俺だけFPS
龍姫の報酬
~全プレイヤー共通メッセージ~
『ワールドクエスト~序章~【第二世界解放者】【第三世界解放者】がPN「スバル」「風船」「ミズキ」によってクリアされました』
『第二次世界【魔界】 及び第三世界【天界】への門が出現しました』
『ワールドクエスト~第一章【魔王再臨】第二章【天王復活】が開始されます』
~~
俺たちが二体の守護者を討伐し、へたり込んでいるとそんなメッセージが全てのプレイヤー向けに届けられた。
ワールドクエスト序章って、まさかここまでチュートリアルとか言うつもりじゃないよな。
『ユニーククエスト【歌姫達の希望】が完了しました』
『討伐報酬を獲得します』
『ユニークアイテム:【天使の結晶】【悪魔の結晶】を獲得しました』
『ユニークアイテム:【天馬の呼鈴】を獲得しました』
『ユニークウェポン:【天魔絶息】(二丁拳銃)を獲得しました』
『ユニークアクセアリー:【魔樹の首飾り】を獲得しました』
『素材アイテム:天使の羽、悪魔の根、etc.を獲得しました』
『称号スキル:【時計仕掛けの天人】【機械仕掛けの魔人】を獲得しました』
『称号スキル:【解放者】【自称英雄】を獲得しました』
なんか色々来たな。確認は後でいいか。
「ミルティアス様、お護り出来て良かったです」
ロールプレイを取り戻した奴もいるな。っていうか、ログだけじゃ分からない事も多いから、解りそうな奴に聞いてみるしかないよな。
「よく言いますわ。ですが、貴方がいたからこその勝利である事は事実。いいでしょう、わたくしは貴方を選びますわ」
「これは……!」
「仕方ない風船。儂はお主にするとしよう」
「何が仕方ないだよジル、フェー……ド!?」
何? 空を見ながら二人が止まった。なにかスキルでも貰ったのだろうか。
「ミズキ。貴方にも」
「カゲ? 一体なんだって言うんですか?」
「ミカ、ルシア来なさい。彼でいいのでしょう?」
「「はい」」
二つの小さな手、小学生くらいだろうか。そんな二人の掌が俺の腕を引き、膝を付かせる。二本の腕が頭に触れる、あの時と同じスキルエフェクトのような何かが俺の中へ入っていく。
『最上位セカンド職業:【龍王馬】獲得』
ヘルプからそんな音声が聞こえた。
このゲームにおける職業とは二つある。一つはメイン職、俺の場合はガンナーがそれに当たり、レベルが上がるごとにより上位の職業へと名と効果を変えていく。
次にセカンド職業。例えば鍛冶師、例えば裁縫師、例えば付与師なんてものもある。例に挙げたのは生産系の職業だが、それ以外にも特殊な物、例えばスバルと風船の話によれば勇者や賢者もそれにあたるらしい。
ただ、戦闘系のセカンド職業を獲得するのは容易ではない。大抵がユニーククエスト関連で獲得するしかないからだ。
ユニーククエストはこの世界に一つしか存在しないクエスト。それに出会う事すら困難なのに、それをクリアし、報酬がたまたま戦闘系のセカンド職業だったプレイヤーが何人いるだろうか。多いはずもない。
そのセカンド職業の能力は、主が戦場にいる場合に限り全ての強化に10%の補正が掛かるという物だ。
全ての強化にである。スキルも、魔法も、武器効果も全部だ。「主」と言うのが誰の事を指すのか定かじゃないが、貰っておいて損をするような物ではないのは確かだ。
「というか、騎士が主君にそんな口の利き方をしていいんですか?」
「ああ、そう言えば私はカゲと名乗ったね。これも報酬の一つだ受け取りたまえ。我が名はアーサー・グラン・ペンドラゴン。女王の婿という事になる」
「「「はあああああ!?」」」
俺、スバル、風船の声がハウリングの如く同時に木霊する。姫君だと近衛騎士だの言っときながら、国王って。まじっすか。
「私たち、王、聖女、賢者にはそれぞれにたった一度の権利が神から与えられている。勇者、賢者、王を守る龍を選定する権利だ。私は子供たちのどちらかしか目覚めなければこの権利を使う事は無かっただろう。だがミズキ、君は私の娘のどちらもを救ってくれた。だから、きっと君はそれに相応しい。英雄とは誰からも認められる者を指すのではない、英雄とは認めさせた者を指すのだ。すまないね、世界の守護者と戦う前に上げられれば良かったのだが、一つしか有していない権利を簡単に使う事はできなかった」
そりゃ、これは報酬だろうから前もって貰うなんて許されないだろう。それにしても、この世界のNPCは本当に生きているかのようだ。思考経路が、完全なパターン化されていないような錯覚を起こす程度には。
色々と確認したいことは山積みだが、今日はそろそろ寝るとしよう。一時間も経ってないはずなのに酷く疲れた。
糖分が欲しい。また明日、この世界に入る事を決め俺はログアウトを呼んだ。
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