詩がない物書き。

マッチ棒

後編

黒猫について進むこと数分。私は、今までに見たことのない景色を目の当たりにしていた。

「こ、これは……」

それは、この寒さで凍った小さな滝だった。

こんな路地の奥に小さな滝が…

私は驚きながら、足元にいる黒猫を抱き抱え「お前のおかげで素晴らしいものが見れた。ありがとう」と礼を言う。

黒猫は、ニャーと言いながら私の腕から降り何処かへと消えていった。

***

消えた黒猫を追う気にはなれなかった。まぁ、あの猫にも居場所があるのだろう。

それから私は、宿屋に戻り小説の続きを書くことにした。

宿屋の入り口の引き戸を開けると、丁度玄関を掃除していた女将さんと目があった。

「おかえりなさいませ」

女将さんは、私に頭を下げてそう言う。

それが例え、仕事だとしても人から白い目を向けられていた私には嬉しかった。

やや急な階段を上がり自分の止まっている部屋の襖を開ける。

部屋の中に置いてある机の上には、書きかけの小説と自分なりに改造した鉛筆、そして黒猫が描かれた手帳が置いてあった。

私は、羽織っている茶色の上着を壁にかけ机の前に座り鉛筆を取る。

そして、さっきの続きを書き始めた。

***

それから、どのくらいの時間が経ったのだろうか。

無事に原稿用紙50枚分の小説を書き終えた私は、鉛筆を置き畳の上に倒れ「んー」と伸びをした。

壁の時計を見ると、そろそろ夕食の時間だった。

再び私は、上着を羽織り襖を開け玄関に行く。

「お出かけですか?」

靴を履いていると、背後から声をかけられた。

「はい。少し外で食べてきます。」

振り返りそう返事する。相手は、女将さんだ。

彼女は、「そうでございますか。それでは、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」と先ほどと同じように頭を下げ、私を見送る。

宿屋を出た私は、川の方へと進む。

先ほどまで降っていた雪は止み、所々に人がいた。

なるべく人がいないところを選び、この地にやってきて最初に入った定食屋に向かう。

ガラッ

暖簾を潜り引き戸を開けると、店内には数名の客と店の夫婦がいた。

「いらっしゃい」

おばちゃんは、私に気づき席に案内する。

「すみません、とんかつをください」

席に座りメニューを開きとんかつを注文すると、おばちゃんは「あいよ。とんかつね」と言いながら厨房の方へと帰っていった。

それから、頼んだとんかつがやって来たので私は、味わいながら完食し勘定をして店を後にした。

定食屋を出るとまた、雪が降っていてさっきよりも寒くなっていた。

私は、風邪をひかないよう急いで宿屋に帰る。


***

と、言うことがあった。それは、まぁ単なる旅の思い出に過ぎないがあの地での出来事は私の小説に大きな影響を与えていた。

さて、この地でも何か面白いことが起こりそうだ。
















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