俺だけFPS

水色の山葵

銃と、剣と、Ⅰ



『レベルが50以上離れている為、ロストは回避されます』


 クッソ、死んだ。ちゃんと負けるのは何気に初な気がする。
 いいだろう、認めよう。確かにFPSの世界大会で二位を取った俺を真っ向からねじ伏せられる相手が居るとは思っていなかった。
 所詮ステータスに依存したゲームだと侮っていた。しかし、銃弾を素手で掴むっていうのはどう考えてもステータス差じゃない。反射神経の段階で俺を越えている。


 銃が不遇武器で、命中率が6割前後のこの世界でほぼ100%の命中率を誇って調子に乗っていたのだろう。銃弾を当て続けていればどんな相手でも倒せると思っていたのかもしれない。完膚なきまでの敗北なんていつぶりだろうか。


 カイゼルねえ。皇帝か、いいネーミングセンスだ。その不遜で他を下に見る態度も気に入らないが、何よりも何もできなかったことが悔しい。結局あれだけ撃ってまともにヒットした弾丸はたった一発。
 例えば武器を強化して、ステータスを強化して銃弾を属性付きの物に変えたとして、そんなできる限りの強化を繰り返したとして、たった一発しか当てられない腕であいつに勝てるというのだろうか。


 そうは思えない。きっと時計仕掛けの守護者を倒した最後の一発をデフォルトで放てるようになったとしてもあいつは倒せないだろう。
 今の俺に必要なのは火力じゃない。それ以上に、技術と奇策が必要だ。


 そう考えていると、ピッと音がして一枚の手紙が空から降ってきた。差出人はスバルと書いている。


 スバル:あれが向こうへ行くための門番だとしたら入る扉を間違えたのかもね。取り敢えず共闘はここまでとしようか。あれにもう一度挑むとしても今のままじゃ絶対に勝てないだろうからね。また機会があれば誘うよ。それと今王宮に居るんだけど、面白いイベントが始まりそうだから君も行ってみる事を勧めるよ。


「了解っと。また一緒に遊びましょう! みたいな感じでいいかな」


 返信欄に書き込み送り出すと、手紙はポリゴン化して消えていった。


 確かにどうやって勝つか考える以上に、あいつにダメージを与えられる方法が必要だ。出来るところから済ませようか。
 レベルも上がってステータスポイントがかなり溜まっているし、スキルだって進化している物が幾つかある。スキル経験値も多分強敵相手の方が多めに貰えるんだろうな。全体的に上がってる。


 ミズキ『ガンナー』『龍王馬クイーン
 LV51
 HP 200
 MP 100
 STM 200
 STR 65
 VIT 10+(320)
 AGL 75+(130)
 DEX 75+(130)
 LUC 80+(100)


 SP 0


『アーツスキル』
 スローサイト → 瞬間視界
 マイクロショット
 ウィークアイ → 脆弱見切
 クイックリロード
 スカイアイ → 天空鮮明
 ファントムショット
 クリティカルショット → 起死回弾
 ゼロレンジバースト
 サークルムーブ → 両脚軌道
 ポジションチェンジ → 弾人入替


 魔石スキル
 HP補正100
 STM補正100
 DEX補正100
 AGL補正100
 LUC補正100


 称号スキル
 森林の破壊者5
 時計仕掛けの天人
 時計仕掛けの魔人
 解放者1
 自称英雄


 武器
  右:森怒の狙撃銃
  左
 防具
  頭:怒和の木仮面
  胴:紅の装束
  腕:紅の籠手
  腰:紅のズボン
  脚:紅の靴
 セット効果:クリティカルダメージ30%アップ


 装飾品
 1:影縫いのピアス
(DEX+30 AGL+30)
 2:魔樹の首かざり
(詠唱破棄)
 3:致命の欠片
(クリティカルダメージ10%アップ)
 4:致命の欠片
 5:致命の欠片






