱点を攻撃する。そしてこの場合の弱点とは相手が防御し辛い場所だ。


 短剣二本で受け流して鬼人の腹を蹴り飛ばした。


「終わったぞ!!」


 隊長の声と共に憤怒を宿した鬼人が攻撃を仕掛けてくる。先ほどまでの風圧とは別の攻撃、その斬撃には斬るという能力が備わっている事が分かるほどに研ぎ澄まされた斬撃だった。


「ま、身体能力だけじゃねえと思ってたよ」


 シャドウステップ。一旦部隊の負傷者が集まる場所へ移動する。




 これくらいでよかったのか相棒?


 ああ、必要な情報は集まった。ここからは僕も戦う。






 相棒の考えが俺の中へ流れてくる。今何をしているのか、今から何をしたいのか。それが伝わってくる。
 リモートアームズ起動。風の魔弾持続多重展開。ハイヒール多重展開。聖なる加護多重展開。エンチャントウィンド起動。魔力操作により魔力循環の効果を強制上昇、魔力即時回復状態へ移行。


 風の魔法が持続的に鬼人を攻撃し何もさせない。ハイヒールによる負傷者の回復。そして俺への聖なる加護の多重展開。それを同時に行う処理速度こそが相棒の才能。俺と相棒が分かれたことによって俺は武を相棒は知を手に入れた。


 だからこそ確信する。俺と相棒が協力すれば負ける事などありはしないと。




 少しだけ代わってくれあの娘の力が必要だ。


 あ? 別に要らないだろあんな奴。


 いや、あの鬼人があれだけとは思えない。


 そうかい。ま、お前が言うならそうなんだろう。わかった。

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