オタクとロリ

マッチ棒

第87話〜旅館〜

旅館にチェックインした慎とわたしは、早速泊まる部屋に行き荷物を置いた。

「いや〜しかし、いい感じのところだなぁ。」

荷物を置いた慎は、そう嬉しそうに言う。

「慎、こっちに小さい露天風呂があるよ。」

部屋の中を探索していたわたしは、奥の方に小さい露天風呂を見つけた。

そういえば、鎌倉で泊まった旅館にもあったなぁ。

それから、夕食の時間まで旅館の中にある大浴場に入ることにした。

「じゃ、また後でな。」

「うん。」

男湯女湯の入り口でそう言い、それぞれ脱衣所に入って行く。

***

大浴場は、なんと言うか家のお風呂の何倍もあった。

シャワーと蛇口は、それぞれ10個。湯船は、水風呂,泡が出るやつ,プールくらいの大きさのやつなど多種多様。さらに、浴場の奥の方にはサウナ室らしき扉が。

わたしは、『温泉ガール』と言う作品で見た通りに最初に体を洗い、それからかけ湯をして大きな湯船に入った。

「ハァ〜」

頭にタオルを乗せながら湯に浸かると、沢山歩いたのか温かいのが全身に染み渡る。

今、大浴場はわたし1人だけだ。

ふと、男湯がある方を見ると向こうの湯の方から男性2人の話し声が聞こえてきた。

「おう、あんちゃん。一人旅かい?」

「あ、こんにちは。いえ、連れがいます。」

「何だ、そうなのか。でも、珍しいねぇ。この時期に来るなんて」

どうやら、1人は慎でもう1人は、泊まりに来ている?おじちゃんらしい。

さらに、聞き耳を立ててみる。

「連れってのは、彼女かい?」

「えーと、どういえばいいんでしょうかねぇ…妹ともいえないし、娘ともいえないし…」

「なんだね。訳ありなのかい?」

「まぁ、そんなところです。あの子が家出をしたのでそれを俺が助けたみたいな…」

「なるほど……なんだか、映画みたいなはなしじゃのぉ」

「はい。でも、あまり人には言えなくて…」

「なぁに、気にすることはないよ。あんちゃんとその子が幸せなら、誰も気にしないから」

……………。

わたしは、急に熱くなったので出ることにした。

脱衣所で体を拭きながらさっきの会話を思い出す。

………。妹でも娘でもないわたしなんかに告白されて慎は、嬉しいのだろうか。

不安な気持ちは、高まるばかりだ。

          

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