同棲。

マッチ棒

第11話

莉緒ちゃんが自作の小説を見せてくれた後のことだ。

現在莉緒ちゃんは、お風呂に入っている。

「ハァ〜。莉緒ちゃんには夢があるのか…」

頬杖をつきながらそう呟く。私には、まだ夢と呼べる夢がない。

この年になってもないと言うことは、同い年の子たちからすると少し変なのかもしれない。

今思えば、小学校の頃からなかった気がする。

従兄弟が亡くなって、精神的にかなりのダメージを受けていたからなのかは、分からないけど。

でも、夢と持たないと言うのは、結構キツかった。

学校の授業で、「自分の夢について作文を書きましょうね。」みたいなのがあると、私は真っ先に手をあげて保健室とかトイレとかとにかく理由をつけてあの空間から逃げ出していた。

でも、そのうち先生にもクラスメイトにも不審がられるようになり、とうとう教室から出られなくなった。

そして、それは中学に上がってからもそうだった。


それは、道徳の授業で「自分の夢について話し合う」と言うよく分からないテーマが出された時のことだ。

「夢がまだない人も、みんなの意見を聞いて考えてみてね」と、担任教師が言った。

しかし、私にはその言葉の意味がわからなかった。

人の意見を聞いて夢を見つける?参考にする?

自分の夢なのになんで人に頼らなきゃいけないんだ。


なので、私はその場から逃げるように教室を出た。

全く無意味なことを教えるあの空間が、あの場所が嫌で嫌でしかたなかった。



で、それを繰り返すこと3年。

普通の高校に行くほど偏差値がなかった私は、定時制の学校を選ぶことにした。

そして、一年前に両親を亡くしていた私にとっては昼間働いて稼ぎを経る方が楽だったのだ。


現在高校1年生。あと少しで、進路のことを本格的に考える2年生になる。



私も、莉緒ちゃんみたいな夢が欲しい。



そう思う、今日この頃であった。





          

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