 ポイントを振り分け終えての俺のステータスはこんな感じか。
 スキルもかなり進化していた。これを先に確認しておけば、カイゼルにも少しは善戦できただろうか。


 瞬間視界は、発動したタイミングの視覚情報を即時理解するスキルだ。どんな原理かは知らないが、使用すると俺事世界が停止する。その中で動作するのは俺の思考と視界だけ。


 脆弱見切はウィークアイの弱点看破に加えて、細かい弱点も感知できるようなった。このゲーム、どうやら人間の血管とかも情報として存在してるらしく、このスキルは生物に点々と存在する弱点をも視覚化する。単純な強化だな。


 天空鮮明はスカイアイ+スローサイトみたいな感じだな。第三視点を同時に見る事ができ、世界をスローにする事ができる。多分、カイゼルが俺の銃弾を素手で掴めたのはこういうスキルが関係しているのだろう。それにしても単純なAGL以上に弾道とタイミングを読まれていた事に驚愕だが。


 起死回弾はクリティカルショットの派生スキルで、どこを撃ってもヒットすれば確定クリティカルを発生させる。更に、その状態でマガジンに入っている銃弾のクリティカル率を補正する。多少命中率も補正できるらしいが、こっちはどうでもいい。


 両脚軌道はサークルムーブの上位スキル。より補正値が大きくなり、発動中の移動速度や軌道の幅も強化されている。


 弾人入替はさっきの戦いで一番活躍したと言っても過言ではないポジションチェンジの派生スキルだ。ポジションチェンジの効果に加えて、なんと転移後の運動エネルギーをリセットする能力が備わった。
 要するに落下ダメージ無効の獲得であり、銃弾が俺に当たるというデメリットが消えたわけだ。そして慣性を0にするかどうかは俺の意思一つで決められる。回復弾を自分に当てるという使い方も健在だという事。神スキルまったなしだ。


 後は装備だな。
 天魔絶息ブレス・オブ・カオスはこの世界ではまだ確認されていなかったレア度10のユニークアイテムである。
 二丁拳銃でありながら、その攻撃力は狙撃銃に迫る物があり、秒間火力《DPS》だけを見れば狙撃銃などとうに超えている。
 装填数も10発と多めでありながら、その武器攻撃力は脅威の350。射程150mの有効射程50mと弱いところを見つける事が難しい。ただ、特殊能力に関して言えば少しだけピーキーな性格をしているようだ。


 白と黒の拳銃の二対一体の形状であり、白い方は自分に打ち込むことでこの戦闘中に限りレベルを5上げて、全てのステータスを5%アップさせることができる。レベルを上げてもステータスは上がらないので、何のための効果かと言えば、黒い方の能力は自身のレベルを1消費する事で、魔弾を生成し、その時入っているマガジンサイズを+30する効果がある。


 この能力の何処がピーキー化と言えば、白い方の弾丸は自分に打ち込むことで効果を発揮するが、当然のようにダメージとノックバックが入るのだ。攻撃力350の銃弾である、VITに全く振っていない俺が受ければ一撃死は免れないだろう。当てどころを考えて防具の上から撃ったところ、死ぬことは免れたがレベル上昇効果が発動しなかった。つまり肌が露出している場所を撃たなければ効果が発動しないという事だ。


 うん、この能力は封印しよう。攻撃力だけ見ても飛びぬけた数値なのだから気にする事は無い……はずだ。


 最後、魔樹の首飾り。効果は魔法を使う際に威力は半減する代わりに一節の詠唱で魔法を発動させる事ができるというユニークアイテムだ。魔法を持っていない俺には何の意味もない。騎士道札が、恐らくカイゼルの腹パンで破壊されたので変わりに付けている。
 騎士道札はそれ自体が破壊されることを代償に一度だけ即死を回避する効果がある。しかし、それが無かったら、腹パンだけで死んでいたと思うと恐ろしい攻撃力だ。いや俺のHPとVITが低すぎるだけか。


 やはり圧倒的にレベル不足だ。この段階でカイゼルとはレベル差が50以上あるというのなら、間違いなくカイゼルのレベルは100以上なのだろう。
 がっつりレベリングしないといけないな。それに装備集めも今の俺のSTRとVITだと鎧系は着れないから、動きやすい感じ。弓用の装備で代用しているが、銃にあったアクセアリーや装備も揃えておきたい。武器だけ強くても仕方無いってことは俺でも解る。


 取り敢えず王宮行ってみますか。イベント消化は早めにしておきたいし。

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