俺だけFPS

水色の山葵

銃と、剣と、Ⅷ



『火鍛冶と水鍛冶』


 始まりの街の銃鍛冶師グランツが銃をレアリティ7以上の武器を作るには、強力な炎と浄化の水が必要だ。
 それに見合う炎と水を探し出しグランツに渡せ。それに際して俺は炎を封じ込め、水を密閉する特殊なフラスコを貰った。


 このユニーククエストの内容は大まかにこんな感じだ。
 問題は炎に関しても水に関しても、当たり前だが普通の物ではなく特別に強力な物を求めているという事、そしてその場所については一切情報がもらえなかったという事。


 つまり、このクエストの本当に難しい要素は恐らくは持ってくる火と水の種類によって作られる武器に差が出るかもしれないという事だ。


 ただ、俺には炎にも水にも思い当たる物があった。
 まさかプレイヤーの持ちうる情報を把握してクエストが発生してるんだろうか。
 どんな技術だよ。






「交換品の一覧を見せて頂きたく」


「バッテリー納品数100越えか。良かろうVIP用の品物も交換しよう」


 なんか条件満たしたっぽいし。


 この交換で貰える通常品は


 マジックメモリー・初級全属性:アクセアリー
 氷った炎:アクセアリー
 なんかを含めたアクセサリー類と古代迷宮で出てくるモンスターのレアドロップとかだ。
 後は魔法書とか装備もあるが、俺が欲しいような物もなく、装備に関してはセット効果を発動させるまでに必要なバッテリー数がかなり多めに設定されていたので諦めた。
 あと申し訳程度にジェムとも交換できるらしい。


 という事で氷った炎の原材料となっている炎と氷を素材として貰えないか交渉するつもりだったのだが、棚ぼただな。


 VIPで交換できるアイテムはたった10個。
 しかもその全てが交換にバッテリーを1000個単位で要求してくる物ばかりだ。


 氷精霊王の毛糸:素材
 永久凍土の氷:素材
 永遠蝋燭火:素材
 翡翠瞳の片義眼:顔装備
 スキルスクロール:アイスエッジ
 マジックスクロール:永久凍土ロストタイム
 永遠破壊アイスブレイカー:武器・大剣
 氷精霊王外套ヘキドナ・マント:アクセサリー
 不知火:武器・刀
 転職書・氷王騎士


 上から、千、三千、三千、五千、一万、一万、一万五千、二万、五万、十万である。


 十万とか、最早交換させるつもりがない。
 一階層で取れたバッテリーは三個だけだし。結局50階層くらいまで言ったけど、合計で取れたバッテリーの数は200と少しだった。


 単純に考えて500回くらいダンジョンアタックしなきゃいけない訳で、50階層まで行くのに丸一日かかったの考えると全力でやっても二年位かかる。
 あほか。


 だが、それは一つの可能性を指示している。
 要するにそれだけのバッテリーを確保する方法があるという話だ。
 バッテリーは奥へ行けば行くほど多く一階層事のドロップが増えていく。つまり、仮に100階層まであったとして最奥でマラソンすればそれくらいの数のバッテリがーがゲットできるかもしれない。


 ってかそれしかないよな。


「だが、お主が交換する権利があるのはこの品物の中から三つだけじゃ。それと、交換品とは別のVIP特典も渡しておこう」


『アイテム【カケシェルテル階層転移切符】及び【無限蓄電池】を獲得しました』
『ユニーククエスト【氷女王の高級交換所】が開始されます』


 階層転移切符は文字通り、一度入った事がある好きな階層へ転移できる。
 無限蓄電池はバッテリー限定の無限インベントリだ。


「ありがたき幸せ」


 王族に対しての似非敬語にも慣れた物で、そそくさを城を後にする。


 ってことはやっぱり古代迷宮を攻略するしかないんだよな。
 スキルとステータスが強化された今ならそこそこ戦えるとは思うが、如何せん火力が毛ほども上がっていないというのは考え物だ。


 いや、待てよ。
 あの迷宮雷属性のエネミーしか出なかったんだよな。多分電獣化の状態異常のせいで強制的に雷属性に転じてるんだろう。


 この世界にも属性の概念はある。
 炎タイプが水タイプに弱いみたいな。


 雷に強いのは色々とあるが、代表的なのは土だ。
 つまり……


 俺はグランツから貰った弾薬を確認する。
 クリティカルは属性ダメージも当然のように倍にする
 つまり、アースバレットだ。グランツさんから貰った土属性の弾丸の数は千発。


「全然足りねえ!!」


 グランツのとこまでペガサスで戻って、アースバレットを大量購入する。
 次いで他の属性弾も多めに貰っておく。


 完全に存在忘れてたよ属性弾君。実は氷山エリアでも炎属性とか使ってたらもっと簡単に攻略できたんじゃないだろうか。






 アースバレットの威力は絶大だった。
 大体今までのダメージの二倍ほどの威力が出ているように感じる。


 電獣化エネミーには良く通るし、ノックバックによる怯み時間も通常弾に比べて長くなっている。


「バッテリー寄こせや!」


 火力が上がり基礎ステータスが上がって、更にはスキルも強化された今の俺に死角はない。
 最初は苦労した狼みたいな敏捷タイプも慣れてきた、回避は余程計算ミスしない限り失敗しない。
 それにいざとなれば両脚軌道も弾人入替もある。


 天眼と明鏡があれば、数が少し多くてもどうとでもなる。
 ゴーレムタイプみたいな巨大な奴には落下星でやれる。


 それに鋭槍一点で強制的にクリティカルポイントを作る能力がめちゃめちゃ効く。
 ただ、問題は俺と同じように遠距離から攻撃してくる魔法タイプだ。


 小型が多く、大きめのエネミーに隠れてちまちま魔法を撃ってくる。それも全部雷魔法だから反応が遅れたら当たる事も珍しくないし、麻痺みたいな効果を持ってるのもだるい。


「だが、時刻は夜だ」


 時計仕掛けの魔人の称号効果は、全てのスキルのリキャストタイムを半減する。
 それはつまり、弾人入替のリキャストタイムも含まれる。


 俺のスキルは基本的にリキャストタイムが長くはない。それがもっと縮めばどうなるか。
 天眼と明鏡は常在効果になるし、弾人入替と落下星のコンボが連続で撃てるようになるってことだ。


 新しくくわった俺の力はスキルだけじゃない。
 マジックメモリーに保存された魔法は、魔樹の首飾りによって無詠唱での発動が可能になっている。


 ここに居るエネミーは電獣化している事を除けば氷属性ってこともない。
 つまり、この地下迷宮で暮らしてきたお前らは氷山の内部なのに寒くもないこの迷宮から外に出た事はないんだろ。


 アイスリング。それはたった十秒だけ狙った床を半径数mだけ凍らせる魔法。
 それは相手の脚を奪う。


 狼系は肉球が付いてるから無理かもしれないが、ゴーレム系は絶対滑る。
 巨大エネミー程草結びが効くのは常識。


 ずでん! と転んだゴーレムに向けてアースバレットを撃っていく。
 すると、やはり転倒でもダメージを受けているようでいつもより少ない弾数で撃破できた。


 雷の方は使えないが、こっちは大分有効だ。


 ついに100階層を突破したが、普通に101階層が始まった。
 集まったバッテリーは1200程度。全然足りんが!


「やったろうじゃねえかあ!!」






 レベル99達成、及び永久凍土の氷と永遠蝋燭火の入手。
 所要時間、32時間。


『ユニーククエスト【火鍛冶と水鍛冶】達成クリア

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